調査報告
健康づくりに関する自治体の考え方に関する調査報告
認定NPOセルフメディケーション推進協議会
村田 正弘 佐藤 聖 辻本 利雄 池田 義雄

超高齢少子化が進行する日本において社会保障の基幹である医療、介護を維持継続していくには様々な難関がある。現政権は健康産業の育成と地域創生を掲げ、地域包括ケアシステムの具体的導入に入った。地域住民の健康管理は基本的に自治体が担当するのが当然であるが、地域、職域保険制度の加入比率、人口構成、財源など自治体により著しい差があり負担は一律でない。各自治体の実情や担当者の考えについて、過去に総合的な調査は実施されていない。認定NPOセルフメディケーション推進協議会(以下NPO・SMAC)は医療・介護において国民へ疾病予防、健康維持について自覚を促し、生活改善などを積極的に行うよう呼びかけ、それを支援する環境整備を提言してきた。実践への阻害要因を解明するために実態の把握が必要と考え自治体へのアンケート調査を行った。
調査の概要
全国自治体(都道府県、市町村)の中で健康づくり、健康推進という担当課および担当者名が記載されている部署に書面によるアンケート依頼を郵送し、回答を依頼した。
健康関連についての総合的な設問2項目、NPO・SMACが近年重要と位置づけている4項目について各自治体の対応を選択肢による回答を求め、補足的に自由記述による意見を求めた。
調査期間
2014年8月 (回答期間は1か月)
調査票の回収と集計
全国自治体1)1789の中で担当部署名などが把握できるなど基準2)に適応した853自治体に担当者宛アンケート用紙を郵送し、回答記入後返送を依頼した。
結果
回収は150 (回収率17.6%)
回答は全国45都道府県から寄せられたが無回答が5県あった。

1. 医療介護等の健康関連業務について改革・修整の必要性について
「必要がある」との回答が83.3%で「必要はない」13.3%に対して圧倒的多かった。(図1)
その理由として例示した各項目とも3/4以上が肯定の答えであった。中でも住民の高齢化、財源についての指摘が上位を占めた。(表1)
改革・修正の方向としは健康・予防事業が78%で、医療・福祉施設の拡充の6%を大きく引き離した。(表2)
改革の阻害原因として必要予算の不足が90%近い割合でトップであるが、以下事業実施者の不足も住民の認識不足、行政組織の硬直についてすべて70%をこえている。(表3)

2. 個別の事業への関心度
NPO・SMACとして近年重点的に検討している4事業について個別に関心と意見を求めた。

(1) 検体測定室を設置して血糖自己測定を行うことについては考えがあるは2%で、考えはないは62%と過半数であった。実現についてのかぎは医療関係者の合意など解決すべき問題が多い。 (図2)(表4)

(2) 疾病予防に関するライブラリーの設置に関しては、関心があるは10%、否定的または積極的でないは30%以上で、維持管理や法整備などが指摘された。 (図3)(表5)

(3) 地域自治体におけるロコモシンドローム対策に関しては、「大いに関心がある」、「関心がある」を合わせると60%以上となり、具体化を検討しているところが約30%に及ぶ。
検討すべき問題として財源、医療機関との連携、業者の選定など課題は多い。(図4、5)(表6)

(4) 一般国民の健康教育計画と指導者養成に関しては約1/3が関心を示したが、その多くは実現は難しいと答えた。実現の障害となっているのは費用負担、住民の意識改革などが指摘された。講師の確保、フォローアップ、場所の選定なども半数以上からあげられた。(図6)(表7)

考察と今後の対応
全国には約1800の自治体があるが、この中で健康推進、健康づくりなどを標榜する部署へ担当者名を付して依頼した。対象には都道府県、政令指定都市、特別区、その他の市町村があり、規模、組織、担当者数などが異なっている。また、回答者を指定していないので行政責任者か担当技術者(主に保健師と推定)か不明である。回収率が2割を切ったのは、今回が初めての調査でなじみがなかったことと上記の事情が重なったためではと考えている。
しかしながら、得られた結果は想定を超えて衝撃的であった。ほとんどの回答者から健康関連事業について改革・修正が必要と指摘されていながら、実践ができない原因が財政的問題、硬直したままの組織、住民の意識改革と認識が共通していることである。
第二の衝撃は、われわれNPOが10年来呼びかけを行ってきた提案が具体的に実践できない背景が鮮明になったことである。4重点計画の中でわずかにロコモ対策に対する自治体の反応が高いのは昨年来注目され、メディアにとりあげられている影響があると推定できる。それ以外の健康施策はほとんど自治体がとりあげる対象になっていない。それは課題解決の困難さに対してあまりにも貧弱な財源と人員不足につきる。

NPO・SMACとしてはまず各自治体の健康関連担当者間の情報共有化を図るための仕組みを作る提案を行う。住民が自己の責任で健康管理を行うための基盤づくりは各自治体が地域事情に適応した形で行うことである。今回の調査結果を参考に支援体制の構築を進めていくので、各方面からのご支援・ご協力をお願いしたい。

調査にご協力頂いた自治体担当者に感謝いたします。
2014年12月15日
1) 全国自治体数は市町村1719、特別区23、都道府県47の合計1789
2) 平成25年度版独立行政法人国立印刷局編集発行の職員録下巻の記載名
2015年01月 掲載