2.  社会保障制度の維持と健康啓発

2. 社会保障制度の維持と健康啓発
1. 社会保障制度

 社会保障という言葉は比較的新しく、1935年のアメリカで社会保障法がつくられて以来である。社会保障制度・政策という概念は第一次世界大戦後にはじめて資本主義世界に登場し、第二次世界大戦後に福祉国家資本主義にとって不可欠であるとして一般化した。 日本においては終戦後の社会的、経済的混乱の状況下、福祉国家資本主義へ転換し、社会保障制度設定を進めた。
 福祉国家資本主義とは国民の生存権を国が保障するという基本から成り立ち、労働法や社会保障制度の整備が必須であり、国家財政のなかで主要な費目として拡大していく。社会保障制度は公的扶助制度と社会保険制度を統合した生活保障のための制度といえる。後者の社会保険制度の中核は医療保険制度であり、被保険者の予期せぬ疾病、傷害による費用負担を保険加入者全員で負担するのが骨子である。
 とは言っても保険は簡単ではない。加入者の選定、災害補償の範囲と費用算出、それらを準拠とする保険料金の負担額の設定は様々な不確定要素を勘案しないといけない。

2. 日本における制度設計

 日本では医療保険制度が戦前の1927年から健康保険制度が実施されていたが、戦中・戦後の混乱状態の中で「名存実亡」が続いていた。1959年国民健康保険制度改正法の施行により、国民皆保険の確立となった。日本国憲法25条の国民の生存権を保障するが背景にあり、国民国家を前提とした日本国民を対象とした制度である。しかし、多くの制度によって構成された分立型であり、統合への改革は鈍く現在も解消されたとは言い難い。
 発足以来、給付格差、財政的危機など様々な矛盾や重圧に立ち向かい苦難を重ねた。1955年頃からの日本経済の高度成長期は社会保障制度の拡充を可能にし、1973年を「福祉元年」とした。しかし、同年石油危機により福祉見直し論が提言された。社会保障制度は国民の生活のミニマムを保障するもので、それ以上の領域は「自助努力」による確保すべきという考えが底流にある。議論はされたものの、財源不足を国債発行などで補足し、高度経済成長型社会保障政策はそのまま継続された。
 1980年代はこの政策は破綻し、日本も世界も福祉見直し論が政策として定着していく。人口構成が変わり、高齢者の医療費の著しい増大は医療保険制度改革を余儀なくされ、1983年老人保健法が実施され70才以上の高齢者を医療保険制度対象から外した。翌年以後健康保険法の改正が続き、分立型医療保険制度の一元化が進んでいく。
 今世紀に入り、老人保健法と老人福祉法を整理し、介護保険法の成立により高齢者介護を原則的に医療と分離した。また、2008年医療保険制度を抜本改革し、後期高齢者医療制度を独立させ高齢者医療を分離した。

3. 維持するための財源の確保

 日本の医療保険制度は多種に分かれており、統合が進んだとはいえ現在も健康保険組合、協会けんぽ、共済組合、地域保険(国民健康保険)、後期高齢者医療制度で成り立ち、独自に運営されている。
 焦点は医療費財源で、保険料が主であるが人口構成、被保険者の規模や分布、医療提供範囲によって影響される。国民皆保を銘打つ以上、給付に差をつけることは難しい。日本の人口推移は終戦後8000万から1億2000万をピークに減少に転じている。人口構造は国民皆保険成立時、若年型で高齢者比率が低く、給付対象者が限定された。高度経済成長期は社会保障制度拡充のため財源を国庫負担主導型とし、国民負担を減らすことで維持された。
 しかし、バブル景気の崩壊後は歳入減と高齢者比率の増加は相乗的に一般会計における社会保障関係経費比率を年毎に増加させる状況が続いている。将来推計人口予測と人口ピラミッド予測はさらに危機状況が深刻するとみる。

4. 健康啓発の重要性の認識

 社会保障について政策、制度についてのべてきたが、なぜ国民にとって必要なのか目的にはふれなかった。自明だと思うからである。災害は不意に、突然起きるが、すべての人に均等に被害をもたらすわけではない。保険は、発生する事故によって生じる損失に備えて、多数が金銭(保険料)によって損害を均等に負担して、被災者への過度な負担を軽減する仕組みである。
 災害をゼロにはできないが、努力により軽減はできる。災害について基本を知り、予防や発生しても迅速な措置により被害の拡大を阻止することは可能である。火災保険に加入すれば火の用心は無用という人はいない。医療保険も基本は同じであり、病気にならない努力―健康な生活を続ける願いは誰もが共通で異論はないと考える。2節で指摘した「自助努力」に相当するが、誰もが自分で行わないかぎりできない。自助は各自が行うもので、行政や上からの指示、命令で行うものではない。前提として正しい知識と考えて納得して行動することが必要である。また疑問に応じ、助言し、支援する環境を整えることも大切である。
 セルフメディケーションはこの「自助努力」―健康啓発にほかならない。セルフメディケーション推進協議会は健康啓発を促進し、支援しようとする組織である。活動の経緯を振り返り、この国に定着させる提言をしていく。

2022年10月 更新