セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

紫外線

(2013年05月 掲載)

(2019年9月 更新)

日焼けは健康的なイメージがあり、太陽の光は骨を丈夫にするビタミンDを作るというメリットもあります。しかし、日焼けの原因である紫外線はこの20年間で緩やかに増加し、特に、有害な種類の紫外線が多いという指摘もあります。

大人では、紫外線を浴び過ぎると皮膚や眼などに悪影響を及ぼすことがわかってきました。急性では免疫機能低下、紫外線角膜炎、慢性では皮膚癌や白内障等です。 子どもでは、その皮膚は未熟で薄いため、大人より影響を受けやすいと言われています。子どものうちからの過剰な紫外線曝露は、大人になってから皮膚がんを誘発するなど、悪影響を及ぼす可能性があります。日本臨床皮膚科医会は、2012年に「子どもの紫外線対策に関する指針」をまとめ、学会としての具体的対策を初めて出しました。以下に示します。

日本臨床皮膚科医会 http://jocd.org/ より

紫外線の悪影響の予防には、浴び過ぎを防止することが最も重要で、夏だけでなく照射量が増えてくる4月頃から予防対策を心掛けましょう。

紫外線の性質

太陽光には、赤外線・可視光線・紫外線があります。紫外線は波長によりUVA、UVB、UVCの3つに分類され、波長が短いほどエネルギーが強く、生体に有害な影響を与えます。

UVA :320〜400nm

 UVBほど有害ではありませんが、皮膚の深いところまで到達し、皮膚の張りをなくし、しわの原因になります。

UVB :290〜320nm

 その多くはオゾン層で吸収されますが、一部は地表に到達し、皮膚や眼に有害な影響を与えます。日焼けを起こしたり、皮膚癌の原因ともいわれています。

UVC: 290nm以下

 波長が短い程傷害性は強いので、殺菌灯などに利用されています。UVCは大気中のオゾン層で吸収され、地表には到達しません。しかし、フロンガスなどの影響でオゾン層が破壊されると、UVCが地表へ到達し危険性の増大が考えられます。その結果UVCによる遺伝子DNAの損傷が起こり、皮膚癌の発症率が増大する危険性が指摘されています。

紫外線の量と強さ

 紫外線の絶対量や日射量に占める割合は季節や時刻、天候、オゾン層などにより変化します。最も紫外線が強くなるのは時間帯は正午頃、1年を通しては6月から8月です。

 曝露される紫外線量とは、紫外線の強さに時間をかけたものです。従って、弱い紫外線でも長時間浴びた場合、強い紫外線を短時間浴びたのと同じになり、注意が必要です。

日最大UVインデックス(観測値)の年間推移グラフ

データの見直しなどで図が変わることがありますので、最新のものを御利用下さい。
●は観測値、細実線は1990年から2018年までの累年平均値を表しています。
※札幌と那覇の紫外線観測は2018年1月をもって終了しました。
気象庁ホームページより

身体への影響

 紫外線の身体へ与える影響はUVインデックスという指標を用い、評価されます。

UVインデックス(WHO)

11+ 極端に強い 日中の外出は出来るだけ控えよう。
必ず、長袖シャツ、日焼け止めクリーム、帽子を利用しよう。
10 非常に強い
強い 日中は出来るだけ日陰を利用しよう。
出来るだけ、長袖シャツ、日焼け止めクリーム、帽子を利用しよう。
中程度
弱い 安心して外で過ごせます。
* UVインデックスは、ISO/CIE(国際照明委員会)の紅斑紫外線量から求めた指標です。紫外線に対する 皮膚の反応は、メラニン色素の量やスキンタイプなどにより一人一人異なります。ここに示したガイドラインは あくまでも大まかな目安であることに留意してください。

環境省 紫外線保健指導マニュアル(平成16年4月)

身体に対する紫外線の影響

良い影響 ビタミンD生合成
光線治療・・・乾癬,アトピ−性皮膚炎など
悪い影響 急性傷害・・・サンバーン,サンタン,紫外線角膜症
慢性傷害・・・光老化(シミ,しわ,良性腫瘍),光発癌、白内障
光線過敏症
免疫抑制
急性傷害

サンバーンとは(皮膚の赤化)

 紫外線で皮膚に炎症が起こり、真っ赤で痛い日焼けとして現れます。8〜24時間でピークになり2〜3日で消失しますが、ひどくなると水ぶくれになり皮がむけます。

サンタンとは(皮膚の黒化)

 サンバーンが消失した数日後に現れ、数週間から数ヶ月続く黒い日焼けで、メラニン色素の沈着を伴います。

紫外線角膜炎とは

 結膜(白目)の充血、異物感、流涙、ひどくなると眼痛を生じます。雪面などで発症する雪目が有名です。夜から翌朝に発症し、24〜48時間で自然治癒します。

慢性傷害

光老化とは

慢性的な紫外線傷害で、加齢による自然の老化とは質的に異なります。加齢による老化は皮膚の厚さや色が薄くなりますが、光老化では皮膚は色濃く厚くゴワゴワになりシミ、しわとなります。紫外線が原因で起こるシミは、頬やこめかみに出来やすく薄茶色で、一度できると消失しないのが特徴です。

光発癌とは

長年にわたり日光を浴び続けた場所に発生する癌で、日光角化症、有(ゆう)棘(きょく)細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫(メラノーマ)があります。近年では、早期で9割以上、少し進行した状態でも7割以上が治るとされています。治療の基本は「手術」ですが、「放射線治療」を行う事もあります。

白内障 とは

 白内障は眼科疾患の中で最も多い病気で、80以上のタイプがあると言われています。日本人では皮質白内障が多く、紫外線との影響が知られています。初期にはレンズの役割を担う水晶体が硬くなるため老眼が進み、濁りが強くなると視力が低下、進行すると失明に至ります。治療は混濁した水晶体を眼内レンズと置換する手術があります。

光線過敏症

 健康な人では何ら問題が生じない程度の日光照射でも、肌が露出している部分にだけ、赤みや痒みなどの異常反応が起きることがあります。

免疫抑制

 紫外線で皮膚に炎症が起きると、それがもとで口の周りの単純ヘルペスが再発することがあります。

予 防

 長時間、屋外で日光を浴びるなど、日焼けの可能性があるときには、特に紫外線対策が必要です。紫外線を防ぐために、以下のことに注意しましょう。

  • 紫外線が強い時間帯(午前10時から午後2時)は外出は控える
  • しっかりとした生地の長袖・長ズボンを着用
  • つばの広い帽子や紫外線を遮断する日傘・サングラスを利用
  • 太陽灯や日焼け用機器などからの紫外線を避ける
  • 外出の時は肌の露出部分に日焼け防止を塗る(SPF値、PA分類を確認する)。
    また、汗などで流れ効果が弱くなるので2〜3時間おきに塗りなおす

SPF(sun protection factor)値: UVB防止効果の指標。50までの数値で示され、SPF値が高いほどUVB防止効果が高い。

PA分類(protection grade of UVA): UVA防止効果の指標。3段階があり、+が多いほどUVA防止効果が高い。

日焼けをした場合

 適切な対処が必要です。軽度なら保冷剤などで冷やし、ほてりが治まったら保湿剤をぬります。水ぶくれが出来ていたら皮膚科を受診しましょう。

この症状はどうすればいい?
疾病 症状 考えられること、気をつけること 対応
日焼け 水疱のある日焼け ?度熱傷と同様、真皮まで達している可能性がある 受診をお奨めします
光の照射なしで、顔や首筋が日焼けした様だ 1.光線過敏症の可能性 受診をお奨めします
2.薬の副作用の可能性、服用・使用中の薬剤の確認 受診をお奨めします
水疱のない日焼け 1.患部を十分に冷やす
2.炎症症状に対しては、消炎成分を含む軟膏、  炎症がひどい場合は、副腎皮質ホルモン含有の外用薬を使用する。ただし、感染に注意 ブフェキサマク
ウフェナマート
副腎皮質ホルモン
3.皮膚の乾燥に対しては、保護成分含有の外用薬を ヘパリン類似物質
ホクロ 大きくなっている。しこりがある。盛り上がってきている。増えてきた 基底細胞癌、有棘細胞癌、メラノーマ 受診をお奨めします
シミ 左右対称のシミがある 肝斑と呼ばれるシミ。女性に見られ、左右対称に広がる、褐色で自然に消失するのが特徴。原因は女性ホルモンのバランス、ストレスなど 生活環境を整える

シミやホクロの鑑別は一般の人には難しく、気になる場合は皮膚科を受診しましょう。

紫外線に関する科学的知見や関連情報は下記から得られます

■テーマ
  1. 紫外線
  2. 細菌性食中毒
  3. 熱中症
  4. 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
  5. 気管支喘息
  6. ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome):運動器症候群
  7. 睡眠時無呼吸症候群「Sleep Apnea Syndrome:SAS」
  8. 逆流性食道炎
  9. 不整脈「心房細動」
  10. かぜ症候群、インフルエンザと肺炎について
  11. 帯状疱疹
  12. 腰痛
  13. 痛風
  14. 口内炎
  15. 夏に気をつけたいアデノウイルス感染症
  16. 過敏性腸症候群
  17. 食物アレルギー
  18. 緑内障
  19. 食欲不振
  20. かゆみ [皮膚そう痒(よう)症]
  21. 慢性疼痛
  22. ニキビ(尋常性痤瘡)
  23. 尿路結石
  24. 骨粗しょう症
  25. 慢性疲労症候群
  26. 光線過敏症
  27. 冷房病(冷え性)
  28. アトピー性皮膚炎
  29. めまい
  30. ピロリ菌
  31. 虫歯
  32. 受動喫煙
  33. 歯周病
  34. 片頭痛