セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

熱中症

2017年04月 更新
(2013年07月 掲載)

 熱中症は、室温や気温が高い中での作業や運動などにより、体内の水分や塩分などのバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして、発症する障害の総称です。症状は体温上昇、めまい、倦怠、頭痛などで、ひどい時には、けいれんや意識の異常などを引き起こします。家内でも室温や湿度が高い時は、熱中症になる場合があるので注意が必要です。発症時期は梅雨明け7〜8月が多くなります。また、節電を意識するあまり、熱中症予防を忘れないよう注意しましょう。気温や湿度の高い日には、決して無理な節電はせず、適度に扇風機やエアコンを使用するようにしましょう。

 熱中症には3種類の病型があり、それらの原因、症状、対策を表1に示しました。

表1 熱中症の概要と対策

病型 程度 原因 症状 対策
熱失神 運動中よりも、運動直後に発症。皮膚血管の拡張で血圧が低下、脳血流が減少して発症 顔面蒼白、脈は速く弱い。めまいや失神(一過性の意識消失)等 足を高くして寝かせると通常はすぐに回復
熱けいれん 暑所での運動や作業中に発症、大量に汗をかき、水だけの補給で血液中の塩分濃度低下で発症 痛みを伴った筋けいれん(こむら返り様の状態)。脚や腹部の筋肉に発生し易い。 生理食塩水(0.9%食塩水)等の補給や点滴で通常は回復。
熱疲労 発汗による脱水と皮膚血管の拡張で循環不全を発症。いわゆる脱水症状。死に至ることもあり、熱射病の前段階 脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気、皮膚は青白く、体温は正常かやや高め スポーツドリンク、塩分補給で回復。嘔吐で飲めない場合は、点滴等の医療処置が必要。この段階の対処は重要で、極めて緊急な対処(救急車を手配)が必要
熱射病 過度に体温が上昇(40℃以上)、脳機能に異常をきたし、体温調節が破綻した状態 言動がおかしい、応答が鈍い、意識障害、頭痛、吐き気、めまい。進行すると昏睡、全身けいれん。高体温が続くと脳だけでなく、肝臓、腎臓、肺、心臓などの多臓器障害を併発。高い死亡率となる。 死の危険のある緊急事態。救命できるか否かは、いかに早く体温を下げられるかによる。救急車を要請、速やかに冷却処置開始

時間帯別発生状況(厚生労働省統計:平成21〜23年)

 時間帯による熱中症の発生状況は、午後1時台から午後5時台の間に約8割が発生し、特に午後3時台から午後4時台に全体の約4割が発生しています。

どのような人がなりやすいか
  • 高齢者
  • 肥満の人
  • 幼 児
  • 脱水状態にある人
  • 過度の衣服を着ている人
  • 普段から運動をしていない人
  • 暑さに慣れていない人
  • 病気の人や体調の悪い人

 さらに、心臓疾患、糖尿病、精神神経疾患、広範囲の皮膚疾患の人も熱中症にかかりやすいといわれています。これらの人は「体温調節が苦手」状態であるということです。また、一部の薬剤や飲酒も自律神経に影響したり、脱水を招いたりするので要注意です。

熱射病が疑われる場合の身体冷却方法

 身体冷却法としては氷水に浸して冷却する方法が最も効果的です。市民マラソンなどでバスタブが準備でき、医療スタッフが直腸温を測定できるなど、対応できる場合には、氷水につける方法が推奨されます。一般には水をかけたり、ぬれたタオルを当てたり、扇風機などで強力に扇ぐ方法が推奨されます。タオルを沢山用意し、氷水につけて冷やしたものを交互に使うとよいでしょう。氷やアイスパックなどを頚、腋の下、脚の付け根など太い血管に当てて冷やすのを追加的に行いましょう。現場ではこれらの可能な方法を組み合わせて冷却を開始し、救急隊の到着を待ってください。

注意すべき生活活動強度の目安

 運動や労作は軽い活動でも,定期的に休息を取入れ水分補給をする必要があります。

軽度 中等度 強度
休息・談話 自転車(平地:時速10〜15km) ジョギング
食事・身の回り 歩行/分速80〜100m サッカー
楽器演奏 掃除(はく・ふく) テニス
裁縫(縫い,ミシンかけ) 布団あげおろし 自転車(登り:時速10km)
自動車運転 体操(強め) リズム体操
机上事務 階段昇降 卓球
乗物(電車・バス立位) ウォーキング/分速100〜120m バドミントン
洗濯 床磨き 登山
手洗い,洗顔,歯磨き 垣根の刈り込み 剣道
炊事(料理・かたづけ) 芝刈り 水泳(平泳)
買い物 ゴルフ バスケットボール
掃除(電気掃除機) 野球 縄跳び
散歩/分速60〜70m マラソン
家庭菜園,草むしり
体操(軽め)
入浴
ゲートボール

:活動強度は低いが運動時間が長いので要注意 

(伊藤編, 現代生活と保健衛生2002 第4 版を参照)

水分・塩分補給の目安

1. 日常生活における水分補給:

 基本的に、不感蒸泄や発汗による水分の補給が必要です。睡眠時,入浴時にも発汗するので就寝前,起床時,入浴前後にコップ一杯(約200ml)の水分を補給しましょう。

 日中はコップ半分程度の水分を定期的に(1 時間に1回程度)摂取し、のどの渇きを感じる前に水分補給を心掛けることも大切です。特に高齢者は口渇感等の感覚が低下しているので,十分に注意する必要があります。

2. 運動時や作業時の補給:

 運動前後の体重減少は脱水のめあすになるので忘れずに行いましょう。体重の2%以上の脱水を起こさないようにしましょう。

 水分の補給量は体重減少量の7〜8 割程度が目安です。大量に発汗する運動時や作業時には水分と同時に塩分補給も重要です。0.2%程度の塩分を含む水分を補給するよう心掛けましょう。

作業前:コップ1〜2 杯程度の水分・塩分を補給 作業中:コップ半分〜1 杯程度の水分・塩分を20〜30 分ごとに補給 作業後:30 分以内に水分・塩分を補給

3. 飲酒時の補給:

 アルコールは利尿作用が強く,飲酒量以上の水分を排泄します。飲酒後は,水分を十分に補給しましょう。

予防のポイント

 予防には、水分を補給し、暑さを避けることが大切です。

  • 室温28℃を超えないように
  • 外出には日よけ対策をして、体を締め付けない涼しい服装をする。
  • のどの渇きを感じなくてもこまめに水分・塩分補給をする。
  • 無理をせず、適度に休憩する。
  • 日ごろから栄養バランスの良い食事をとりたい体力づくりに心がける。
応急手当
  • 涼しい場所へ移動し、衣服を緩め、安静に寝かせる。
  • 水分補給をさせる。
  • エアコンをつける、扇風機・うちわなどで風をあて、体を冷やす。
救急車を呼ぶ場合
  • 脱力感・倦怠感が強く、動けない
  • 意識がない(呼びかけに反応しない、反応がおかしい)
  • 全身のけいれんがある
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