セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

脳卒中(夏に多発する脳梗塞)

2013年08月 掲載

脳卒中(脳血管障害)は冬場に多いというイメージがありますが、夏と冬では脳卒中の発症率が異なります。国立循環器病センターの調査では、脳卒中(脳梗塞)は6〜8月の夏に多く発症することを明らかにしました。

脳卒中とは

脳の血管が、破れたり、つまったりして、その先の細胞に栄養が届かなくなり、やがてはそれらの細胞が壊死を起こす病気です。発症した場合、たとえ一命を取りとめても、重度の後遺症を残す人も多くみられます。また、寝たきりなど重度要介護の原因の4割、認知症の原因の3〜4割は、脳卒中がきっかけとなっています。

脳卒中の分類

脳卒中は、血管が詰まるタイプ「脳梗塞」と血管が破れるタイプ「脳出血」「クモ膜下出血」に分けられます。これらのうち「脳梗塞」は、日本における発症率が高く、その発症は夏に増加すると言われています。

脳卒中の分類1

特定非営利活動法人日本成人病予防協会ホームページより引用、改変

脳卒中の分類2

日本医師会ホームページより引用

「脳梗塞」:

脳を養う血管が詰まるタイプで、次の3種類がある。(1) 脳の細い血管に動脈硬化が起こり、詰まる「ラクナ梗塞」、 (2) 脳の太い血管の内側にコレステロールの固まりができ、そこに血小板が集積し動脈を塞ぐ「アテローム血栓性脳梗塞」、 (3) 心臓にできた血栓が流れてきて血管を塞ぐ「心原性脳塞栓症」などがある。脳卒中死亡の60%以上を占める。

「脳出血」:

細い脳血管が破れて出血し、神経細胞が壊死する。原因の多くは高血圧、高齢により脳血管が弱くなり、血管が破れる場合がある。日中の活動時に、頭痛やめまい、半身マヒ、意識障害などが起こる。脳卒中死亡の約25%を占める。

「クモ膜下出血」:

脳は、外側から順に「硬膜」「くも膜」「軟膜」という3層の膜(髄膜)で覆われている。クモ膜下出血は、この軟膜にある動脈にできたこぶ(動脈(どうみゃく)瘤(りゅう))が破裂し、膜と膜の間にあふれた血液が脳全体を圧迫する病気。突然激しい頭痛、嘔吐、けいれんなどが起こりやすく、意識がなくなり急死することもある。脳卒中死亡の10%強を占める。

脳卒中のタイプにより発症しやすい季節が違う

冬に多い脳卒中は脳出血とクモ膜下出血です。冬は体内の熱を放散しないように血管が収縮するので血圧が上昇し、血管が破れやすくなります。一方、脳梗塞の発症は夏が多くなっています。その理由の一つに、夏は大量の汗をかくため体が脱水状態になりやすいことがあげられます。脱水が起きると血液中の水分が不足し、血液が粘度を増し、血のかたまり(血栓)ができやすくなります。また、水分不足により体内を循環する血液量も減少して、血管が詰まりやすくなります。また、寒さで血圧が上がりやすい冬とは逆に、夏は体の熱を放出しようと末梢血管が拡張し、体は血圧低下状態になっています。この場合、健康な人は血流が悪くならないように脳の調節機能が働きます。しかし、生理機能が低下している高齢者、または降圧剤などを服用している人は薬による血管拡張作用のために血圧が下がり、血流が遅くなることで血栓ができやすい状態にあります。

脳梗塞の症状

 症状の多くは半身の脱力や感覚異常など、身体の半分の障害として出現するという原則があります。これは、二つの大脳半球はそれぞれ反対側の身体をコントロールしていることが理由です。実際の脳機能は非常に複雑なので、障害部位によって出現する症状も多彩です。脳梗塞は血の塊(血栓)が血管を塞ぎ、血液が脳細胞に酸素や栄養を運べなくなり、脳の、詰まったり破れたりして障害された部分がコントロールしていた身体の働きができなくなる病気です。従って、脳細胞のどの部分(領域)が障害を受けたかにより、症状は異なります。手足の動きに関する領域が障害を受けた場合は手足のしびれ、麻痺、歩行困難になります。言語領域の場合には“ろれつ”が回らない、言語障害などが起きます。顔半分に麻痺が残ったり、突然一時的に片目が見えなくなる「一過性黒内障」と呼ばれる症状に陥る場合もあります。脳梗塞が寝たきりにつながった場合は、使わない筋肉がこわばり動かなくなる合併症を引き起こす原因にもなります。

 また、脳梗塞は再発しやすい病気です。もし脳梗塞を患ったら、発症後の数年程度は特に注意が必要です。

脳梗塞の前兆

脳梗塞の前触れ

脳梗塞の前触れとして、一過性脳虚血発作が知られています。主な症状としては以下の症状が起こります。

  • 片方の手と足に力が入らない。
  • 顔を含む、身体の半身がしびれる。
  • ろれつが回らなくなる、言葉が出なくなる。
  • 片側の目が見えにくくなる、視野の一部が欠ける、物が二重に見える。
  • めまいがする。
  • ふらついて立てない、歩けなくなる。

 体の片側の手足に力が入らない、半身のしびれ、ろれつが回らない、言葉が出てこない、物が二重に見える、重いめまい、激しい頭痛、ふらつく、歩行困難などの症状が現れます。これらは「一過性脳虚血発作」と呼ばれ、小さな血栓が一時的に血管を詰まらせて起きる症状です。時間にして数分から数十分程度で、一日も経つと症状が治まってしまうので、そのまま放置する人が多く、これが事態を悪化させています。この段階で脳梗塞を疑い、一刻も早く脳神経外科で検査してもらうことが重要です。

予防と対策

脳卒中予防十か条

  1. 手始めに 高血圧から 治しましょう
  2. 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
  3. 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
  4. 予防には タバコを止める 意志を持て
  5. アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
  6. 高すぎる コレステロールも 見逃すな
  7. お食事の 塩分・脂肪 控えめに
  8. 体力に 合った運動 続けよう
  9. 万病の 引き金になる 太りすぎ
  10. 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ

社団法人 日本脳卒中協会ホームページより引用

 脳梗塞が集中して発症する時期と時間帯は、6月から8月の夏場、睡眠中と朝の起床後2時間以内です。起床時には血圧が上昇するので、就寝前と起床後にコップ一杯ずつの水を飲むことが脳梗塞予防につながるといわれています。夏の多汗、高齢者は脱水になりやすく、これは血液の流れを悪くする要因になります。適度な水分摂取は脱水を防ぎ、脳梗塞だけでなく熱中症の予防にもなります(今月の健康情報:熱中症 参照)。

 ただし、脳梗塞は夏の発症が多いといっても、それ以外の季節には少ないわけではありません。脳梗塞の発症は加齢や生活習慣と深くかかわっています。脳梗塞の3大危険因子といわれる高血圧、高血糖、脂質異常の予防・改善には、食事や運動、喫煙、飲酒など生活習慣の改善が大変重要です。食事では塩分や脂質、エネルギーをとり過ぎない、運動を日常生活に取り入れる、禁煙する、お酒は飲みすぎないなど、生活習慣を改善することが、脳梗塞、ひいては生活習慣病全般の予防・改善につながります。

急性期の治療

 脳梗塞の急性期の治療は、内科的治療が中心で、神経症状を改善することにより、日常生活における動作の障害を最小限にとどめることが目的となります。治療開始が早ければ早いほど後遺症が軽くなります。

 外科的治療としては、クモ膜下出血に対する脳動脈瘤クリッピング術(開頭手術)、カテーテルからコイルを入れる血管内治療とがあります。そのほか脳動静脈奇形摘出術、脳内血腫除去術、頭蓋内外バイパス手術など。

急性期に用いられる主な薬物療法

血栓溶解療法(t-PA静脈注射療法)

組織プラスミノーゲン活性化因子(tissue plasminogen activator:略称 tPA または PLAT)

 t-PA(血栓溶解薬)を使い、血管に詰まった血栓を溶かし、血流を回復させます。発症3時間以内に静脈注射すれば、改善が大いに期待されることより、早期受診することが最も重要です(診断に必要な時間もあるため、発症2時間目までの専門医療機関受診が必要)。

抗血小板療法

 血小板は血液を固まらせる作用があります。その凝固機能を抑え、動脈内で血栓ができるのを防ぎます。一般的に少量のアスピリンなどを用います。

抗凝固療法

 主に心原性脳塞栓症の急性期再発予防が目的です。抗凝固薬(ヘパリンなど)を用い、心臓内での血栓形成を抑制し、脳梗塞の再発を防止します。

抗浮腫療法

 梗塞や出血のために脳全体が浮腫を起こします。その浮腫を軽減する薬(グリセロール、マンニトール)を使用します。

脳保護療法

 脳梗塞発症時、発生する有害物質(活性酸素)を除去し、脳細胞を壊死から守る薬(エダラボンなど)を使用します。後遺症を軽減することがわかっています。

この症状はどうすればいい?
症状 考えられること 対応
今までに経験したことのない頭痛 脳疾患の可能性 早急な受診をおすすめします
痛みがだんだん増してくる頭痛
突然のひどい頭痛
言葉が出にくい、手足や口に麻痺、頭痛を伴う時もある
頭痛時に強い吐気やめまいを伴い、日常生活に支障が出る
頭痛時に目の痛みがあり、物の見え方がおかしい
頭を動かすと痛みが増し、脈打つように痛み、光や音の刺激で痛みが増す場合もある 片頭痛の可能性 解熱鎮痛薬で応急処置後、早期の受診をおすすめします
頭痛時、カフェイン摂取で一時的に楽になるが、また痛くなる カフェインを離脱することで発生する頭痛の可能性 カフェインを含有しない解熱鎮痛薬で応急処置後、早期の受診をおすすめします
脳卒中の関連情報は下記から得られます。

脳卒中治療ガイドラインン(日本脳卒中学会)
脳卒中ホームページ(厚生労働省)
脳卒中の予防と患者・家族の支援を目指して(日本脳卒中協会)

薬の検索方法:医薬品情報が簡単に検索できるiyakuSearchを公開しています

一般財団法人日本医薬情報センターJAPIC(Japan Pharmaceutical Information Center)

一般財団法人日本医薬情報センター

その他

医薬品医療機器総合機構(PMDA)などでも検索できます。

■テーマ
  1. 紫外線
  2. 細菌性食中毒
  3. 熱中症
  4. 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
  5. 気管支喘息
  6. ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome):運動器症候群
  7. 睡眠時無呼吸症候群「Sleep Apnea Syndrome:SAS」
  8. 逆流性食道炎
  9. 不整脈「心房細動」
  10. かぜ症候群、インフルエンザと肺炎について
  11. 帯状疱疹
  12. 腰痛
  13. 痛風
  14. 口内炎
  15. 夏に気をつけたいアデノウイルス感染症
  16. 過敏性腸症候群
  17. 食物アレルギー
  18. 緑内障
  19. 食欲不振
  20. かゆみ [皮膚そう痒(よう)症]
  21. 慢性疼痛
  22. ニキビ(尋常性痤瘡)
  23. 尿路結石
  24. 骨粗しょう症
  25. 慢性疲労症候群
  26. 光線過敏症
  27. 冷房病(冷え性)
  28. アトピー性皮膚炎
  29. めまい
  30. ピロリ菌
  31. 虫歯
  32. 受動喫煙
  33. 歯周病
  34. 片頭痛