セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome):
運動器症候群

2013年10月 掲載

 我が国が「世界一の長寿社会」と言われる理由は平均寿命約80歳、高齢化率や高齢化スピードがともに世界一だからです。今までの人間社会において、これほど長期間に渡り運動器を使用し続けた時代はありませんでした。近年、治療を受ける必要がある運動器障害が増加しています。このことは運動器を健康な状態に維持するのが困難であることを示しています。よって、従来の運動器機能障害対策の単なる延長線上では解決がつかない時代を迎えたことを意味し、新たな時代には新たな言葉が必要になります。そこで、日本整形外科学会では、運動器の障害による要介護の状態や要介護リスクの高い状態を表す新しい言葉として“ロコモティブシンドローム:locomotive syndrome「運動器症候群」”(以下「ロコモ」)を提唱しました。

 また、ロコモの認知率を向上させる目標を含み、厚生労働省「健康日本21(第2 次)」も本年4 月よりスタートしました。日本整形外科学会では、「ロコモ」予防に向けて積極的にチャレンジしており、チェックリストやロコモ対策のトレーニング法なども公表しています。また、同学会は10月8日の「骨と関節の日」に合わせて、高齢者だけでなく、若い人でも将来ロコモにならないよう注意を促しています。

ロコモとは


運動器不安定症:転倒リスクが高まった運動器疾患。

(日本臨床整形外科学会ホームページより引用改変)

 筋肉や骨、関節などが衰えるなどの「運動器の機能不全」のみならず、寝たきり等になる「要介護リスク」が高まった状態をさします。

 類似した言葉で「運動器不安定症」があります。運動器不安定症とは、「転倒リスクが高まった、運動器疾患」です。具体的には、65歳以上であること、運動機能低下をきたす疾患(骨粗鬆症、変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症、脊髄障害、神経・筋疾患、関節リウマチ 他)が存在すること、日常生活自立度判定が、ランクJまたはAであること、運動機能評価テストの項目を満たすこと、が条件です。

 従って、「ロコモ:運動器症候群」は、より広い疾患概念です。

ロコモの原因

 「運動器の障害」の原因には、大きく分けて2つあります。

1)運動器自体の疾患(筋骨格運動器系)

  • 変形性関節症
  • 骨粗鬆症に伴う円背
  • 易骨折性
  • 変形性脊椎症
  • 脊柱管狭窄症
  • 関節リウマチによる痛み、関節可動域制限、筋力低下、麻痺、骨折、痙性が原因でバランス能力、体力、移動能力の低下をきたす

2)加齢による運動器機能不全

  • 筋力低下、持久力低下、反応時間延長、運動速度の低下、巧緻性低下、深部感覚低下、バランス能力低下
  • 「閉じこもり」などの運動不足は「筋力」や「バランス能力の低下」などを誘発、それらは「運動機能の低下」を助長させ、容易に転倒しやすくなるなどの悪循環を形成
健康寿命・介護予防に影響する3大因子

 認知症はもとより、健康寿命・介護予防を阻害する因子はロコモ、メタボリックシンドローム(メタボ)が挙げられます。メタボは、心臓や脳血管などの「内臓の病気」で健康寿命・介護状態に影響するのに対し、ロコモは、「運動器の障害」が原因で影響を与えます。「身体機能の低下」や「運動器疾患」による痛み、易骨折性(軽微な外傷による骨折)などの多様な要因が重なり「負の連鎖」が起こり、バランス能力、体力、移動能力の低下をきたし、ついには、歩行、衣服の着脱やトイレなどの日常生活動作も自立して行えなくなり「健康寿命の短縮」、閉じこもり、廃用症候群※や寝たきりなどの「要介護状態」になっていきます。

 「ロコモ」と「メタボ」や「認知症」を、合併する方も多いという報告もあります。高齢者の医療の確保からは、幅広い対応策が必要です。年を重ね、寝たきりや痴呆に罹り、要介護状態となるのはできるだけ避けたいものです。これらの「健康寿命の延伸」、「生活機能低下の防止」には、予防、早期発見・早期治療が重要です。


※廃用症候群:安静状態が長期間続くと、心身は様々な機能の低下に陥る。例:筋萎縮、関節拘縮、褥瘡、骨粗鬆症、起立性低血圧、精神的合併症、括約筋障害(便秘・尿便失禁)など

ロコモ診断

▼「ロコチェック」

 以下の質問からロコモの危険性を自己チェックできます。

  1. 家の中でつまずいたり滑ったりする
  2. 階段を上るのに手すりが必要である
  3. 15 分くらい続けて歩けない
  4. 横断歩道を青信号で渡りきれない
  5. 片足立ちで靴下が履けない
  6. 2kg 程度の買物(1Lの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難である
  7. 家のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難である

 上記7項目のうち、一つでもあてはまれば「ロコモ」が疑われます。

▼ロコモ度テスト

 このテストは幅広い年齢層に対し、現在または将来において、ロコモの危険性を判定する目的で策定されました。このテストは、

  1. 「立ち上がりテスト」
  2. 2(ツー)ステップテスト
  3. ロコモ25

 の3種類があり、それぞれ

  1. 下肢筋力
  2. 歩幅
  3. 身体状態・生活状況

 を20 〜70 代の世代別に評価できます。

 これらテストを実施後、結果を年齢平均値と比較し、年齢相応の移動能力を維持しているかを判定します。もし年齢相応の移動能力に達していない場合、将来ロコモとなり得る危険度が高いと考えられます。

これらのテストは、日本整形外科学会公認ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコチャレンジ「ロコモを調べて予防しよう」(https://locomo-joa.jp/check/test/)を参考にして下さい。

ロコモ予防

▼ロコトレ

 日本整形外科学会が提唱するロコモを防止ためのトレーニング方法です。関節に過度な負担をかけずに筋肉を鍛えるのが重要で、ロコトレは必要最低限の内容で10分程度でできます。日本整形外科学会公認ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコチャレンジ「ロコモを調べて予防しよう」(https://locomo-joa.jp/check/locotre/)を参考にして下さい。

  1. 片足立ち:バランス能力をつける目的
    ▶片足立ちは姿勢をまっすぐにして1分間保ち、これを左右それぞれで1日3回実施
  2. スクワット:足の筋肉をつける目的
    ▶スクワットはいきを止めず深呼吸するペースで5〜6回を1日3回

▼その他

 日本整形外科学会公認ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコチャレンジ「ロコトレにプラスするならこんな運動」(https://locomo-joa.jp/check/locotre/#trainingPlus01 )を参考にして下さい。

  1. 体力に合わせて「ロコトレにプラスする場合の運動」
    • カーフレイズ:ふくらはぎの筋力
    • フロントランジ:下半身の柔軟性などをつける運動
  2. 「運動習慣を取入れる」
  3. 「腰やひざが気になる人」:関節等に痛みを抱える人は医師の診断を受け、
    その指導のもとで取組む

 トレーニングに関しては急に始めるのが最も良くないといわれ、少しずつ実践し問題がなければ徐々に運動負荷を上げていくことが大切です。医師でも最適な運動量を見つけるのは難しいと言われています。痛みは本人にしか分からず翌日まで痛みが残らない、悪化しないように注意しましょう。

食生活からの対策

 生活習慣も非常に重要です。肥満は足腰の負担になります。1日3回のバランスの良い食生活が基本です。骨や筋肉の量は20〜30代をピークに徐々に減少します。それらをつくるカルシウムやビタミン、たんぱく質などをバランス良く摂取することを心がけましょう。

ロコモは連鎖する

 年齢を重ねるとロコモになりやすくなると考えられています。これは関節などを傷めると「体を動かさなくなる→体重が増え筋力は落ちる→骨折や病気のリスクが高まる」という悪循環に陥るわけです。そうならないために早めに自分の状態に気付き筋力維持に励みましょう。

ロコモに関する情報は下記から得られます

新概念「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」(公益社団法人 日本整形外科学会)
ロコチャレンジ(日本整形外科学会公認ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト)
「始めましょう!ロコトレ体操」(日本医師会)

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