セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

不整脈「心房細動」

2014年01月 掲載

 不整脈と聞くと、重篤なイメージを抱かれるもしれませんが、不整脈は日常的に起こるものから生命が脅かされてしまうものまで、様々なタイプがあります。このうち「心房細動」という不整脈は命にかかわる合併症を招く恐れがあり、注意が必要です。

 心房細動を理解するために、まずどのようにして心臓が拍動するかなど、基礎的なことを説明します。

刺激伝導系(図1)・・・拍動の要

 心臓の拍動は心臓自体の「電気刺激」により収縮し、刺激が無くなると緩んで拡張します。「電気刺激」は心筋の「洞結節」という部位から発せられます。洞結節で発生した電気刺激は、房室結節を経てヒス束からプルキンエ線維まで伝えられ、心室を収縮させます。

不整脈とは

 健康な人の心臓の拍動は1分間に60〜100回で、これを正常洞調律といいます。不整脈とは「電気刺激」の発生部位や伝導に異変が生じ、その結果、正常洞調律が範囲を越えたり、拍動が乱れる状態を指します。

不整脈の種類

 3種類に分類されています(図2)。
   ◆期外収縮・・・拍動のタイミングが早く、リズムが乱れる
   ◆徐脈性不整脈・・・拍動が遅くなり、1分間に60回未満
   ◆頻脈性不整脈・・・拍動が速くなり、1分間に100回を超える

図2. 不整脈の種類

心房細動について

図3. 心房細動と脳梗塞との関係

 心房細動は頻脈性不整脈の中に分類されます。心房細動は心房のあちこちで電気刺激が回り続け(リエントリー)心房が痙攣するように細かく振動します。細かい震えは十分に心房を収縮させることができませんが、心室は収縮しているため心臓機能が極めて低下することはありません。従って、心房細動は必ずしも生命に関わるような危険な不整脈ではありません。しかし、心房細動が継続すると心不全などの合併症を起こしやすくなります。また、心房内の血流が悪くなると心房内に血液が滞るため血の塊り(血栓)ができることがあります。出来た血栓が脳動脈に流れ込むと、脳梗塞(心原性脳塞栓症)を導く恐れがあります(図3)。 現在、わが国では食事の欧米化や高齢化により、心房細動が急増し、それに起因する脳梗塞は死亡率が高く、命を取り留めたとしても予後不良な場合が多くみられます。2009〜2010年に急性脳梗塞と診断された患者の23%が心原性脳塞栓症であった等、社会的影響も多大といえます。

心房細動の種類

 3種類に分類されています。
   ◆発作性心房細動・・・心房細動の初期状態、数時間〜数日以内に正常に戻る
   ◆持続性心房細動・・・持続時間の長い(7日以上)心房細動
   ◆慢性(永続性)心房細動・・・長時間、常に心房細動が持続
発作性心房細動は放置すると慢性心房細動に移行する可能性があります。

原因(図4)

図4. 心房細動の原因と危険性

 加齢やストレス・急激な運動・飲酒・睡眠不足・過労・喫煙・脱水などの生活習慣などが誘因となり発症すると言われています。さらに、心臓弁膜症・心筋症・虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)などの基礎疾患があると、心臓に負担がかかり心房細動を併発する可能性が高まります。また、甲状腺機能亢進症などの心疾患以外の病気に併発することもあります。

症状

 「血圧低下」「動悸」「息切れ」「疲れやすい」「胸が苦しい」「階段や坂を上るのがきつい」等が現れることもありますが、50〜70%の人には全く症状がなく長い間にわたって気付かないこともあります。

治療

 心房細動に対する治療には、薬物治療、内科的治療(カテーテルアブレーション)と心房細動手術と総称される外科的治療があり、その目的は乱れている脈を正常に近づけることです。また、心房細動治療ガイドラインに従って、治療をすすめます。

 ●心拍数多発の場合には数を減らす「心拍数(レート)コントロール治療」が行われ、また、薬で戻らない心房細動に対しては電気的除細動(電気ショック)を施し、リズムをコントロールします。また、心臓に基礎疾患がある場合には心房細動が起こると心臓のポンプ機能が低下しやすいので、まずは原因疾患の治療が必要です。
 心原性脳塞栓症の防止には、抗凝固薬を服用して血栓形成を予防するとともに、日常生活で血液が固まらないように水分補給を適切に行い、脱水に気をつけることが重要です。
 ●カテーテルアブレーション
心房細動の原因となる電気回路を遮断し、リズムを元に戻す治療法です。血管にカテーテルを入れ、心臓の内壁を焼灼します。この方法を用いた場合、一般に発作性心房細動で約70〜80%、持続性心房細動の60〜70%まで根治または軽快が期待できます。しかし慢性心房細動だと約50〜60%と低くなり、長期にわたる心房細動ほど治りにくいと言えます。この方法によるリスクはカテーテル治療に伴う合併症である脳梗塞や心穿孔などがあります。
 ●心房細動手術
 心臓の内壁・外壁に伝導ブロックを作り、リズムを元に戻す治療法です。メイズ手術やラディアール手術などがあり、弁膜症の合併や血栓症の既往がある場合に適応される。
 ●心房細動治療ガイドライン(日本心臓財団HPより(日本循環器学会Circulation Journal 65(Suppl 5) 2001,改訂版 2006を参考に作成))

 心房細動治療ガイドラインは、治療の進め方、抗凝血療法の進め方、心房細動治療薬の選択が示されています。

治療の進め方

心房細動の状態 処置
心拍数100以上の心房細動 緊急時 ヘパリン投与後、電気的除細動
レートコントロール 心機能正常の場合:β遮断薬、ジゴキシン、ベラパミン、ジルチアゼム、ベプリジン
WPW症候群の場合:ベラパミン、ジゴキシンは禁忌
心拍数99以下の発作的心房細動 血栓がない場合 ヘパリン投与後に除細動
血栓がある場合 ワルファリン投与後、3週間後に除細動
心拍数99以下の慢性心房細動
心房細動が1年以上持続、左房径が5cm以上、除細動歴が2回以上、患者が希望しない場合
除細動せず、抗凝血療法、抗血小板療法


抗凝血療法の進め方
基礎心疾患のある場合 ワルファリンでコントロール. INR2.5〜3.5を指標
これで塞栓を発症した場合、アスピリンかチクロピジンを併用
基礎心疾患のない場合 リスクをもつ場合 抗凝血療法を考慮
70才未満:INR2.0〜3.0を目標
70才以上:INR1.6〜2.6を目標
リスクをもたない場合 60才未満:抗凝血療法は不要
75才以下:抗血小板薬
75才以上:INR1.6〜2.6のワルファリン療法
INR(International normalized ratio : プロトロンビン時間 国際標準時)

心房細胞治療薬の選択
心機能正常の場合 第一選択:ジソピラミド、シベンゾリン、ピルメノール、ピルジカイニド、フレカイニド
第二選択:プロカインアミド、キニジン、ベプリジル、ソタコール、プロパフェノン、アプリンジン
心機能軽度低下または
肥大型心筋症の場合
第一選択:プロカインアミド、キニジン
第二選択:ジソピラミド、シベンゾリン、ピルメノール、ピルジカイニド、フレカイニド、ベプリジル、ソタコール、プロパフェノン、アプリンジン
第三選択:アミオダロン
心機能が中等度以上
低下している場合
第一選択:プロカインアミド、キニジン、アプリンジン
第二選択:アミオダロン

予防

 心房細動の多くは、図4に示すように加齢、生活習慣病がきっかけとなったり、他の病気が原因になりおこります。まず予防の第一歩は、血圧や血糖を下げる、メタボリックシンドロームの是正、ストレスを回避するなど、生活習慣病を予防することを心がけて下さい。

■不整脈(心房細動)に関する科学的知見や関連情報は下記から得られます。
 不整脈(国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス) 
 http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/disease/arrhythmia.html

 不整脈講座 不整脈ってなあに?(日本不整脈学会)
 http://jhrs.or.jp/lecture.html

 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(一般社団法人 日本循環器学会)
 http://www.j-circ.or.jp/guideline/

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