加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)
(2014年03月 掲載)
(2022年8月 更新)
帯状疱疹は小型の水ぶくれが生じる病気「ヘルペス」の一種で、ウイルスが原因でおこる感染症です。原因となるこのウイルスをほとんどの人は持っています。
ウイルスが再活性化する要因 |
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疲労 ストレス 加齢(老年期の成人) |
外傷 悪性腫瘍 |
化学療法 放射線療法 |
副腎皮質ホルモン製剤の投与を契機に発症 |
原因である水痘帯状疱疹ウイルス(VZV:ヘルペスウイルスの一種)は子供のころに罹る水痘(水ぼうそう)を起こすウイルスと同じものです。このウイルスは水ぼうそうが治った後も長期間、身体の神経節に潜んでいます。そして、様々な要因によりウイルスが再活性化した場合、神経の分布にそって、身体の左右どちらかに赤い発疹や水ぶくれが帯状に現れます。ウイルスが再活性化する原因はわからないことが多いのですが、ストレスや病気、薬剤などにより免疫機能が低下したときに起こる場合があります。
一般的な症状、症状の経過、注意事項を以下に示します。
- 帯状疱疹が最も多く現れるのは顔、胸から背中、お腹、その他は手、足など。
多くの場合、身体の左右どちらかの側にだけ帯状に発症。 - 患部は軽い刺激にも敏感に反応し、激痛。
- 痛みは皮膚症状が治る頃に消失。
- 治癒後も強い痛みが持続することはあるが、多くの人は後遺症もなく回復。
- 通常、小児では成人より軽症。
- 高齢者や免疫機能が低下している人は、水疱を掻くと患部に細菌による感染症が生じ、傷あとが残りやすい。
- 帯状疱疹は一回罹患すると再度発症するのはまれである(2回以上の発症:4%未満)。
*水痘帯状疱疹ウイルスが一部の脳神経に感染する
[神経痛様疼痛、瘙痒感、違和感、知覚異常(ピリピリ、チクチク)]→(数日後)[浮腫状の紅斑(軽度の発熱、リンパ節腫脹、頭痛) ]→小水疱(水ぶくれ:初めは透明であるが黄色になる)→びらん(一部潰瘍))→(10〜15日後)[乾燥して痂皮(かさぶた)]→(3〜4週間後)治癒
・水ぶくれは破らないように
痂皮になるまでは、水疱にはウイルスが入っている。
この内溶液が感染源として水痘原因になる場合がある。子供、高齢者、妊婦に配慮する。
・痛みが長引く場合は受診する
「痛み」は発症初期にはあるが、皮膚症状が消失すると同時に消える。一般に3ヶ月以上経過して残存する「痛み」は帯状疱疹後神経痛と呼ばれ、特に高齢者に多い。また、免疫機能が破綻している可能性があるので、再度受診すること。
早期治療は治療効果をあげます。帯状疱疹の疑いがあれば、直ぐに受診することをおすすめします。診察では、正確な痛む位置を尋ねられます。まれに、診断を確定するために水疱サンプルの採取や、皮膚生検を行うこともあります。
帯状疱疹ワクチンの接種は帯状疱疹の罹患にかかわらず、50歳を超えた健康な人に接種されます。これらワクチンの接種により、帯状疱疹の罹患を半分に、帯状疱疹後神経痛の罹患を3分の1に低下させます。また、帯状疱疹が生じた場合、ワクチン接種を受けた方が、受けない方に比較し、症状緩和や治癒を早めるのに有効など軽症ですみます。ワクチン接種は副反応が生じることがあります。通常は軽度ですが、まれにワクチン自体が軽い帯状疱疹を発症することがあります。妊婦や白血病などの免疫機能が低下している人は接種できません。
・原因ウイルスに対して
早期にアシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどの抗ウイルス薬が有効で特に高齢者や免疫機能の低下している人に使用されます。これら薬剤は水疱が出る前に使用するのが効果的で、水疱が出て3日経過した場合は無効の場合があります。
・疼痛に対する治療
一般に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられます。疼痛部位や程度に応じて副腎皮質ホルモン製剤や三環系抗うつ薬、非麻薬性鎮痛薬(オピオイド)を服用します。
・障害された神経修復に対して
ビタミンB12を内服します。
・理学療法
特に高度な疼痛に対しては、薬物療法に加え神経ブロックが併用されます。神経ブロックは疼痛を消失させるだけでなく局所血流を増加させるので、帯状疱疹後神経痛の予防効果もあると言われています。
・安静にすることが重要
症状の程度は様々ですが、通常は医師の指示を守り安静にしていれば自然に治ります。精神的または肉体的に疲労を回復させることが何より治癒に繋がります。
・帯状疱疹はAIDS指標疾患注1)ではありませんがHIV感染者の無症候キャリア期に発症しうる合併症で、これを契機にHIV感染が見つかることがあります。
注1) | AIDS指標疾患:厚生労働省エイズ動向委員会が疫学調査を目的に作成したHIV感染症/AIDSの診断基準を示す。 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-07.html |
・帯状疱疹は高齢者に多い疾患ですが、本人の抵抗力でその重症度が決定されるため「若いから軽症」とは限りません。罹患した初期にはその症状が軽度でも無理をすることで重症化する疾患です。日ごろから栄養と睡眠を充分にとり、適度に運動を行うなど、心身の健康に気を配り体力を低下させないことが肝要です。
・帯状疱疹は他人に感染することはほとんどありません。しかし、水痘に罹患してない人は発症することがあるので、特に子供や妊産婦さんなどには接触しないほうがよいでしょう。
・帯状疱疹の症状は非常に軽度の場合もあります。そのために受診が遅れることも多く、最終的に治療が長引き重症化することがあります。虫さされだと感じても、通常と異なる場合は、自己判断せずに皮膚科などへ早めに受診して下さい。 他の疾患との違いを以下に示します。
皮膚症状(水疱)における 〜帯状疱疹との違い〜 | ||||||||
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注意:上記記載は必須事項ではない。症状は疾病の重篤度により異なる |
・水痘帯状疱疹ウイルス疾患の病理(国立感染症研究所)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2256-related-articles/related-articles-404/4017-dj404b.html
・健康の森「帯状疱疹の原因」(日本医師会)
https://www.med.or.jp/forest/check/taijo/index.html
・水痘(日本感染症学会)
https://www.kansensho.or.jp/ref/d31.html
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