セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

食物アレルギー

2017年04月 更新
(2014年09月 掲載)

 「食物アレルギー」とは様々な食材中に含有するアレルギー原因物質が体内に入ることで、本来ならば自己防衛のための免疫機構が、逆に弊害をもたらすような過剰反応を引き起こすことを言います。

 人間には、体に異物であるもの(主に蛋白質で抗原・アレルゲンと呼ぶ;アレルゲン成分を下の表に示す)が侵入した時、それに対抗する物質(抗体)を作り、抗原を排除するシステムが存在します。このシステムを免疫といいます。免疫は、細菌やウイルスなどの外敵が侵入した際に生体を守るために生じる反応ですが、生体にとり害ではない花粉や食物に対しても、生体が外敵とみなして反応するために様々な症状が引き起こされることがあります。これをアレルギーといい、その原因物質が食物である場合を「食物アレルギー」と呼びます。近年、食物アレルギーは乳幼児から成人まで発症が増加し、重篤なアナフィラキシーショック症状で、死亡することもあります。

食品中の主なアレルゲン成分
オバルブミン  オボムコイド  鶏卵リゾチーム
牛乳 β-ラクトグロブリン  as1-カゼイン
小麦 グルテン  グリアジン
そば 特定されていない
ピーナッツ Ara h 1  Ara h 2
大豆 Glym Bd 30K
甲殻類 トロポミオシン
パルプアルブミン
原因となる食物

 食品衛生法関連法令が改正され、食品での健康被害を防止する目的でアレルギー症状を起こす物(以下、アレルギー物質)を表示する制度が始まりました。表示される品目は実態調査等に基づいて見直されます。平成25年9月には「カシューナッツ」「ごま」が特定原材料に準ずるものに追加されました。

◆特定原材料(省令で定められたもの)
特にアレルギーを起こしやすいとされる食品のうち、発症数、重篤度から考えて表示する必要が高いものとして表示が義務化された7品目

特定原材料:必ず表示される7品目
卵、乳、小麦、落花生、えび、そば、かに

◆特定原材料に準ずるもの(通知で定められたもの)
 可能な限り表示することが推奨された20品目

特定原材料に準ずるもの:表示が勧められている20品目
いくら、キウイフルーツ、くるみ、大豆、バナナ、やまいも、カシューナッツ、もも、ごま、さば、さけ、いか、鶏肉、りんご、まつたけ、あわび、オレンジ、牛肉、ゼラチン、豚肉

特定原材料に準ずるものについては表示が義務付けられていません。従って、これらの品目にアレルギーをおこす可能性がある人は十分な注意が必要です。

近年の調査によると、アレルギーの原因物質は卵、牛乳、小麦などの三大アレルゲンが多いようです。ただし原因食物は、年齢により異なります。下表に示すように、3歳以下における原因の多くは鶏卵であるのに対し、成人ではえび・かにが多いなどの違いがあります。

症状

 食物摂取後に免疫を介して以下に示すような様々な症状が現れます。食後に異常な症状が発現しても、免疫が関与していなければ「食物アレルギー」とは言いません。これら症状は即時型と非即時型に分けられます。
 即時型;2時間以内に発症。蕁麻疹、かゆみ、口唇浮腫、咳、嘔吐、アナフィラキシー
 非即時型;乳幼児期のミルクなどが関与した腸炎による下痢など

皮膚:紅斑、蕁麻疹、血管性浮腫、そう痒、湿疹など
消化器:口腔異和感、口唇浮腫、悪心、嘔吐、腹痛、下痢など
呼吸器:くしゃみ、鼻汁、鼻閉、咳嗽、喘鳴、呼吸困難、胸部圧迫感、咽喉頭浮腫など
眼:結膜充血・浮腫、眼瞼浮腫など
神経:頭痛など
全身性:アナフィラキシー(全身の蕁麻疹、血圧低下、意識障害など重症な症状は アナフィラキ
    シーとよび、急激な症状悪化から死に至る可能性もある)

特殊な食物アレルギー

▼食事依存性運動誘発アナフィラキシー:
 食物アレルギーによるアナフィラキシーが食後2時間以内の運動負荷により発症することが大部分です。好発初発年齢は中学・高校生から青年期です。原因食品は小麦やえびなどの甲殻類です。発症には「食物+運動負荷」にいくつかの増強因子(下表;発症に関与する要因)が関与します。アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は増強因子の一つです。

発症に関与する要因
  • 運動:負荷量、種類、食事後の間隔・入浴
  • 食物アレルゲン:量、種類、組み合わせ、すべて
  • 全身状態:疲労、寝不足、感冒
  • 気象条件:気温:高温、寒冷  湿度:高い
  • 自律神経系:ストレス
  • 薬剤:NSAIDs;アスピリン、アルコール
  • 家族性
  • 月経:女性ホルモン
  • 分娩
  • 花粉:野菜、果物
  • 化粧品:加水分解小麦含有
*食物依存性運動誘発アナフィラキシーは食物アレルギーの特殊型に分類される。
通常の即時型反応とは異なり、特定の食物摂取と運動負荷に加え、上記に示す複数の修飾因子が発症に関与すると想定される

▼口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome, OAS):
 ある特定の果物や野菜などを食べることで、口腔・咽頭粘膜の過敏症状(主としてかゆみや腫れなど)が起きることをいいます。この反応は、花粉症の人に比較的高率に発現することが知られており、食物と花粉との間に共通するアレルゲンがあるためと考えられています。

花粉症の種類と口腔アレルギー症候群が発症しやすい食物
  • シラカバの花粉症:りんご、もも、梅、くるみ、イチゴなど
  • スギ、ヒノキの花粉症:トマトなど
  • ヨモギの花粉症:にんじん、りんご、セロリ、キウイフルーツなど
  • ブタクサの花粉症:バナナ、メロン、きゅうり、スイカなど
*花粉症だから必ず口腔アレルギー症候群も発症するとは限らないが、発症を避けるために抗原となる食物の摂取には注意が必要

上記表は交叉反応性が報告された花粉と果物・野菜の組合せの一部です。また、組合せは、居住地域に飛散する花粉の種類で変化します。
詳細は食物アレルギー診療ガイドライン2012 第10章食物アレルギーの特殊型 10-3 口腔アレルギー症候群をご覧ください。
http://www.jspaci.jp/jpgfa2012/chap10.html

▼ラテックス-フルーツ症候群:
 天然ゴム製品に接触することで発症する蕁麻疹、アナフィラキシーショック、喘息発作などの即時型アレルギー反応をラテックス・アレルギーといいます。果物の一部はラテックスと交叉抗原性をもっており、ラテックスに感作された人がある果物を食べると、蕁麻疹・アナフィラキシーのような強い症状を誘発することがあり、ラテックス・フルーツ症候群と呼びます。

ラテックスと交叉抗原性1)を照明された主なフルーツ
  • アボガド、くり、バナナ、キウイフルーツ、パパイヤ、パッションフルーツ、 イチジク、メロン、マンゴ、パイナップル、もも、トマト、など(ラテックスアレルギー患者の約5割が、これらの食品に対して過敏反応(アナフィラキシー、喘鳴、蕁麻疹、OAS)を有することが報告されている)

交叉抗原性1):ある食物(抗原)に対する抗体が、他の食物(抗原)と反応(結合)すること

診断

 「アレルギーの有無を調べる検査」と「原因となる食物を探す検査」が必要です。診断は通常以下の順序で進められます。

1.問診:医師が、症状、既往症、家族のアレルギーの有無などについて聞くことで、アレルギーの有無を推測します。
2.検査:問診で推定された食べ物に対する抗体がどの程度あるかを血液検査で調べます。
3.確定:原因と思われる食べ物を除去して症状が改善し、再び食べて症状が出れば、その食べ物が原因と確定されます。
さらに食事日誌をつけることで、食物アレルギーの原因食品を調べることができます。

治療・対策

◆食事療法
治療の基本は、アレルゲンを含む食品を除去することです。完全除去が必要な場合と、加熱などにより作用を弱めたり、低アレルゲン食品を使用する場合があります。

◆薬物療法
基本は食事療法ですが、必要に応じ、医師、薬剤師の指導のもと抗アレルギー薬を使用します。

日常生活での注意事項

  1. 体調の調整:
    • 日ごろから規則正しい生活を心がけ、疲れやストレスをためないようにしましょう。
  2. バランスのよい食事:
    • 食事の偏りはアレルギーの原因となる場合があります。
  3. 食後の運動に対する注意:
    • アナフィラキシー症状は、食後に激しい運動をした場合に起こることがよくあります(食事依存性運動誘発アナフィラキシー)。食物でアレルギー症状を起こしたことのある人は、食後2時間程度は激しい運動を控えましょう。
  4. 食品成分の確認:
    • 重いアレルギー症状を起こしやすい「卵・乳・小麦・落花生・えび・そば・かに」の7品目を含む加工食品の原材料と添加物については、表示が義務づけられています。購入するときは、表示をチェックする習慣をつけるとよいでしょう。
     

こどもの食物アレルギー 「最近の研究」

 これまでの「食物アレルギー対策」で常識であったことが、研究により変わってきました。

  1. 離乳食を遅らせない
    • 食物でアレルギーが発症していない場合は、多種の食物を早期に食べた方が食物アレルギーが出にくいと言われています。
      *注意:皮膚トラブル(アトピー性皮膚炎や湿疹)経験がある乳児は、離乳食でアレルギーを発症する可能性があります。医師に相談してみましょう。
  2. 食物除去をしすぎない
    • 原因食物を避けることは必須です。一方、発育のためには食物からの栄養摂取も必須です。これらの事から、食物除去は最低限にしたいものです。食物経口負荷試験を医療機関で受けてみましょう。これは、除去しなくてよい食物の種類や安全に食べられる量が把握できます。
      *注意:アレルギー症状に対応できる医療機関で経験のある医師で検査することが大切です。
  3. アトピー性皮膚炎との関係
    • 「アトピー性皮膚炎が食物アレルギーの原因になる」と考えられるようになりました。スキンケアを十分に行ってもアトピー性皮膚炎が改善しない場合には、食物アレルギーの影響を確かめ、最小限の食物除去を行いましょう。
     

アレルギー表示に関する質問や相談は最寄りの保健所、厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課調査表示係などが受け付けています。

■食物アレルギーに関する情報は下記から得られます。
 食物アレルギー診療ガイドライン2012ダイジェスト版(日本小児アレルギー学会)
 http://www.jspaci.jp/jpgfa2012/

 アレルギー相談センター (財団法人 日本予防医学協会)
 https://www.immune.jp/allergy/consults/

 学校給食における食物アレルギー対応について(文部科学省)
 http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1355536.htm

 「食物アレルギーの診断の手引き2014」検討委員会(厚生労働科学研究)
 http://www.foodallergy.jp/manual2014.pdf

 アレルギー表示に関する情報(消費者庁)
  http://www.caa.go.jp/foods/index8.html

■テーマ
  1. 紫外線
  2. 細菌性食中毒
  3. 熱中症
  4. 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
  5. 気管支喘息
  6. ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome):運動器症候群
  7. 睡眠時無呼吸症候群「Sleep Apnea Syndrome:SAS」
  8. 逆流性食道炎
  9. 不整脈「心房細動」
  10. かぜ症候群、インフルエンザと肺炎について
  11. 帯状疱疹
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  15. 夏に気をつけたいアデノウイルス感染症
  16. 過敏性腸症候群
  17. 食物アレルギー
  18. 緑内障
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  20. かゆみ [皮膚そう痒(よう)症]
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  22. ニキビ(尋常性痤瘡)
  23. 尿路結石
  24. 骨粗しょう症
  25. 慢性疲労症候群
  26. 光線過敏症
  27. 冷房病(冷え性)
  28. アトピー性皮膚炎
  29. めまい
  30. ピロリ菌
  31. 虫歯
  32. 受動喫煙
  33. 歯周病
  34. 片頭痛