セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

緑内障

2014年11月 更新
(2014年10月 掲載)

 緑内障は、日本緑内障学会で行った大規模な調査(多治見スタディ)によると、40歳以上の約5%の人が罹患していると分かった身近な病気で、年齢とともに有病率が上がります。最も一般的な症状は視野が狭くなることです。多くの場合、この病気の進行は大変ゆるやかなので、初期には自覚症状はほとんどありませんが、進行した場合は視力が低下したり、場合によっては失明したりすることがあります。

緑内障の発症
房水と眼圧の関係

房水と眼圧の関係

 角膜と虹彩で囲まれている部分を前房といい、角膜と虹彩の境目を隅角(ぐうかく)と呼びます。毛様体で産生された房水は隅角へ流出します。隅角には小さな孔(シュレム管)が多数開いており、前房へ流れてきた房水はここから排出していきます。毛様体で産生される房水量と隅角から排出される房水量は、いつも同じなので、眼圧は常に一定に保たれています。
 緑内障は、隅角部にある房水の流出口部分が、何らかの原因で目詰まりし、房水が徐々に流れにくくなり、眼圧が上昇することで発症します。これを原発開放隅角緑内障といいます。一般にはこのように眼圧が上昇することで発症する病気として理解されてきましたが、眼圧は正常の範囲にありながら、同様の症状がおこる緑内障(正常眼圧緑内障)も存在します。また、眼圧が急激に著しく上昇した場合(急性緑内障発作)は、急速な視野悪化がおこります。

緑内障の症状

 緑内障の自覚症状としては、見えない場所(暗点)が出現します。また、視野が狭くなるなど、これらが最も一般的症状です。
 通常、私達の日常生活において、物は両目で見ます。従って、多くの場合、病気の進行が緩やかな緑内障の初期では、視野障害が片方にあったとしてもハッキリとわかりません。従って自覚するころには、かなり進行し、症状が悪化していることが多いのです。その後、視野障害が進行すると、視力低下や、失明することさえありえます。

 緑内障が恐ろしい理由の一つは、症状の進行が常に一方向性で、一度喪失した視野・視力は治療で回復することは不可能です。緑内障治療とは、症状の進行を遅延するためのものであり、改善することはできません。
 急激な眼圧上昇で発症する急性緑内障発作では、目のかすみ・眼痛・充血・吐き気・頭痛などの自覚症状をともなうことがあります。こういう場合は、非常に苦しく、急速な視野悪化がありますので、直ちに治療が必要です。
 眼圧上昇のスピードが遅い原発開放隅角緑内障や、正常眼圧の正常眼圧緑内障などは、自覚症状がほとんどないという特徴から、気付いた時には、かなり病状が悪化している場合があります。

緑内障の分類

 主に、原発緑内障、続発緑内障、発達緑内障の3病型に大別されます。

原発緑内障:眼圧上昇ないし視神経障害の原因を他の疾患にもとめることができない
 1) 原発開放隅角緑内障・・・緑内障全体の約8割を占める。慢性緑内障。
    ・原発開放隅角緑内障(眼圧21mmHg以上)・・・7%
    ・正常眼圧緑内障(眼圧21mmHg以下)・・・93%(日本人に多い)
 2)原発閉塞隅角緑内障・・・緑内障全体の約1割を占める。急性緑内障。
続発緑内障:他の眼疾患や全身疾患、薬物使用が原因となり眼圧上昇が生じる
 緑内障全体の約1割を占める。原因となる疾患にはぶどう膜炎、糖尿病、網膜中心静脈閉塞症など。
 糖尿病による血管新生緑内障は、失明率が高い。
発達緑内障:胎生期の隅角発達異常で眼圧上昇が生じる

医薬品副作用で緑内障を発症する場合もあります。
 急激な発症と慢性に進行するものがあり、放置すると重篤な視機能障害を残すので、早期対処が重要です。副作用による場合の早期発見のポイントは、医薬品使用後に、急激に「目のかすみ」「目の痛み」「目の充血」「吐き気・頭痛」が生じたら、直ちに医師・薬剤師に連絡することです。原因医薬品の使用から発症までの期間は「数時間以内」から「一カ月以上経過」など差があります。慢性タイプは、初期には症状があっても軽微なことが多く、特に副腎皮質ステロイド薬を使用している場合は定期的な眼科検査が必要です。

緑内障に使用できない薬を表に示します。
 抗コリン作用のある薬物を中心に多数あります。また、副腎皮質ステロイド薬を頻回、あるいは長期間使用している場合は、眼圧が上昇し易いことが報告されています。(掲載してあるものは代表例であり、使用医薬品が緑内障に禁忌なのかは医師、または薬剤師にご相談下さい)。

緑内障に関する禁忌項目がある医薬品リスト
分類成分名または販売名
催眠鎮静剤、抗不安剤ゾルピデム
抗てんかん剤クロナゼパム
抗パーキンソン剤レボドパ
神経系用剤イミプラミン
総合感冒剤複合感冒薬
他の中枢神経系用薬マジンドール
骨格筋弛緩剤プリジノール
自律神経剤プロパンテリン
鎮けい剤チメピジウム
眼科用剤アトロピン
耳鼻科用剤テトラヒドロゾリン
鎮暈剤ジフェンヒドラミン
不整脈用剤ジソピラミド
利尿剤アセタゾラミド
血管拡張剤ニトロール
他の循環器官用薬アメジニウム
鎮咳剤ペントキシベリン
気管支拡張剤・他チオトロピウム
消化性潰瘍用剤コランチル
健胃消化剤複合健胃散
副腎ホルモンアドレナリン
他の泌尿生殖器官、肛門用薬オキシブチニン
抗ヒスタミン剤ジフェンヒドラミン
他の消化器官用薬イリコロンM
副腎皮質ステロイド薬ベタメタゾン
検査

 発症の初期段階では自覚症状がほとんどないため、受診が遅れがちです。早期に発見するためには、定期的な検診が欠かせません。
 緑内障を見つけるためには、眼圧測定、眼底検査、視野検査、隅角検査など多くの検査が必要です。

1.眼圧検査:正常の眼圧は10〜20mmHgとされており、これが目安となります。
2.眼底検査:視神経の障害の程度を判定するために行う検査です。
3.視野検査:見える範囲を調べる検査です。緑内障の進行具合を判断するために、最も重要な検査です。
4.隅角検査:緑内障の種類を見分ける上で重要です。

治療

 治療方法としては、薬物療法・レーザー治療・手術がありますが、緑内障のタイプやそれぞれの人に適した治療方針を決定することが重要です。
○薬物療法(点眼薬)
 緑内障治療の主流は点眼薬です。点眼薬には房水の産生をおさえるものと房水の流出をよくするものがあり、どちらも眼圧を低下させるのが目的です。緑内障のタイプによって薬の種類は異なります。
○レーザー治療
 薬物療法だけでは眼圧が下がらない場合、レーザー治療を考えます。レーザー治療はどのタイプの緑内障にも適応できるわけではなく、眼科医との十分な相談が必要です。
○手術治療
 薬物療法やレーザー治療でも効果が思わしくないときに行います。眼球を切開して房水が通る道を拡げたり、新しく作ったりして眼圧を下げます。

予防

 緑内障は、ゆっくり進行するので自覚症状はあまりありません。 定期検査による早期発見・早期治療が大切です。血縁者に緑内障の患者さんがいる方は特に注意が必要です。そのほかリスク要因として、強い近視、頭痛持ち、血圧が低い、冷え性、やせ形の人などがあげられています。

 緑内障は早期に発見し、早くから治療を受ければ、失明に至らず視力を保つことができます。生涯にわたり目の健康を保って楽しい社会生活を過ごすために、40歳を過ぎたら、1年に1回は、眼科で緑内障の定期検査を是非受けてください。

■緑内障に関する情報は下記から得られます。
 目の病気 「緑内障」(日本眼科学会)
 http://www.nichigan.or.jp/public/disease/ryokunai_ryokunai.jsp

 40代からの緑内障(公益社団法人 日本眼科医会)
 http://www.gankaikai.or.jp/health/26/index.html

 緑内障診療ガイドライン(日本眼科学会)
 http://www.nichigan.or.jp/member/guideline/glaucoma.jsp

 健康ぷらざ 40歳以上は要注意 -緑内障-(日本医師会)
 http://dl.med.or.jp/dl-med/people/plaza/155.pdf

 緑内障とは(日本緑内障学会)
 http://www.ryokunaisho.jp/general/index.html

 重篤副作用疾患別対応マニュアル 緑内障(厚生労働省)
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/dl/s0325-10b_0001.pdf

■テーマ
  1. 紫外線
  2. 細菌性食中毒
  3. 熱中症
  4. 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
  5. 気管支喘息
  6. ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome):運動器症候群
  7. 睡眠時無呼吸症候群「Sleep Apnea Syndrome:SAS」
  8. 逆流性食道炎
  9. 不整脈「心房細動」
  10. かぜ症候群、インフルエンザと肺炎について
  11. 帯状疱疹
  12. 腰痛
  13. 痛風
  14. 口内炎
  15. 夏に気をつけたいアデノウイルス感染症
  16. 過敏性腸症候群
  17. 食物アレルギー
  18. 緑内障
  19. 食欲不振
  20. かゆみ [皮膚そう痒(よう)症]
  21. 慢性疼痛
  22. ニキビ(尋常性痤瘡)
  23. 尿路結石
  24. 骨粗しょう症
  25. 慢性疲労症候群
  26. 光線過敏症
  27. 冷房病(冷え性)
  28. アトピー性皮膚炎
  29. めまい
  30. ピロリ菌
  31. 虫歯
  32. 受動喫煙
  33. 歯周病
  34. 片頭痛