加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)
(2014年11月 掲載)
食欲はヒトとして基本的な健康バロメーターです。なんとなく食欲がない、好物を目にしても食欲がわかないなど食欲不振に陥ることは誰でも経験します。原因は心配しないでよいものから、心身の疲労、病気が隠れているなど様々です。
食欲は脳の視床下部に存在する満腹中枢と摂食中枢によりコントロールされています。視床下部は交感神経・副交感神経の機能および内分泌機能を総合的に調節しています。これらの具体的な働きとしては摂食行動や飲水行動、睡眠などの本能行動、また怒りや不安などの情動行動に関与していることです。
空腹になると体内の脂肪が分解されて脂肪酸が遊離します。その脂肪酸が摂食中枢を刺激し、“お腹がすいた”と実感し、食欲がわいてきます。次に、食事から摂取した栄養素が分解され、血液中にグルコースが増えます。そのグルコースは満腹中枢を刺激することで“お腹がいっぱい”と感じさせ、食欲が抑えられます。このように、食欲は自律神経系によって調節されています。したがって、なんらかの原因で自律神経系のバランスが乱れると、食欲不振に陥ってしまいます。
症状が数日で戻る場合は心配はいりません。問題なのは何らかの病気がもとになり食欲不振を招く場合です。その原因はひと様々で、下の表に食欲不振を引き起こす原因や疾患の一部を示しました。
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ストレスなど日常生活からの場合や疾患が原因である場合があります。その代表的なものは胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなど消化器系の病気の他、腎不全、甲状腺機能低下症などがあります。風邪やインフルエンザなども食欲が減退する原因であることはよく知られています。
うつ病や統合失調症などの精神的要因も考えられます。食事中に腹痛を感じるようになり、食事量が少なくなってきます。寝付きが悪く、早朝になると目が急に覚め、腹部の検査をしても異常はありません。その後、軽度のうつと診断され、抗うつ剤利用で症状は無くなるなどの事例もあります。
病気ではなく生活スタイルで起こる場合は、精神的ストレス、運動不足、睡眠不足、過労、飲みすぎなどです。独り暮らしにより、孤独を感じストレスがたまり食欲に影響がでることもあります。
年を重ねると足腰が弱ったり、食べ物をかみ砕く機能が低下したりするので、特に高齢者に対しては注意が必要です。
女性は妊娠初期のつわりで食欲が落ちたり、痩せたいという思いから、体重増を恐れて食べられなくなる摂食障害(拒食症)を思春期などに発症し、最悪の場合は死に至ることもあります。 食欲不振を引き起こす疾患
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◆日常生活でできること
- 夜更かしなどをせず、できるだけ規則正しい生活を心がけることです。ストレスが原因の場合には、アルコールでそのストレスを発散する人もいますが、趣味など自分なりの解消法をみつけることが重要です。
- 食欲のないときには、消化の良い食べ物、食べ易いもの等を少しずつ摂ることが大切です。最近は栄養補助食品でゼリータイプや飲料タイプの流動食もあります。
- 消化器に問題がある人は消化吸収の良いものを第一に考え、刺激物は避けましょう。
- 食べ方の工夫も有効です。食材の配色や盛りつけ、いつもより軟らかめにするなど、少し手を加えることで、食欲に繋がることもあります。
*気をつけることは、吐き気があるときは無理をしない方がいいです。食欲低下により活力や行動するためのエネルギーも落ちているので悪循環に陥りやすくなっています。
◆市販薬を利用する
原因が分かっている場合、例えば暴飲暴食などで食欲がない時などは、市販の胃腸薬を服用してみましょう。ストレスなどで気分がふさぐ時(軽度)などは、健胃消化作用のある生薬配合の胃腸薬が効果的な場合があります。
*薬には種類が多く、類似した名称でも反対の働き(作用)をする場合があります。症状に適切な薬剤を選択するためにも薬剤師への相談をおすすめします。
◆医療機関を利用
食欲不振が長引き心配な場合は、内科や胃腸科、消化器科を受診してみましょう。神経性の食欲不振症が疑われる場合は周りにいる家族などが配慮しながら、心療内科で相談してみましょう。
*時間が経っても食欲が戻らない、いつもと何か違うと感じられる場合、病気が隠れている事もありますので医師や薬剤師などに相談して下さい。
・「みんなのメンタルヘルス」
食欲不振 〜おいしく食べられない、何も食べたくない〜(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/symptom1_6.html
・中枢性摂食異常症(難病情報センター)
http://www.nanbyou.or.jp/entry/149
・「摂食障害の精神科治療」小論集(日本摂食障害学会)
http://www.jsed.org/links.html
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