セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

かゆみ [皮膚そう痒(よう)症]

2015年01月 掲載

 発疹などの炎症は見られないのに「かゆみ」を生じる病気を皮膚そう痒症といいます。皮膚そう痒症は皮膚が乾燥しやすい冬季に起こりやすく、特に皮膚の水分や皮脂の分泌が少なくなる高齢者で多くみられます(老人性皮膚そう痒症)。
 そのほか、病気が原因でかゆみを生じる場合もあります。さらに精神的な要因の関与も指摘されています。

皮膚の構造

 成人の皮膚は、人により差はあるものの、体重の約16%(皮下組織を含む)を占めます。皮膚を広げた全体面積は畳1枚分位(約1.6m2)、厚さは平均約2mm(脂肪は除く)あり、最も目につく器官です。また、日常の生理的な側面を反映し易い器官であるので、健康状態を知る一助にもなります。

図1. 皮膚と皮下組織

図1. 皮膚と皮下組織

 皮膚は2つの主な組織層からできています。外側の薄い部分は、「表皮」と呼ばれる上皮組織と「真皮」と呼ばれる結合組織から構成されています(図1)。
 表皮はさらに角質層、顆粒層、有棘層、基底層からなっており、常に新陳代謝を繰り返しています(表1)。

表1. 表皮の構造と機能

名称 機能
角質層 角質層の役割は外部刺激からの保護と皮膚の潤いを保持すること。
この機能を担う一つにケラチンが存在し、レンガ状に位置している。
レンガ状構造をより強固にするのが、角質細胞間脂質のセラミド。
セラミドは外部刺激から肌を守るバリア機能や水分保持機能を持つ。
さらに角質層表面は、脂腺から分泌される皮脂の膜で被われ水分の蒸発を防止
顆粒層 角質細胞間脂質を分泌し角質層を維持。皮膚バリアーの役割
有棘層 皮膚の免疫システムにより重要な役割
基底層 基底層では表皮をつくる新しい細胞を生産。最終的には最上部を形成

 真皮は神経、血管、汗腺、脂腺などの付属器があり、それぞれがかかわりあいながら機能しています。
 皮下組織は真皮の深層にあり、皮膚と下層組織を結合しています。ヒトでは膠原繊維・弾性繊維・脂肪細胞から成り、血管・神経が多様に貫走し、汗腺と終末神経小体が存在します。

かゆみのメカニズム

 「かゆみ」には、末梢性と中枢性の2つのタイプがあります。
末梢性のかゆみは刺激に反応して、肥満細胞で合成されたヒスタミンが遊離され、知覚神経 末梢(C線維神経終末)にあるかゆみ受容体に結合して、かゆみが発生します。
 一方、中枢性のかゆみはオピオイドペプチドが神経組織にあるオピオイド受容体に作用し、痒みが生まれます。

乾燥肌(ドライスキン)と皮膚そう痒症

 健康な皮膚の場合、角質層の角質細胞間脂質と天然保湿因子が水分を保つとともに、皮脂の膜が表面を覆って水分の蒸発を防ぎ、さまざまな刺激から皮膚を守っています。
 しかし乾燥によって角質層の脂質や水分が失われ、細胞間にすき間ができて粗くなると、外からの刺激を受けやすくなります。さらに皮膚が乾燥してくると、本来なら肌の深部(表皮と真皮の接合部)にある、かゆみを感じる神経終末(C線維神経終末)(「かゆみのメカニズム」参照)が角質層近くまで伸びてきて、皮膚への些細な刺激で、かゆみを感じるようになります。
 高齢者の場合、肌の新陳代謝が低下するため、角質細胞間脂質や皮脂膜などが減少して皮膚が乾燥しやすくなります。高齢者にかゆみが生じやすいのはそのためです(老人性皮膚そう痒症)。
 若い人のかゆみは入浴時の「洗いすぎ」が原因と考えられます。
 乾燥肌のかゆみを我慢できずにかいてしまうと、皮脂膜や角質層がはがれてしまい、外部からの刺激を受けやすくなり、さらに敏感に反応することになり、かゆみの症状はますますひどくなっていきます。

予防

入浴による皮膚の乾燥を避ける
 入浴のしすぎや石鹸の使いすぎによって、皮脂膜が落ちてしまいます。熱すぎる風呂や長湯、ナイロンタワシなどの使用も避けてください。

保湿剤をこまめに塗る
 市販の保湿剤を塗っていれば治ります。尿素、ワセリン、セラミドなどが配合された保湿剤がよく使われており、皮膚がかさついてきたら何度も塗って、乾燥を予防しましょう。

暖房は控えめにして加湿する
 エアコンは冬の乾燥した空気をさらに乾燥させます。設定温度は低めにして、加湿器を使うなどして、加湿を心がけましょう。望ましい湿度は50〜60%です。

衣類にも注意
 かゆみを誘発しやすいウールや化学繊維の衣類はさけましょう。特に、肌に直接触れる肌着などは木綿製のものを着用しましょう。

栄養バランスにも気を配る
 バランスの良い食事を心がけ、ビタミンB(乳製品・卵・レバー・緑黄色野菜 に多く含まれます)、ビタミンC(野菜・くだもの に多く含まれます)を多くとりましょう。香辛料のとり過ぎ、アルコール類の飲みすぎもかゆみの原因となるので注意しましょう。

ストレスをためず睡眠を十分とる
 皮膚の新陳代謝は睡眠中やリラックスした状態で活発になります。特に冬は新陳代謝が低下するため、睡眠不足や不規則な生活は避け、ストレも蓄積させないように心がけましょう。

治療

乾燥肌が原因の場合
 乾燥肌が原因のかゆみの場合は病気そのものに対する心配はそれほどありません。保湿剤を塗って保湿を心がけ、かゆみには、 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の内服薬、尿素含有軟膏(外用薬)などで治療を行います。

乾燥肌以外による場合
 保湿剤を塗ってもかゆみが続く場合は、まず皮膚科を受診しましょう。かゆみは病気が原因で生じる場合もあります(表2. 参照)。その場合は、病気の治療をおこなわなければ根本的な解決になりません。特に、長期にわたりかゆみが続く場合は、必ず皮膚科の専門医を受診してください。

表2. 乾燥肌以外に考えられるかゆみの原因(かゆみを伴う病気、その他)

・がん
・慢性腎不全
・痛風
・寄生虫疾患
・悪性リンパ腫
・腎透析
・多血症
・薬剤の影響
・糖尿病
・血圧異常
・鉄欠乏性貧血
・肝疾患
・甲状腺機能異常
・精神神経疾患

◆この「かゆみ」どうすればいい?
表2下

 かゆみ(皮膚そう痒(よう)症)に関する情報は下記から得られます。

■薬の検索、副作用など医薬品情報が検索できます。
 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構PMDA
  医薬品医療機器情報提供ホームページ  http://www.info.pmda.go.jp/

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