加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)
(2015年05月 掲載)
骨粗しょう症とは「骨量の低下と、骨の微細構造の劣化を特徴とする疾患であり、そのために骨折の危険が増した状態である」と定義されています。 平成13年の国民生活基礎調査の65歳以上の要介護の原因疾患の第3位は「転倒・骨折」です。これは、10人に1人以上が転倒・骨折のために介護状態が必要になってしまったことを意味します。さらに、介護保険の要支援判定を受けた人の主治医意見書においては、「骨の密度及び構造の障害」が原因疾患の第3位になっています。この「骨の密度及び構造の障害」というものは、骨粗しょう症のことです。
わが国の骨粗しょう症の患者は、高齢者を中心に全国で約1千万人、特に女性に多く、65歳以上の約半分を占めるといわれています。女性は、ホルモンのバランスが大きく変化する閉経後、骨粗しょう症になる人の割合が高くなります。一方、男性は、女性に比べると、骨粗しょう症になる人の割合は低いですが、加齢とともに腸管からのカルシウム吸収が低下し、70歳を過ぎると骨粗しょう症になる人の割合が高くなります。
初期には自覚症状はありません。
◇症状が進行してくると・・
- 腰背部の疼痛(安静時の痛み〜不快感、前屈時痛、起坐位時の痛み、歩行時の痛み、寝返り時の痛みなど)
- 骨折(主に大腿骨頸部、脊椎など)
- 脊椎変形(前傾姿勢)に伴う症状(体のアンバランスによる転倒頻度の増加、腹部膨満による食欲減退や胸焼け症状、長距離歩行が困難、身長低下など)などの症状が現れます。
大きく二つのタイプに分けられます。
- 原発性骨粗しょう症:
閉経を迎えた50代から70代までの女性に多い閉経後骨粗しょう症、さらにそれ以降の高齢者に見られる老人性骨粗しょう症がこれに含まれます(90%以上を占める)。 - 続発性骨粗しょう症:
各種疾患(胃切除、糖尿病、慢性腎不全、肝臓病、甲状腺機能亢進症、婦人科の病気、関節リウマチなど)やステロイド製剤の服用などが原因となって発症するものです。
X線写真撮影と骨密度測定の2つの検査を行います。
その結果、微弱な外力による非外傷性骨折(圧迫骨折)があれば、それだけで骨粗しょう症と診断されます。圧迫骨折がなくても、骨密度が低い場合も骨粗しょう症と診断されます。
骨粗しょう症は多数の要因が関与し発症します。また、その発症には遺伝要因と生活習慣が大きく影響します。下表に示したように骨粗鬆症の危険因子には、加齢など除去できないものと、カルシウム摂取不足や運動不足などの自己の努力で除去できるものがあります。生活習慣の改善により危険因子をできるだけ少なくすることが骨粗鬆症の予防につながります。
特に、骨粗しょう症を予防し、骨を強くするための三原則は、食事・運動・日光浴です。
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?食事
カルシウムは日本人の食事で不足している栄養素です。 体内への吸収は悪いので工夫が必要です。
◎カルシウムを多く含む食品を摂取しましょう。
乳製品や大豆製品、小魚、緑黄野菜、海草など
◎良質のたんぱく質やビタミンDを多量に含む食品と摂取すると、吸収がよくなります。
◎特定保健用食品「トクホ」を普段の生活に取り入れてみるのも一つです。
医学や栄養学の面からある種の保健効果が期待できると認められた食品を特定保健用食品といい、国が食品に健康表示(健康への効用をしめす表現)を許可しています。トクホにはミネラル(特にカルシウム)の吸収を助けるものとしてCPP(カゼインホスホペプチド)やCCM(クエン酸リンゴ酸カルシウム)があります。
・CPP(カゼインホスホペプチド)
CPPは酵素処理によって乳タンパクから分離精製された成分。CPP は、食物繊維などの成分がミネラルと結合するのを防ぎ、カルシウムの吸収を促進
・CCM(クエン酸リンゴ酸カルシウム)
CCMはカルシウムに、食品の酸味料のクエン酸とリンゴ酸を一定比率で配合したもの。
消化管内では、酸やアルカリにより、カルシウムの溶解性や吸収性は変化するが、CCM は影響されず、常にカルシウムが溶けた状態で吸収されやすい状態に設計されている
◎カルシウムの食事摂取基準を示します。

?運動
適度な運動で骨が刺激されると、体内に入ったカルシウムが有効に使われ、骨量が増えることがわかっています。 運動は、年齢などを考慮して、無理なく毎日楽しみながら続けることが大切です。散歩を続けることによって、骨といっしょに身体を支えている筋肉も強くなり、転倒による骨折の防止もできます。
?日光浴
カルシウムの吸収に欠かせないビタミンDは、人間の皮膚が日光の紫外線を浴びることでつくられます。日光浴は骨粗しょう症の予防にとって大切です。
骨粗しょう症が進行し、骨密度が大幅に減少している人は、これらに加え、薬物による治療を行ないます。現在、治療に使われている薬は、骨の吸収(骨が溶ける)を抑える薬、骨の形成(骨を作る)を助ける薬、吸収と形成の骨代謝を調節する薬の三つに大別できます。骨の吸収を抑える薬として、カルシトニン製剤、ビスホスホネート製剤、骨の形成を助ける薬としてビタミンK製剤、吸収と形成を調節する薬として活性型ビタミンD3製剤、カルシウム剤などがあります。
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薬物による治療法は、骨粗鬆症の診断基準や骨代謝マーカーの検査の結果などに基づいて行われます。かかりつけの医師や薬剤師に相談するとよいでしょう。
・わかりやすい病気のはなしシリーズ2「骨粗しょう症」(一般社団法人 日本臨床内科医会)
http://www.japha.jp/doc/byoki/002.pdf
・骨粗鬆症Q&A(公益財団法人 骨粗鬆症財団)
http://www.jpof.or.jp/
・日本骨粗鬆症学会(一般社団法人 日本骨粗鬆症学会)
http://www.josteo.com/ja/index.html
・健康ぷらざ「骨が弱ってきていませんか?」−骨量を測ろう−(日本医師会)
http://www.med.or.jp/people/plaza/backnumber/no027/027.html
・知って得する病気の知識 「骨粗鬆症」(日本医師会)
http://www.med.or.jp/chishiki/kotu/001.html
・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年度版
(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:
日本骨粗鬆症学会 日本骨代謝学会 骨粗鬆症財団)
http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/11_2.pdf
・骨粗鬆症予防のための運動
-骨に刺激が加わる運動を(厚生労働省 メタボリック症候群が気になる方のための健康情報サイト)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-001.html
- 紫外線
- 細菌性食中毒
- 熱中症
- 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
- 気管支喘息
- ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome):運動器症候群
- 睡眠時無呼吸症候群「Sleep Apnea Syndrome:SAS」
- 逆流性食道炎
- 不整脈「心房細動」
- かぜ症候群、インフルエンザと肺炎について
- 帯状疱疹
- 腰痛
- 痛風
- 口内炎
- 夏に気をつけたいアデノウイルス感染症
- 過敏性腸症候群
- 食物アレルギー
- 緑内障
- 食欲不振
- 痔
- かゆみ [皮膚そう痒(よう)症]
- 慢性疼痛
- ニキビ(尋常性痤瘡)
- 尿路結石
- 骨粗しょう症
- 慢性疲労症候群
- 光線過敏症
- 冷房病(冷え性)
- アトピー性皮膚炎
- めまい
- ピロリ菌
- 虫歯
- 受動喫煙
- 歯周病
- 片頭痛