セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

冷房病(冷え性)

2015年08月 掲載

 暑くなってきました。この時期は冷房による体の冷えすぎや、室内外による温度差に体が適応できなくなると、自律神経に変調が起こり、その結果「体の冷え、肩こり、疲労感、便秘、腰痛、手足のむくみ」などの症状が現れることがあります。これは「冷房病」と呼ばれています。冷房病は室内温度に注意するとともに、軽い運動、入浴、禁煙など日常生活において少し注意すれば防ぐことができます。
(注)「冷房病」という用語は俗称であり、医学的には自律神経失調症の一つとして診断されます。

原因

 もともと人間の体は、環境や季節に適応するようにできています。こうした体の機能を一定に保とうとする働きを、ホメオスタシス(恒常性)といい、ホメオスタシスの調整に深くかかわっているのが自律神経系です。この自律神経系は交感神経と副交感神経の2種類の神経系によってコントロールされており、それぞれが相補するように働いています。無意識でも内臓、血圧などが正常に機能するのはこのシステムのおかげなのです。
 自律神経は、人間の体温調節も行っていますが、5度以上の急激な気温変化には素早く対応することが難しいと言われています。気温の著しい変化が繰り返されると、体温調節している交感神経や副交感神経のバランスに異常をきたします。その結果、冷房病の症状、すなわち自律神経失調症類似の症状に陥ります。

 男性に比較し女性の多くは冷え性に悩みます。その原因は筋肉が少なく基礎代謝量が低いため、体温を上昇させる機能が弱いことや血管の収縮・拡張機能も低めで、末梢部分(足先など)の血流量が少ないことが考えられます。また、脂肪組織が多いので、冷えると元に戻りにくいことなどが指摘されています。特に中高年になると、動脈硬化や血管の老化などから血液の流れが悪くなるうえ、皮膚感覚が鈍くなりエアコンの冷気に気付かずにいて、症状を悪化させてしまうこともあります。
 最近、若い人たちにおいても冷房病は増加しています。現代の室内生活では、エアコンにより一定温度に保たれているため汗腺がひらく必要のないことや、運動不足、不規則な食生活などの複合的要素から体温調節が出来難くなっていると考えれます。また、夏休み明けの子供にみられる体調不良にも、冷房病の症状が見られ、夏休みの過ごし方に注意する必要があります。

主な症状

 冷房病でみられる症状として、体の冷え、肩こり、疲労感、便秘、腰痛、手足のむくみ、肌あれ、睡眠不足、生理痛、月経不順、頭痛、めまい、のぼせ、だるさなどがあげられます。

対策と予防

温度に対する対策
 冷房による冷えすぎ、室内と屋外との温度差は冷房病の主な要因です。冷房の設定温度には確定したものはありませんが、室内の適温は25度〜28度、外気温に対して5度以内が望ましいと思われます。さらに冷房時には厚手の靴下、ズボン、ひざ掛けなどで下半身を防寒することも効果があります。

血行の促進
 冷房病の症状の中には、血管収縮、血流減少が原因と考えられるものがあります。筋肉が硬く呼吸が浅くなり、交感神経も過剰に働いたままになります。すると、よけいにイライラしていきます。これには血行改善がその予防策となります。

  • 運動は非常に効果的です。運動で心肺機能を高めると、全身の循環がよくなります。循環を良くするには無酸素運動よりもスイミング、ウォーキング、ランニング等の有酸素運動がより効果的です。
  • 長時間座ったままの作業をする場合には、途中で軽く運動するといいでしょう。
  • 寝る前にぬるめの風呂にゆっくり入り体を温め、マッサージなどを行うのも効果的です。
  • タバコの煙に含まれるニコチンは手足などの血管を収縮させる作用があります。喫煙者にとって、禁煙は必須の対策といえます。

自律神経のバランスの調整
 自律神経のバランスが崩れることにより、様々な症状が現れます。自律神経の働きに異常をきたす要因としてストレスがあります。日常生活においてストレスをためないことが大切です。不規則な生活を避け、十分な睡眠をとりましょう。

食事に気をつける
 栄養バランスの良い食事をとることが必要です。また、夏は水分摂取量が増えるため、胃液が薄くなってしまうと消化能力が低くなり、食欲が落ちます。消化の良いものを食べるようにして下さい。

  • 冷たいもの、甘いものは控えめにしましょう。アイスクリームなどの冷たい食品ばかり食べていると、内臓が冷え働きが鈍くなり、体温が低下します。温野菜、スープなど、冷えが気になる時には温かいものをとるように心がけましょう。また、糖分はとりすぎると、血液の循環を悪くするので冷えを招きます。これは、血液中の中性脂肪や血糖の増加が原因です。
  • 血行をよくするものを積極的に摂るようにしましょう。
    ‣ビタミンB群:神経の働きを正常に保つ働きがあります。強いストレスで急激に消費されます。
    ‣ビタミンC:副腎皮質ホルモンはストレスを感じると、抵抗力を高めるために分泌されます。このホルモンの合成にはビタミンCが必要です。
    ‣ビタミンA, E:自律神経をコントロールし、症状を緩和させる効果があります。
    ‣カルシウムはイライラを鎮め、不眠解消の効果があります。

    成分名 働き
    ビタミンA, E自律神経をコントロール
    ビタミンB神経の働きを正常に保つ
    ビタミンC副腎皮質ホルモンの合成
    カルシウムイライラを鎮め、不眠解消

    ‣その他、肉・魚・豆類などに多く含まれているタンパク質は、エネルギーとなる栄養素で、カラダを温めてくれる効果があります。レバーや貝類、大豆、ヒジキ等に多く含まれている鉄分は不足すると、貧血になり酸素が不足して抵抗力がなくなったり、体温のコントロールができなくなったりします。

冷房病の治療

 もし冷房病にかかったと思ったら、まず医師の診察を受けて、それがほんとうに冷房に起因する自律神経失調症なのかをきちんと診断することが大切です。その上で医師、薬剤師の指導のもと漢方療法を行ったり、その他症状にあった治療を行います。

 さらに冷房病の発症には、不自然な生活習慣が深く関与していると考えられます。治療には、生活全般の見直しをすることが不可欠であり、生体リズムを正常なものへと修正していく必要があります。

 快適を得るための冷房が「体調不良の原因」にならないよう注意しましょう。部屋や自動車の適度な冷房が、「健康」のためにも「地球温暖化防止」のためにも役立つことになります。

■冷房病(冷え性)に関する情報は下記から得られます。
 ・冷え性とは (日本冷え性看護/助産研究会)
 http://hiesho.kenkyuukai.jp/special/?id=9012

 ・冷え性とは 冷え性の診断 定義 (妊産婦の冷え性 研究公式サイト)
 http://plaza.umin.ac.jp/hiesho/

 ・自律神経 (日本自律神経学会)
 http://www.jsnr-net.jp/about/index.html

 ・自律訓練法とは (日本自律訓練学会)
 http://www.jsoat.jp/aboutat.html

■テーマ
  1. 紫外線
  2. 細菌性食中毒
  3. 熱中症
  4. 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
  5. 気管支喘息
  6. ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome):運動器症候群
  7. 睡眠時無呼吸症候群「Sleep Apnea Syndrome:SAS」
  8. 逆流性食道炎
  9. 不整脈「心房細動」
  10. かぜ症候群、インフルエンザと肺炎について
  11. 帯状疱疹
  12. 腰痛
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  15. 夏に気をつけたいアデノウイルス感染症
  16. 過敏性腸症候群
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