セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

虫歯

2017年10月 更新
(2015年12月 掲載)

 年末年始は間食が多くなりがちです。この機会に虫歯(う歯)について考えてみましょう。

 口の中にいるストレプトコッカス・ミュータンスという細菌(以下ミュータンス菌)は、食事や間食で摂った砂糖を栄養源として増殖し、プラーク(歯垢)を形成します。プラークの中では細菌が酸を出して歯の表面を溶かしていきます。これが虫歯です。したがって虫歯の原因は細菌の塊であるプラークということになります。

虫歯の現状

 歯が生えた数年間は石灰化度が低いため、虫歯は未成年に多く見られます。20歳以上の永久歯の健全歯、虫歯の処置・未処置の状況を図に示します。年齢階級が上がるとともに、健全歯数は減少し、虫歯の比率が増加しています。 永久歯の健全歯、虫歯の処置・未処置の状況

歯の構造、特徴

歯の構造
 歯は、外側からエナメル質、象牙質の2つの硬い組織からできています。その内部には歯髄があり、多数の血管や神経を含んでいます。表面にあるエナメル質の成分はハイドロキシ アパタイト(水酸化リン灰石 97%)と呼ばれ、体の中で最高の強度を持っています。

 口腔内では、「再石灰化」という歯を守るメカニズムがあります。口内細菌は食物残渣を摂取分解し、酸を出します。その酸は歯の成分を溶出(脱灰)させます。唾液は口内を中性に維持させて、ミネラルが出るのを抑え、脱灰を防ぎます。口の中でミネラル濃度が高くなると、ミネラルは歯の表面に戻って、溶かされた歯を修復します。この反応が再石灰化と呼ばれるもので、ほぼ食事のたびに繰り返されます。

虫歯になるまでの工程

 細菌は、エナメル質や象牙質を破壊しながら侵入してきます。その細菌は酸を排出するので、口腔内は酸性になります。するとエナメル質からカルシウムとリン酸が失われ、脱灰へと進みます。脱灰がすると再石灰化とのバランスが崩れ、修復機能が破綻し虫歯に進行なります。

症状

 細菌は、最初は歯の表面だけを溶かしていきますが、徐々に歯の中まで進んでいきます。虫歯の症状は、一般的にC0〜C4という段階に分けて呼ばれます。

C0: 歯質の不透明感や白斑、色素沈着が認められます。
C1: 初期の虫歯であって、歯の表面(エナメル質)の虫歯の状態です。
C2: 虫歯が象牙質の大部分にまで進行した状態です。
C3: 虫歯が進行して歯髄まで進行したもので、歯には大きな穴があいた状態になり、痛みもひどくなってきます。
C4: 歯の根元だけが残る(残根)歯の根の先に膿(うみ)がたまる(膿瘍)状態です。この状態になると神経も死んでしまい痛みもなくなり歯を抜かなければならないことが多いです。


治療方法

 C1、C2においては、虫歯の部分だけを削って、つめものをするか、かぶせものをします。
 C3では歯ぐきから上の歯が崩れている状態なので、残った歯根を利用して芯を立て、その上に冠をかぶせます。
 C4まできたら歯を抜くしかありません。まれに歯根の状態がよいと、歯根を残し義歯をかぶせることもあります。

予防

1. 歯みがきを習慣化する
 歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目など汚れの残りやすい場所があるので、 歯間ブラシやデンタルフロス等を使ってきちんと汚れを落とすことが大事です。正しい歯のみがき方の指導を受けるようにして下さい。

◎日本歯科医師会では、年齢に応じた歯の磨き方を指導しています。参考にして下さい。http://www.jda.or.jp/hamigaki/index.html

2. 定期的に歯の健診を受ける
 定期的に歯の健診を受け、虫歯を早期に発見し、治療を受けるよう心がけてください。「かかりつけ歯科医」を見つけるのもよいことです。

3. 食べ物をよくかんで唾液を出す
 唾液には、口の中を清潔に保ち、中性に保ち、歯の表面を強くするという働きがあります。

4. 規則正しい食生活をする
 規則正しく1日3回の食事をとっている人は虫歯になりにくく、ケーキやクッキーなど、間食の多い人は虫歯になりやすいといえます。のど飴や栄養ドリンクなども要注意です。

5. フッ素・キシリトールの利用
 フッ素はエナメル質の成分の一つ(ハイドロキシアパタイト)と結合し、酸に抵抗性のある成分(フルオロアルアパタイト)を形成します。虫歯に対する抵抗力を高め、虫歯の進行を抑制します。
 利用方法はフッ素塗布やフッ化物入りの洗口剤でうがいをする、フッ素の入った歯みがき剤を用いるなどがあります。

 キシリトールは甘味炭水化物の仲間です。「むし歯の発生や進行を防ぐ」という、他の糖にはない特徴的効果があります。これは、砂糖(スクロース)とは異なり、酸産生能が低いことが挙げられます。また、キシリトールは甘みが強いので唾液を出易くします。また、歯垢を付きにくくする、再石灰化を促し歯を固くします。さらに、ミュータンス菌(虫歯原因)の活動を脆弱化します。キシリトールが虫歯予防に有効なのは、以上のような理由からです。
 利用方法はキシリトール配合のガムやタブレットを1日3回、3カ月以上使用し続ける必要があります。注意点は、シュガーレスであることと、高濃度のキシリトール(50%を超えている)が配合されていることを確認してください。

 「8020(ハチマルニイマル)運動」、8020推進財団をご存知ですか?
 最低20本の歯があれば、食事ができると言われています。そこで厚生労働省と日本歯科医師会は〜80歳になっても自分の歯を20本以上保とう〜という「8020運動」を提唱しました。さらに、この8020運動を発展させるために、歯科に関連する企業や各種団体が協力し、平成12年には厚生労働大臣の許可のもと設立したのが「(財)8020推進財団」です。その後、公益財団法人となり、8020運動の推進、口腔と全身に関する情報の収集・提供・調査研究などの事業活動をしています。

歯の構造
 歯を大切にして、いつまでも自分の歯でおいしく食事を取りたいものです。80歳まで健康な歯を保つためには幼少期からのオーラルケアの習慣作りが大切です。
*注意;「8020」は社会全体や集団の目標値であり、健康状態の指標ではありません。健康な体とは全身状態で捉えるものなので、自分の歯が20本以下だからといって、悲観することはありません。調査によると、義歯でもきちんと噛めている人は健康状態が高いという結果もあります。従って、歯のケアを十分に行い、咀嚼機能を保つことが重要なのです。

こどもの虫歯

 子供の虫歯の原因は、母子感染です。身近な大人が予防意識をしっかり持ち、子供が虫歯にならないよう注意して下さい。  歯の性質は乳歯、永久歯で異なります。永久歯に比べ乳歯や生え替わって直後の歯はやわらかいので、虫歯になると進行も早いと言われています。  虫歯は放置していても治癒することはありません。お口の変化に気づいたら、早めに病院へ行き治療しましょう。早期であればあるほど、痛みも軽減されます。

■虫歯に関する情報は下記から得られます。
・8020運動(日本歯科医師会)
 http://www.jda.or.jp/enlightenment/8020/index.html

・なぜ8020か?(8020推進財団)
 http://www.8020zaidan.or.jp/about/index.html

・歯・口腔の健康
 (e−ヘルスネット厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト)
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth

・平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)
 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-28.html

・こどもたちの口と歯の質問箱(公益社団法人 日本小児歯科学会)
 http://www.jspd.or.jp/contents/main/faq/index.html

・子供のむし歯の特徴と有病状況
 (e−ヘルスネット厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト)
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-002.html

■テーマ
  1. 紫外線
  2. 細菌性食中毒
  3. 熱中症
  4. 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
  5. 気管支喘息
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  7. 睡眠時無呼吸症候群「Sleep Apnea Syndrome:SAS」
  8. 逆流性食道炎
  9. 不整脈「心房細動」
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