セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

受動喫煙

2016年01月 掲載

 他人が吸った「たばこ」の煙を吸わされることを、受動喫煙といいます。受動喫煙は公共の場所、職場や家庭などさまざまな場所で起こり、非喫煙者の健康被害は深刻です。

 健康増進法第25条において、受動喫煙とは「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義され、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定められています。受動喫煙の防止が、国民の健康増進の重要な方策の一つとなっています。

1. 主流煙と副流煙

 たばこの煙の中には、約40種類の発がん物質や数千種類の化学物質などが含まれています。その煙は喫煙者が直接吸い込む「主流煙」と、点火部分から立ち上がる「副流煙」とに分けられます。注意しなければならないのは、副流煙は主流煙に比べ、ニコチン、ベンツピレン、一酸化炭素などの有害物質が数倍から数十倍多く含まれていることです(下表参照)。「受動喫煙」では、この副流煙を、自分の意思とは無関係に吸い込んでしまうことになります。

主流煙に対する副流煙の割合

▼血中・尿中ニコチン代謝物濃度
 受動喫煙の程度は、血液中あるいは尿中の「ニコチン代謝物濃度」を測定することで分かります。家庭内や職場に喫煙者がいる人ほど高い数値を記録しています。

家庭又は職場での受動喫煙状況の血中コニチン濃度
ニコチン:たばこの煙の含有成分ニコチンが体内で代謝されてできる物質で受動喫煙の程度を示す指標の一つ

尿中ニコチン代謝物濃度比

 ベランダでの喫煙程度の分煙においては、受動喫煙の防止という点では十分ではありません。同居乳児の尿中から約2倍のニコチン代謝物が検出され、赤ちゃんは知らず知らずにたばこを吸わされていることが分かります。



2. 受動喫煙による健康被害

 たばこからでる煙で咳嗽,頭痛,鼻汁,流涙,眼のかゆみなどの健康被害が発生します。その理由の一つにpHの関与が挙げられます。主流煙はpH6前後、副流煙はアルカリ性で、副流煙のようなアルカリ性の煙は粘膜に対する刺激が高くなります。

▼がん・心臓病
 受動喫煙による影響のうち、肺がんとの関係は早くから報告されています。喫煙する夫をもつ非喫煙者の肺がん相対危険度は、喫煙をしない夫をもつ者に比べて著しく高くなります。また、受動喫煙によって副鼻腔がんに罹る率が高くなるという報告もあります。
 受動喫煙と虚血性心疾患の関係では、たばこの煙によってニコチンや一酸化炭素などの影響を受けて心筋梗塞などに罹りやすくなるという報告もあります。

▼胎児・小児への影響
 妊娠中の喫煙が早産や流産、死産などの原因になることは広く知られていますが、喫煙する母親の赤ちゃんは、たばこを吸わない母親から生まれた赤ちゃんに比べて、生まれたときの身長・体重がともに劣っています。こうした赤ちゃんは、生まれてからも発育が遅れたり、気管支喘息や気管支炎などの病気にかかりやすくなったりするほか、乳幼児突然死症候群の危険度が5倍近くにもなるという研究報告もあります。
 母親がたばこを吸わなくても、近くに喫煙者がいれば、赤ちゃんは胎内にいるときから「受動喫煙」の影響を受けることになります。

タバコで胎児が窒息!!
出典 社団法人 日本小児科医会 http://jpa.umin.jp/download/tabacco/tabacco052.pdf

乳幼児突然死症候群:
 乳幼児突然死症候群の相対リスクにおいて「両親とも喫煙する」は両親とも喫煙しない場合に比して約 4.7倍であり、乳幼児突然死症候群とたばこの関連は明白である、と厚生省の調査で報告されています。
乳幼児突然死症候群

3. 喫煙者へ

 喫煙者は、他人に迷惑をかけないマナーを身につけましょう。
 a. 妊婦や子ども、病人の前では喫煙しないようにしましょう。
 b. 分煙や禁煙している場所ではそのルールを守りましょう。
 c. 混雑した場所や締め切った室内では喫煙しないようにしましょう。
 d. 歩行喫煙はやめましょう。

4. 禁煙運動の推進

 禁煙の方法は自力、禁煙補助剤(薬局・薬店で購入)、医療機関にかかる等があります。2006年、医療機関においての禁煙治療は保険適用となり、治療費負担が軽減されました。保険適用されるには、いくつかの条件があります。詳細は、日本禁煙学会HP等から情報(全国禁煙外来・禁煙クリニック一覧など)を得ることができます(http://www.nosmoke55.jp/nicotine/clinic.html)。参考にしてみて下さい。 喫煙は本人だけでなく、他人に対しても大きな健康被害をもたらします。喫煙者を減らす運動をさらに進めましょう。

■受動喫煙に関する情報は下記から得られます。
・たばこと健康に関する情報ページ(厚生労働省)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/tobacco/index.html
・受動喫煙症の分類と診断基準(日本禁煙学会)
 http://www.nosmoke55.jp/passive_dx.html
・世界禁煙デー資料集(日本禁煙推進医師歯科医師連盟)
 http://www.nosmoke-med.org/nsday
・たばことがん 〜たばこは個人の問題?〜(日本医師会)
 https://www.med.or.jp/people/nonsmoking/canser/cont/04.html
・厚生労働省のTOBACCO or HEALTH 〜最新たばこ情報〜
 (公益財団法人 健康・体力づくり事業財団)
 http://www.health-net.or.jp/tobacco/front.html
・喫煙防止教育パンフレットの解説(日本学校保健会)
 http://www.hokenkai.or.jp/3/3-5/3-55.html
・中学生用喫煙防止教育パンフレット たばこに負けない(日本学校保健会)
 http://www.hokenkai.or.jp/3/3-5/Pamphlet1.pdf
・喫煙の健康影響・禁煙の効果(2)受動喫煙による健康影響
 (一般社団法人 日本循環器学会 禁煙推進委員会)
 http://www.j-circ.or.jp/kinen/iryokankei/eikyo.htm
・すすめよう禁煙!(日本医師会)
 http://dl.med.or.jp/dl-med/nosmoke/susumeyou.pdf

■テーマ
  1. 紫外線
  2. 細菌性食中毒
  3. 熱中症
  4. 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
  5. 気管支喘息
  6. ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome):運動器症候群
  7. 睡眠時無呼吸症候群「Sleep Apnea Syndrome:SAS」
  8. 逆流性食道炎
  9. 不整脈「心房細動」
  10. かぜ症候群、インフルエンザと肺炎について
  11. 帯状疱疹
  12. 腰痛
  13. 痛風
  14. 口内炎
  15. 夏に気をつけたいアデノウイルス感染症
  16. 過敏性腸症候群
  17. 食物アレルギー
  18. 緑内障
  19. 食欲不振
  20. かゆみ [皮膚そう痒(よう)症]
  21. 慢性疼痛
  22. ニキビ(尋常性痤瘡)
  23. 尿路結石
  24. 骨粗しょう症
  25. 慢性疲労症候群
  26. 光線過敏症
  27. 冷房病(冷え性)
  28. アトピー性皮膚炎
  29. めまい
  30. ピロリ菌
  31. 虫歯
  32. 受動喫煙
  33. 歯周病
  34. 片頭痛