セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

歯周病

(2016年02月 掲載)

図1. 抜歯の主原因
 2005年に全国2000余の歯科医院で行われた全国抜歯原因調査結果1)では、歯が失われる原因で最も多かったのが「歯周病」(42%)でした(図1)。

「歯周病」とは、歯の周りの歯肉(歯ぐき)や、歯を支える骨(歯槽骨)などが破壊される病気です。口腔内には多数の細菌が存在し、これらが歯の表面や歯と歯の間に集まって付着し、デンタルプラーク(歯垢)を形成します。

図1. 抜歯の主原因
 このプラークの中の細菌が有害物や毒素を出して歯肉に炎症を起こさせます。プラークは粘着性が強く、うがい程度では除去されません。また、プラークは取り除かないと硬くなり、歯石と呼ばれる物質に変化し、歯の表面に強固に付着します。歯石は歯磨きでは取り除くことはできません。歯石の周りにはさらに細菌が付着し、有害物や毒素を出し続けます。
 歯肉の炎症は、次第に歯を支えている組織の破壊に進み、歯の周囲にポケット(歯と歯肉の隙間)ができてきます。放置しているとポケットはさらに深くなって、歯槽骨が破壊されて膿が出たり歯がグラグラしたりするようになり、ついには歯が抜け落ちてしまいます。

歯周病の罹患状況

 日本人の歯周疾患は近年やや減少しています。しかし、日本人の高齢者は半数以上が歯周ポケットを持ち、多くの人が自覚症状を訴え、歯周病は高い有病状況を示しています。 「歯周ポケットを有する人」CPI*の割合は前期高齢者(65―74歳)で53%、後期高齢者(75歳以上)で62%となり、年齢が上がるにつれて高くなる傾向にあります。

*CPI:地域歯周疾患指数(CPI: Community Periodontal Index) 
   世界で最も使用されている歯周病症状の指標

歯周病の症状

歯周病の症状

歯周病の影響

 歯周病は口の中だけの病気ではなく、さまざまな全身病を引き起こす可能性が高いことがわかってきました。
 歯周病は、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病に影響することが考えられます。また歯周病と糖尿病には密接な関係があります。さらに、歯周病と肺炎などの呼吸器疾患、骨粗鬆症、早産などの関連もあきらかになってきました。

 歯周病の本当の恐ろしさは他に潜んでいるといえます。生活習慣病の予防の基本は、「バランスの取れた適切な食生活」であり、それを支える土台が「健康な歯」なのです。また、自分の歯でしっかり噛んで食事することで満腹感を得やすくなり、肥満の予防につながります。

予防

歯周病チェック
日本臨床歯周病学会よりhttp://www.jacp.net/perio/about/
歯周病チェック
正しい歯磨き
 第一の予防は、歯周病菌の感染を受けないようにすることです。そのためには、細菌を除去するために歯磨きが効果的です。プラークを口の中から減らす(プラークコントロール)には正しい歯磨きが必要です。

正しい歯磨きのチェックポイント
 歯と歯ぐきの境目に歯ブラシの毛先をあてる。
 歯ブラシを軽い力で小さく動かす。
 デンタルフロスや歯間ブラシを使って歯と歯の隙間もきれいにする。
 1ヵ所につき10〜20回ぐらい、1日に最低1度は時間(5分以上)をかけてゆっくりプラークを除く(朝、昼、夜磨くのが良い)。

禁煙
 喫煙は歯周病最大のリスクファクターで、タバコを吸うことにより歯周病は2〜8倍罹りやすくなると報告されています(1日に31本以上タバコを吸う人は吸わない人の5.88倍2))。

過労やストレスをためない
 過労やストレスがたまると免疫力が低下するので、歯周病にかかりやすくなります。

良く噛んで食べる
 良く噛まずに食べると唾液が十分に分泌されず、細菌が繁殖しやすくなります。

鼻呼吸を習慣化するよう心がける
 口呼吸の場合、空気が出入りするたびに、口内の水分が奪われてしまい、口が乾きやすくなり、唾液の少ない口腔の中は、歯周病菌が繁殖する温床になります。

定期的な歯科検診
 歯科医から定期的な歯石除去等の予防処理、指導を受けましょう。

歯周病に関する情報は下記から得られます。

・歯周病Q&A(特定非営利活動法人 日本歯周病学会)
 http://www.perio.jp/

・歯周病について(特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会)
 http://www.jacp.net/perio/about/

・歯周病 どんな病気? (一般社団法人 日本生活習慣病予防協会)
 http://www.seikatsusyukanbyo.com/guide/periodontal.php

・テーマパーク8020(日本歯科医師会)
 https://www.jda.or.jp/park/trouble/

■参考文献
1)安藤雄一ら 永久歯の抜歯原因調査報告書  東京: 8020推進財団; 2005.
   http://www.8020zaidan.or.jp/pdf/jigyo/bassi.pdf
2)Tomar SL1, Asma S. Smoking-attributable periodontitis in the United States:
   findings from NHANES III. National Health and Nutrition Examination Survey.
   J Periodontol. 2000 May;71(5):743-51.

■テーマ
  1. 紫外線
  2. 細菌性食中毒
  3. 熱中症
  4. 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
  5. 気管支喘息
  6. ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome):運動器症候群
  7. 睡眠時無呼吸症候群「Sleep Apnea Syndrome:SAS」
  8. 逆流性食道炎
  9. 不整脈「心房細動」
  10. かぜ症候群、インフルエンザと肺炎について
  11. 帯状疱疹
  12. 腰痛
  13. 痛風
  14. 口内炎
  15. 夏に気をつけたいアデノウイルス感染症
  16. 過敏性腸症候群
  17. 食物アレルギー
  18. 緑内障
  19. 食欲不振
  20. かゆみ [皮膚そう痒(よう)症]
  21. 慢性疼痛
  22. ニキビ(尋常性痤瘡)
  23. 尿路結石
  24. 骨粗しょう症
  25. 慢性疲労症候群
  26. 光線過敏症
  27. 冷房病(冷え性)
  28. アトピー性皮膚炎
  29. めまい
  30. ピロリ菌
  31. 虫歯
  32. 受動喫煙
  33. 歯周病
  34. 片頭痛