セルフメディケーションを実践のための200テーマ

加藤哲太(セルフメディケーション推進協議会理事)

片頭痛

2016年03月 掲載

 日ごろから慢性頭痛に悩まされている人、いわゆる「頭痛もち」は日本人には多い疾患と言われています。片頭痛は、脳に特別な病変がないのに、片側あるいは両方のこめかみから目のあたりにかけて、ズキンズキンといった特徴のある痛みが生じる頭痛です。

 日本神経学会・日本頭痛学会の共同監修のもと、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」が作成されました。それによる頭痛分類(国際頭痛分類第2版に準拠)には一次性頭痛、二次性頭痛があります。一次性頭痛とは、「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」などの慢性頭痛で、命にかかわるようなことはほとんどないと言われています。それに対し、二次性頭痛とは、頭痛の原因となる疾患があって発生する頭痛です。従って、頭痛の原因になる疾患は多種多様であり、生命の危険も存在するため診察が必要です。

国際頭痛分類第2版の頭痛分類
片頭痛とは

 一次性頭痛に分類されるのは「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」などの慢性頭痛です。そのうち「片頭痛」の年間有病率は8.4%です。性別、年代別にみると、20〜40歳代の女性で高く(30歳代女性で最も高い…約20%、40歳代女性…約18%)、未成年者においては高校生9.8%、中学生4.8%と報告されています。

片頭痛の特徴

 片頭痛は、頭の片側のこめかみを中心に、ズキンズキンと脈打つような強い痛み(拍動性頭痛)に襲われます(拍動性でない場合もある)。このような痛みが月に1〜2回、多い人では週に1〜2回発作的に起こり、数時間から長い場合は3日間続きます。頭痛のピークには、吐き気がしたり、実際に吐いたりすることがあります。また、光や音に過敏になったり、体を動かすと痛みがひどくなることもあります。

片頭痛の特徴

 片頭痛は、休息や睡眠で和らぎ、発作が治まると次の発作が起こるまで、まったく症状がみられなくなります。また、親子で遺伝することが多いことも知られています。

片頭痛の予兆と前兆
 頭痛が起こる前に、前ぶれ症状(予兆と前兆)が起こる場合があります。
 「予兆」は、前兆の前あるいは片頭痛発作の始まる数時間から1〜2日前にみられます。生あくびが多く出る、精神的に落ち込む(うつ状態)、イライラする、情緒不安定になる、気分がすぐれないなどの症状がありますが、はっきり出ないことが多く本人でも気づかないことがあります。
 「前兆」の典型的なものは閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる症状で、視野の中にきらきら光るジグザクの線が見えてきて、視野が狭くなったりします。また手がしびれてきたりすることもあります。頭痛が始まるとそれらの症状は消失してしまいます。前兆も片頭痛に必ず伴うわけではありません。

片頭痛の誘因

 寝不足、寝過ぎ、ストレス、緊張状態から開放された時、生理の前後に伴って発現する場合があります。
 チーズ、アルコールなども頭痛を発症する引き金になることもあります。
 鎮痛薬の飲み過ぎが、かえって頭痛を悪化させることも分かっています。鎮痛剤を使用するときは、用法・用量を守って服用することが非常に大切です。

片頭痛の治療法

 片頭痛発症の正確なメカニズムはまだ不明ですが、三又神経を中心とした神経血管に関する説、脳幹部異常とする説、これらに加えて神経ペプチドが関与しているという説があり、今後のメカニズム解明とともに、最適な治療法も確立されてくると思われます。

 現在における片頭痛治療は薬物療法が主流で、発作時の治療と予防的な治療の2つに分けられます。発作時の治療のみでよいのか、あるいは予防的な治療を加えた方がよいのかは、それぞれの病状に応じて異なりますので、頭痛外来など医師とよく相談する必要があります。

発作時の治療
 頭痛の発作が起こった際、片頭痛の痛みそのものを薬で軽減させる治療です。鎮痛薬は、痛みが軽いうちに飲むことが大切で、いったんひどい痛みが始まると、薬が効かないことが多いです。片頭痛の原因ははっきりしていませんが、血管の拡張と炎症の可能性があると考えられているので、それらをしずめる作用のある薬物(解熱消炎鎮痛薬など)が使われます。
 これらの薬の飲み過ぎは、かえって頭痛を悪化させることがあり、使用時には、用法・用量を守ることが大切です。吐き気がある場合は、吐き気止めの薬も使います。

 鎮痛薬による副作用としては、胃腸障害やアスピリン喘息などがあります。胃腸の弱い人や喘息の人は、使用時には薬剤師に相談することをお勧めします。また、非常に稀ではありますが重篤な副作用にスティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)があります。この病態は発疹・発赤、やけどのような水ぶくれなど激しい症状が、比較的短期間に全身の皮膚、口、目の粘膜に現れます。解熱消炎鎮痛薬を用い、このような状態になったら、ただちに受診して下さい。

予防的治療
 片頭痛発作の頻度を減らすあるいは頭痛発作時の痛みの重症度を軽減し、頭痛の持続時間を短縮することを目的として頭痛発作が起こっていない時期に行う予防的治療です。
 予防薬としては抗てんかん薬、抗うつ薬、β-遮断薬、カルシウム拮抗薬などがあります。予防薬は発作を抑制する目的で毎日続けて服用するもので、最低でも2週間から1カ月飲み続けないと効果が出てきません。効果が認められた後には徐々に薬を減らしていくことができます。

 日本頭痛学会では頭痛ダイアリーを記し、自分自身の頭痛を観察することを推奨しています。この使用目的は、治療時に医師へ正確な情報を伝え、的確な治療へと導くためです。
頭痛ダイアリー 表紙 頭痛ダイアリー 中面
 下記のURLから頭痛ダイアリーをダウンロード(PDF)することが出来ます。
 https://www.jhsnet.org/pdf/headachediary.pdf

片頭痛の予防法

 片頭痛の予防として大事なのは、発作の誘因になるものを減らすことです。特定の食べ物や飲み物をとると頭痛が起こることもあります。たとえば、アルコール(特に赤ワイン)やアイスクリーム、チョコレート、チーズ、高脂肪食、オレンジなどの食品によって発作が誘発されることがあります。誘因となる場合には、極力食べるのを控えたほうがよいでしょう。

 1. 睡眠不足、睡眠過多、過労等により過度なストレスがたまるのをさける
 2. まぶしい光や騒音を避け、急激な温度差に注意
 3. 引き金となる食べ物に注意

片頭痛以外の頭痛

 片頭痛などの一次性頭痛では、命にかかわるようなことはほとんどありません。しかし、脳・脊髄の病気や高血圧脳症などの病気に伴う頭痛(二次性頭痛)は非常に危険です。慢性の頭痛と危険な頭痛を判断するのは難しいことですが、「過去経験したことのないような激しい頭痛が突然起こった」など下の表に示したような6項目をうったえる場合は、危険な頭痛の場合が考えられますので、直ちに医師や薬剤師に指導を受けてください。

○命にかかわる頭痛を起こす病気:
 1. 脳・脊髄の病気
   くも膜下出血、脳出血、髄膜炎、脳腫瘍、脳梗塞、頭部外傷、脳炎
 2. 高血圧脳症
 3. その他
○放置すると失明の危険がある病気:緑内障

受診をすべき症状(危険性がある)

■片頭痛に関する情報は下記から得られます。
・知って得する病気の知識 慢性頭痛(日本医師会)
 http://www.med.or.jp/chishiki/zutsu/001.html#Anchor-44867
・頭痛ガイドライン(一般社団法人 日本頭痛学会)
 https://www.jhsnet.org/guideline.html
・健康の森 片頭痛って?(日本医師会)
 http://www.med.or.jp/forest/check/henzutsu/
・頭痛の対処法(社会福祉法人シナプス 埼玉精神神経センター)
 http://www.saitama-ni.com/pdf/fesutazutsu11.20.pdf

■テーマ
  1. 紫外線
  2. 細菌性食中毒
  3. 熱中症
  4. 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
  5. 気管支喘息
  6. ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome):運動器症候群
  7. 睡眠時無呼吸症候群「Sleep Apnea Syndrome:SAS」
  8. 逆流性食道炎
  9. 不整脈「心房細動」
  10. かぜ症候群、インフルエンザと肺炎について
  11. 帯状疱疹
  12. 腰痛
  13. 痛風
  14. 口内炎
  15. 夏に気をつけたいアデノウイルス感染症
  16. 過敏性腸症候群
  17. 食物アレルギー
  18. 緑内障
  19. 食欲不振
  20. かゆみ [皮膚そう痒(よう)症]
  21. 慢性疼痛
  22. ニキビ(尋常性痤瘡)
  23. 尿路結石
  24. 骨粗しょう症
  25. 慢性疲労症候群
  26. 光線過敏症
  27. 冷房病(冷え性)
  28. アトピー性皮膚炎
  29. めまい
  30. ピロリ菌
  31. 虫歯
  32. 受動喫煙
  33. 歯周病
  34. 片頭痛