光線過敏症
健康な人では問題が生じない程度の日光照射であっても、肌が露出している部分にだけ、赤みや痒みなどの異常反応が起きることがあります。この反応は日焼けとは異なる光線過敏症かもしれません。
分類と症状
光線過敏症は光にさらされた皮膚に痒みを伴う皮疹(発疹)ができるのが特徴です。これらの病因は、遺伝性、代謝異常、アレルギー性など多岐にわたります。
遺伝性
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色素性乾皮症 | 宮参りなど生後最初の外出時の日焼け反応が基となり、それを繰り返すうちに露出部の皮膚は乾燥し、そばかす様の小色素斑ができます。幼児期から皮膚悪性腫瘍が発生し、難聴や歩行障害などの神経症状を合併します。
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代謝異常
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ポルフィリン症 | 小児期より発症し、日光にあたると皮膚にピリピリ、チクチクした痒みがでます。長い飲酒歴を持つ中年男性にも好発し、多毛、皮膚の脆弱性、浅いびらん、小瘢痕がみられます。
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アレルギー性
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光接触皮膚炎 | 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の外用薬やサンスクリーン(日焼け止め)成分である紫外線吸収薬によることが多く、皮疹は原因物質の付着した露出部に限局します。
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光線過敏型薬疹 | 薬物内服後、露出部の広範囲に紅斑(隆起のない色調変化)が出現します。
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日光じん麻疹 | 日光照射直後から露光部にじん麻疹が出現します。
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原因不明
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多形日光疹 | 光線過敏症の中で最も高頻度にみられ、若い女性や光にあたる機会が少ない人に好発します。皮疹は丘疹(限局性の隆起)、紫斑、複数の赤い隆起や不規則な形の赤い皮疹など多様な症状を示します。
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種痘様水疱症 | 小児期に発症し、顔面や手背に小水疱や痂皮(血液成分、膿などが乾燥し固着)ができます。
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光線過敏症をおこす薬物
分類
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一般名
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商品名
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抗生物質
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キノロン系、テトラサイクリン系
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スパラ、ミノマイシン
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降圧薬
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ベシル酸アムロジピン
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ノルバスク
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抗不整脈薬
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硫酸キニジン
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硫酸キニジン
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利尿薬
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トリクロルメチアジド
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フルイトラン
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抗精神病薬
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クロルプロマジン
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ウインタミン
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NSAIDs外用薬
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ケトプロフェン
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セクター
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抗ヒスタミン薬
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メキタジン
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ニポラジル
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抗不安薬
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クロルジアゼポキシド
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コントール
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抗うつ薬
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塩酸クロミプラミン
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アナフラニール
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抗てんかん薬
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カルバマゼピン
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テグレトール
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血糖降下薬
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スルホニルウレア系
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ヘキストラスチノン
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抗リウマチ薬
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メトトレキサート
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リウマトレックス
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抗癌剤
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フルオロウラシル
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5−FU
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※添付文書記載
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左表に光線過敏症をおこす薬物の一部を掲載しました。光線過敏症は腎臓や心臓に疾患をもっている患者さんによくみられます。
それは泌尿器系の治療に使われる抗生物質や高血圧治療薬、利尿薬などに含まれている化学物質が原因であることが多いようです。
最近、
NSAIDsによる報告も増えてきました。また、原因の化学物質を含んでいる化粧品、オレンジ、セロリ、パセリ、ライム、レモンなどは肌に直接塗って光を浴びると症状が発生することもあります。
光線過敏症を起こす光線
太陽光線には「可視光線」「赤外線」「紫外線」などが含まれており、光線過敏症を起こす光線の多くは紫外線(UV)です。長波長紫外線A波(UVA;320〜400nm)は、オゾン層を通り地表に到達し、皮膚の深部にまで届きます(ガラス窓透過)。
中波長紫外線B波(UVB;290〜320nm)のほとんどは大気層(オゾンなど)で吸収されますが、一部は地表へ到達し皮膚がんや白内障の原因になります(ガラス窓は透過しない)。短波長紫外線C波(UVC;200〜290nm)はオゾン層で吸収され地表には届きません。
予防
紫外線対策について、バックナンバー「紫外線」 で解説しています。
環境省「紫外線保健指導マニュアル2006」
http://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_pdf/full.pdf
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紫外線を遮断するのが必須です。紫外線総量は5月が最大ですが、特に注意すべきは真夏と言われています。日本では真夏に上空のオゾン層が減少するため、人間に影響を与える紫外線量は8月が最も多くなるからです。
また、地表面や建物の反射も紫外線照射において考慮しなければなりません。紫外線反射は草地では問題にならない程度ですが、コンクリートでは約6%、砂地が15%前後、水面は10-20%、雪面では80%もの紫外線が反射されます。
また、紫外線は標高1000mにつき約13%増加し、空気の澄んでいる地域ほど多いといわれています。
紫外線が強い10〜14時の外出を避け、長袖、帽子(全回に7cm以上のつばがあるもの)、手袋などで物理的に光りを遮るとともに、露出している顔面、頸部、手背にはサンスクリーン剤などで防御します。
サンスクリーン剤はSPF50以上(UVB防御に有効。数値が高いほど効果大)、PA3+以上(UVA防御に有効。+が多いほど効果大)を使用します。また、サングラスはUVカット効果のあるものを使用しましょう。
紫外線の強さは、 UV インデックスでわかります。世界保健機関(WHO)ではUV インデックスを活用した紫外線対策の実施を推奨しており、日本国内では2003年に環境省から紫外線に関する保健指導のあり方を示した「
紫外線保健指導マニュアル」が刊行されています。
この中ではUVインデックスに応じた紫外線対策の具体的な例が示されています。
UVインデックに応じた紫外線対策
環境省「紫外線保健指導マニュアル2006」
UVインデックスは世界共通の指標で、海外でもUVインデックス情報を利用することで、適切な紫外線対策を行うことができます。
治療
急性期の症状である紅斑、丘疹、水疱にはステロイド薬を外用します。症状が重度な場合にはステロイド薬の内服を併用します。痒みが著しいときには抗ヒスタミン薬の内服を併用します。
色素性乾皮症に対しては小児科や整形外科などと連携した定期的な診療を行います。紫外線から皮膚や口唇、眼を厳重に防御し、強力なサンスクリーン剤に加え紫外線防御服などを用いて発癌抑制を目的とした遮光を行います。
気象庁では、日々の紫外線対策を効果的に行えるように、UVインデックスを用いた紫外線情報を提供しています。上手に活用し健康な生活をおくるうえで参考になると思われるのでご紹介します。
紫外線に関する基礎知識 気象庁 気象業務支援センター
http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/uvhp/3-45uvindex_mini.html#reflect
光線過敏症に関する情報は下記からえられます。
2008年07月 掲載