池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
「肥満度何%は、もう古い。今はBMIで肥満と判定するのが一般的ですよ」、「いや、肥満は体脂肪で見なければ駄目ですよ。僕は、体脂肪率20%以下をキープするようにしています」、「いや、もっと大事なのは内臓脂肪だそうですよ。内臓脂肪が増えてポッコリしたお腹が、いろんな病気の引き金になっているそうですから」。
これらの会話は、いずれも的を射ています。肥満の定義は、「体組成に占める脂肪組織が過剰に蓄積された状態」ということになります。これを判定する物差しが、BMI(体重kg÷身長m÷身長m: 標準値=22、低体重=18.5未満、肥満=25以上)と、足底などに微弱な電流を流して、その電気抵抗をインピーダンスとして捉え体脂肪量を推定するものです。また、内臓脂肪の付き具合は、腹囲を測って男子85cm以上、女子90cm、そして臍部の高さの腹部CT検査で内臓脂肪面積100cm2以上は内臓脂肪型肥満と判定されます。
BMIが25を超えると、22前後の状態と比較して、糖尿病、高血圧、高脂血症を患う危険性が増します。その上、さらに内臓脂肪型肥満がみられる場合には、動脈硬化による心臓や脳の血管障害(脳梗塞、心筋梗塞など)に罹る危険度が増してきます。
このような病気を予防していくためには、体重、体脂肪、内臓脂肪のコントロールが必要です。今の体重が、20代前半の時と比べて1割以上増加している人は、危険信号が点滅していると考えてください。
太りやすい体質というのは、人類の生存適応能力という視点からは決して悪いことではありません。飢餓に強いのが省エネ体質の人の特徴なのです。しかしこのような体質を持った人が、飽食と運動不足の時代に生活していると、いつの間にか余剰のエネルギーを体脂肪として備蓄し、肥満に至ってしまうということなのです。そこで、肥満の予防とその解消においては、摂取と消費という両面からのエネルギーコントロールが必須となります。
1kgの脂肪組織を減らすためには、約7,000kcalのエネルギーを消費しなければなりません。これを月1kgの減量に当てはめて計算すると、毎日の食事で摂取エネルギーを250kcal減らし、1日の歩数を2,000歩増やす必要があります。
企業経営では「入るをはかりて出ずるを制する」ですが、体重、体脂肪、内臓脂肪のコントロールにおいては、若い時からの「入るを制して出ずるをはかる」が肝要です。
2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」