池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
癌、心臓病、脳卒中は、日本における3大死因です。その中でも、癌は肥満と深く関係していることが分かっていますが、心臓病、脳卒中を招く動脈硬化にも、肥満が大きく影響していると言われています。そして、肥満に糖尿病、高脂血症、高血圧を加えた4つは、動脈硬化につながる「死の四重奏」とされています。
医学的には、体脂肪が過剰に蓄積された状態を肥満と定義しています。体脂肪は、その大部分が皮下脂肪であり、そのうちの2割程度が腹腔内脂肪、即ち内臓脂肪です。また以前は、脂肪組織はエネルギー貯蔵庫として1gあたり7kcalのエネルギーを蓄えている以外、体内の他の諸臓器に比べて活発な活動はしていない、というのが一般的な認識でした。
ところがその後の研究で、脂肪組織を構成する脂肪細胞から、食欲やエネルギー代謝を調節するレプチンというホルモンが分泌されていることが分かり、それ以来、脂肪細胞の機能についての研究が積極的に進められてきました。その結果、脂肪組織は単なるエネルギーの貯蔵組織ではなく、かなり様々な生理機能を有する内分泌臓器でもあることが明らかになってきました。
肥満の判定は、BMI(体重kg÷身長m÷身長m)によって行われるのが一般的です。そして、この数値が25以上になると肥満と判定されます。また、体組成計による体脂肪率の測定から判定すると、男性25%以上、女性35%以上が肥満とみなされます。
それでは、なぜ肥満状態が糖尿病、高脂血症、高血圧の温床であるとみなされているのでしょうか。その背景には、脂肪組織の機能的特徴が関係しています。
脂肪組織は肥満状態にあるとき、レプチンを過剰に分泌し、アディポネクチンという成分の生産を低下させます。アディポネクチンには、インスリンの働きを良くしたり、動脈硬化を防いだりする作用があります。その他にも、脂肪細胞から分泌されるさまざまな成分の増減が、「死の四重奏」を引き起こす要因として作用します。そして、これらが加齢による動脈硬化を加速させ、心臓病や脳卒中につながるというわけです。
「死の四重奏」を防ぐためにも、まずは肥満の防止・解消を目指しましょう。
2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」