池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
「死の四重奏」は肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症で構成されています。この中で前回は肥満を取り上げました。今回は、糖尿病です。
厚生労働省の「平成14年 糖尿病実態調査」によると、糖尿病が強く疑われる人は約740万人にのぼり、前回の平成9年の調査から50万人も増加しています。また、糖尿病予備群とされる人は約880万人で、こちらは前回調査から200万人増加しています。合計すると1,620万人となり、糖尿病の発症率が高くなる中高年人口が増加しているとことを考慮したとしても、この人数の多さは驚きです
空腹時の血糖値が、110mg/dl以上〜126mg/dl未満の場合、或いはHbA1Cが5.6%以上〜6.0%未満の場合については糖尿病予備群と判定します。しかし、予備群だからといって全員が糖尿病になるわけではなく、その中でも下記の項目に該当する場合に、その危険度が増加します。
- 血縁者に糖尿病がいる
- 20代前半時と比較して1割以上体重が増加している
- 内臓脂肪型肥満がある
(臍部の高さでの腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上) - 過食、過飲酒、過ストレス、運動不足がある
糖尿病予備群で且つ、以上の項目が1つでも当てはまる人は、血糖をコントロールする膵臓から分泌される、インスリンというホルモンが効きにくいという特徴を持っています。このような状態を、「インスリン抵抗性」といい、これを放置すると、血糖をコントロールするためにインスリンが過剰に分泌され、「高インスリン血症」となり動脈硬化を促進させます。
現在、予備群を対象にしたいくつかの研究が、世界的になされています。その研究では、予備群の人たちを、徹底したライフスタイルの改善を指導する「生活改善群」、特定の薬を投与する「予防治療群」、特別なことをしないまま経過をみる「普通群」の3つに分けて、3年、5年と長期的に糖尿病の発症割合を観察するという方法を行っています。
このような研究から、「生活改善群」では、肥満がみられる場合5%以上の減量で糖尿病の発症が抑えられることが分かりました。また、インスリン抵抗性を緩和させる薬や食後の血糖上昇を緩やかにする薬を使用した「予防治療群」でも、生活改善群ほどではありませんが、有意な進展防止効果のあることが認められています。
以上のことからも、「死の四重奏」の一角を占める糖尿病の予防には、予備群段階からの生活習慣の改善で肥満の解消をはかることの重要性がお分かり頂けるものとおもいます。
2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」