池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
このような危険性が叫ばれているのにもかかわらず、高脂血症を呈する者の数は年々増加していて、厚生労働省の「平成12年 循環器疾患基礎調査」によると、高脂血症の人は、その予備軍も入れると2,200万人に上るとされています。
血液中の脂質成分としは、中性脂肪やコレステロールがよく知られています。特徴的なのはこれらの脂質は水に溶けにくい性質を持っているということです。そこで血液中では水溶性のリポタンパクに包まれた状態で存在しています。
リポ蛋白のうち、低比重リポタンパクに包まれているコレステロールはLDLコレステロールと呼ばれ、コレステロールを末梢に運んでいきます。その際余剰分が血管内の隙間に入り込み動脈硬化に影響するところから、俗にこれは悪玉コレステロールと呼ばれています。このLDLコレステロールが140mg/dl以上、総コレステロールが220mg/dl以上は、高コレステロール血症となります。また、LDLコレステロールが120〜139mg/dl、総コレステロールが200〜219mg/dlの場合は高脂血症の予備軍と見なされます。
一方、高比重リポタンパク(HDLコレステロール)に包まれて移動している方は善玉コレステロールと呼ばれ、血管内の隙間に入り込んでいるコレステロールを肝臓へと運び出してくれます。このように、動脈硬化を防いでくれるHDLコレステロールの望ましい値は40mg/dl以上です。また、HDLコレステロールの数値と反比例しているのが中性脂肪で、こちらは150mg/dl以上が危険信号です。
高コレステロール、高中性脂肪といわれた場合、多くの人はドロドロの血液を想像します。そして、食生活を極端に変えてしまう人も多いようです。
その典型例が、「鶏卵を含め卵類は一切食べない!」といった食生活です。確かに、卵にはコレステロールが多く含まれており、鶏卵の場合1個あたり240mgが平均的なコレステロール含有量です。しかし、これは1日に摂取するべきコレステロールの70%未満に過ぎず、他の食品を過不足なく摂っているのであれば、決して過剰摂取とはなりません。
コレステロールは、細胞や細胞膜を形成する成分のひとつであり、ホルモンや胆汁酸などの材料ともなるものです。ですから決して、「摂らない方がよい栄養成分」ではありません。重要なのは、摂取し過ぎた場合に、余分なコレステロールが悪玉コレステロールや中性脂肪を増やしてしまうということですので、適量の摂取(300〜400mg/dl)を心がけることこそが肝要です。
2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」