セルフメディケーションを実践のための200テーマ

池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)

7. 快便は健康のバロメーター
 人知れず悩みのタネだとされている、お通じのからむ病気が便秘と痔です。そのため薬局で売られている薬の中で便秘薬と痔の外用薬は「隠れたベストセラー」だとされています。

 昔から、快食、快眠、快便は健康のバロメーターといわれています。とくに快便の爽快感は、今も昔も変わりません。江戸時代の本草学者、貝原益軒の「養生訓」でも、小便、大便を2便とよび、特に大便については、以下のように記述しています。

「およそひとの脾胃がつかえて、食物が停滞し、そのために腹痛を起こし、食欲がなくかり、気がふさがって病気になるひとは世間に多い。この症状のほとんどは大便が通じにくくて、とどこおるからである。(後略)」(「養生訓」伊藤友信訳、講談社学術文庫より)

快便のメカニズム

 毎日の排便は、スムーズな胃・結腸反射によります。朝起きて、一定の食事(食物+水分)を摂ると、食べたものが胃の粘膜を刺激します。この刺激を脳神経が受け、大腸の下行結腸に「大腸を収縮させろ」という命令を出します。その結果、大腸内の便は肛門近くの直腸へと移動します。この移動で直腸の粘膜が刺激を受け、それが脳神経に伝わり便意となります。

 大便を移動させる腸の蠕動運動を促す成分として重要なのが短鎖脂肪酸です。その主なものには酪酸、酢酸、プロピオン酸ですが、これらは、腸内で善玉菌が食物繊維をエネルギーとして利用した際に作り出されます。すなわちこれらは醗酵現象の副産物として作られたものなのです。

 大腸内の細菌は、腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれ、およそ100種類、100兆個存在するとされています。これらの細菌のなかで、ビフィズス菌などの善玉菌が腸内細菌叢に多いほど身体に良いとされ、腸年齢が若いと評価される要因になっています。

腸年齢の若さを保つ

 それでは、快便に欠かせない腸内の短鎖脂肪酸を増やし、蠕動運動を活発にする食養生のポイントを紹介します。

 まず、野菜、海藻、きのこなど、食物繊維を豊富に含んだ食品をしっかりと摂ることです。また、ヨーグルトや納豆もオススメです。このように食事に気を配り、腸年齢で若さを保てば、免疫機能も高まり老化防止にもつながります。なお快便の目安は、異臭が無く、量的にはバナナ1本分くらいのが目安です。

2007年07月 掲載
■テーマ
1. 不適切な生活習慣と「生活習慣病」
2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」