池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
「ゆりかごから墓場まで」― これは、日本における定期的な健康状態のチェック体制を表した言葉です。国が関与する健康状態のチェックは、明治11年(1878年)の学生の「活力検査」が始まりです。これが現在では、学校保健法に基づく「身体検査」となり、将来の生活習慣病予防への出発点となっています。そしてこの前後にあるのが、乳幼児健診と労働安全衛生法の定める定期健康診断、老人保健法による基本健康診査(来年からは健康増進法による特定健診)となります。
生活習慣病は芽から摘みとる
感染症としての結核が猛威をふるっていた時代、健診の目的は肺結核の早期発見に絞られていました。しかし、この50年間でわが国の疾病構造は大きく変わりました。死亡原因の上位は、結核を中心とした感染症から、癌、心臓病、脳卒中などの非感染性疾患へと移り、それと同時に健診を受けることの目的とメリットも変わりました。無自覚・無症状で忍びよる、肥満、高血圧などの異常を早期に発見し、糖尿病や高脂血症(脂質異常症)といった生活習慣病の芽を摘み取ることが、現在の定期健診の目的とメリットです。
受けっぱなしじゃ意味がない
まず、これまで受けてきた健診結果を時系列に整理して、眺めてみることをお勧めします。そして、注意深く身長と体重の推移を確認しましょう。この2つの数値から、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)にて体格指数(BMI)を出してみて、その数値が25以上で、かつお腹回りが太ったと感じていたら要注意です。加えて、肝機能の数値(GOT、GPT、γ-GTP)、血糖、血液脂質、血圧の推移も確認しましょう。
また、生活習慣病の前段階といえるメタボリックシンドロームかどうかも確認しましょう。腹囲が、男性なら85cm以上、女性なら90cm以上に加えて、中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上またはHDL-コレステロール40mg/dl未満、収縮期血圧130mmHg以上か拡張期血圧85mmHg以上、空腹時血糖値100mg/dl以上の3つの項目のうち2項目以上に異常がある場合には、メタボリックシンドロームとなります。
健康診断を受けただけで安心せずに、その結果を健康維持や病気予防に活用することが肝要です。
2007年08月 掲載
■テーマ
1. 不適切な生活習慣と「生活習慣病」2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」