池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
「たんぱく質」「脂質」「糖質」という三大栄養素のうち、脂質からは肥満を連想してしまいがちです。しかし、ある程度の脂質を摂ることは、健康的な生活を維持するために不可欠なことだとされています。
昭和30年代、日本人の脂質摂取量は全摂取エネルギー量の15%程度でした。しかしその後の食生活の欧米化によって、平成に入ってからの国民健康・栄養調査ではそれが25%を超えるに至っていることを示しています。これは欧米人の30%に比べればまだ少なめだといえますが、肥満と、肥満から起こるさまざまな病気、特にメタボリックシンドロームを防いでいくためには、これ以上の脂肪摂取は控えていくことが望まれます。
脂質は、私たちが目にする形としては、バターやラードといった常温で固形体を維持するものと、ごま油やオリーブ油といった液状のものとがあります。一方、化学構造的には、長鎖、中鎖、短鎖と3種類の脂肪酸があり、さらに詳しく見ていくと、鎖構造の中に炭素の二重結合があるかないかで、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
この2つの脂肪酸の含まれ方は、食品の種類によって大きく異なります。飽和脂肪酸は獣肉の脂肪に含まれ、不飽和脂肪酸は植物や魚類の油に多く存在します。さらに、不飽和脂肪酸はオリーブ油などに含まれている一価不飽和脂肪酸と、魚などに多く含まれる多価不飽和脂肪酸に分けられます。脂肪酸摂取の割合は、飽和:一価不飽和:多価不飽和=3:4:3が良いとされています。そこで飽和脂肪酸は肉類から、一価不飽和脂肪酸はオリーブ油などから、そして多価不飽和脂肪酸は背の青い魚から摂るというのがお勧めです。
1日に摂る脂質の量は、50g程度が適量です。摂取量は、多すぎても少なすぎても良くありません。欧米人並みに1日70g以上摂取していると、エネルギー過多による肥満と、メタボリックシンドロームによる心筋梗塞や脳梗塞に罹患する危険を高めます。一方、1日の摂取量が30g以下の場合には、血管が脆弱になり脳出血を起こし易くなるなどが知られています。
快適で健康的な生活を送るためには、適切な割合で適切な量の脂質をとることを心がけて参りましょう。
2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」