セルフメディケーションを実践のための200テーマ

池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)

14. 快眠のために
 私たちは、生涯の3分の1の時間を睡眠に費やしています。この時間こそ、残り3分の2の時間を充実させる原動力となります。

 「年金世代」になってくると、若い時の熟睡感と快適な目覚めが懐かしく思えてきます。「歳をとった」と実感させられることはたくさんありますが、なかでも睡眠については顕著な変化が現われます。

 よく見られるのが「中途覚醒」です。これは、眠りが浅くなり、夜中に2度3度と目が覚めてしまうものです。そのため熟睡感が失せ、日中も眠ってしまうといったことが起きてきます。

 このように、睡眠のパターンが夜1回の単相性から、1日に何度も起床と睡眠を繰り返す多相性に変わってくるのは、高齢者によく見られる睡眠障害のひとつと言われています。

一夜の眠りは90分単位
 睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠で構成されています。脳波的に最も深い眠りがノンレム睡眠で、「脳の眠り」ともいわれます。一方レム睡眠は、ノンレム睡眠のあとほんの短い時間(10分程度)訪れ、「夢見る眠り」「身体の眠り」などと呼ばれています。

 この2つの眠りが、約90分ワンセットで何度か繰り返すことで、一夜の眠りは形成されています。正常な睡眠では、ノンレム睡眠の深さが朝方に向けて徐々に浅くなり、時間幅も少なくなる一方で、レム睡眠が増加してきます。そして、4〜5セット目のレム睡眠終了時に目覚めると、心地よい覚醒感を得ることができます。中途覚醒も含め多くの睡眠障害は、このノンレム睡眠の質の低下によって起きています。

快眠を得るための工夫
 夜、心地よい眠りを得るためには、まずは以下の4つの点に注意してみましょう。

  1. 日中を活動的に過ごす
  2. 毎朝決まった時間に起床し、たっぷりと光を浴びる
  3. 起床後14時間をめどに就眠の準備をする
  4. 1〜3を実践しても快眠が得られない場合、かかりつけ医に相談し適切な睡眠薬を処方してもらう
 1〜3は、明日からでも始めることができるはずです。若いときに比べ眠りの質が低下してくる「年金世代」の方々にとって、心地よい眠りとさわやかな目覚めは、何ものにも代えがたい贅沢なものになるはずです。
2008年02月 掲載
■テーマ
1. 不適切な生活習慣と「生活習慣病」
2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」