池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
「アルコール=薬物」。お酒を飲むときは、これを大前提として知っておく必要があります。そして、薬物である以上、常にリスクを伴います。
厚生労働省が進める「健康日本21」でも、
- 摂取する1日のアルコールが60gを超えるような多量飲酒者を減らす
- 未成年者の飲酒を無くす
- 「節度ある適度な飲酒」の啓蒙
などが提唱されています。これらを実現し、今起こっているアルコールが原因の健康障害を10%減少させることを目標としています。
この「節度ある適度な飲酒」とは、ビール中ビン1本(500ml)、清酒1合(180ml)、ウイスキーダブル1杯(60ml)であり、含まれるアルコールは約20gです。
γ-GTP検査というものがあります。これは、お酒がどれだけ肝臓に負担をかけているかを知る上で、参考になる検査です。この検査の基準値は、40未満です。健康診断などで数値が100を超えている場合、肝臓はオーバーワークです。また、GOP、GPTの値が上昇しているなら、アルコール性肝障害の危険を考える必要があります。1週間で4日以上お酒を飲む人では、γ-GTPが100を超えない範囲で飲酒量をコントロールすることがポイントです。また、すでにB、Cなどのウイルス性肝炎を患っている人にとって、禁酒は絶対です。
吉田兼好は「徒然草」で、「よろずの病は酒よりこそおこれ」とお酒の害を説いています。貝原益軒も「養生訓」で「多飲のいましめ」を書いており、「酒は各人にそれぞれ適量がある。程よく飲めば益が多く、多飲すれば損失が多い」と警告しています。このように、お酒の害についての言葉は昔からありました。
一方で、お酒は健康に良いものだと受け止められている言葉もあります。それが、「酒は百薬の長」という言葉です。お酒が好きな人は、しばしばこの言葉を免罪符のように使います。しかし、この言葉は本当に飲酒を奨励するものなのでしょうか。
出典は、漢代の経済政策を記した「食貨志」です。そこには、国の税制改革として塩、酒、鉄の専売化を目指すことが記されており、そのスローガンが「それ塩は食肴の将、酒は百薬の長、宴会の長、鉄は田農の本なり」というものでした。つまり、「酒は百薬の長」という言葉は、酒税設置を進めるための枕詞だったのです。当時の医学的な見地から、お酒が人間の体に与える好影響を表した言葉ではありません。そのことを踏まえ、この言葉に惑わされることなく「少酒」を守り、お酒の害を防ぎましょう。
2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」