池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
現在、わが国では5万人以上の男性が、毎年肺がんで亡くなっています。これは胃がん、大腸がん、肝臓がんよりも多い数字です。そして、この背景には喫煙習慣があります。
第二次世界大戦の前からその後期まで、皇室からは「恩賜のたばこ」が事あるごとに国民に贈られていました。特に紙巻たばこは手軽に吸えて、1本吸えばニコチン供給も十分です。ニコチン依存のある人にとっては、刻みたばこをキセルで吸っていた時代に比べて、喫煙満足度は何倍も高かまったことでした。
このような理由もあり、紙巻たばこはこれまで長い間、毎年販売量を増やしてきました。しかし、がん(特に肺がん)の原因として喫煙が問題視されはじめるとともに、禁煙すること、させることは国民運動といっていいほどに盛り上がってきました。加えてタバコへの増税、健康増進法の制定などが相まって、最近では喫煙人口も減少しはじめました。
しかし、たばこの販売量減少による効果(肺がん減少)は、しばらく先のことです。それまでわが国の肺がん患者数は、増え続けると予測されています。
喫煙者は、自らの肺がんを含めたたばこ病(慢性気管支炎、肺気腫、心臓病、脳卒中など)の危険と同時に、住居を共にしたり職場を共にしたりする人達をも、副流煙によって同様の危険にさらしていることを自覚しなくてはなりません。女性の肺がんは、本人の喫煙によるケースよりも、近親者の喫煙が原因とみられるケースのほうが多いともいわれています。
タバコがもたらす三大悪成分は、タール、ニコチン、一酸化酸素です。この3成分は多数の発がん性物質を含むタールを筆頭に、血管収縮を促進するニコチン、細胞への酸素供給低下要因である一酸化炭素、いずれも発がんの最初のステップである「DNAの損傷」を引き起こします。
喫煙習慣からの脱却は、ニコチン依存の克服でもあります。そのためには、禁煙外来の受診など個人の努力に加えて、家族ぐるみ、地域ぐるみそして国ぐるみの対策が必要です。
2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」