池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
人間ドッグで、大腸がんの前段階とみられている大腸ポリープの見つかる人が増えています。
欧米、特に白人では昔から大腸がんによる死亡率が高く、注目されていましたが、わが国では肺がんと胃がんの罹患者が群を抜いていました。しかし、最近では様子が変わってきています。『がんの統計 2007年版』(財団法人がん研究振興財団)によると、2005年の部位別がん死亡数において、大腸がん(結腸と直腸)での死亡は男性で4位、女性で1位、男女全体で3位となっています。今後も大腸がんによる死亡数は伸び続け、近い将来肺がんや胃がんを抜くことも十分予想されます。
わが国で大腸がんが少ないといわれていた時代でも、ハワイやアメリカ西海岸などに移住した日本人には、白人並みの頻度で大腸がんがみられました。同じ日本人でありながらこのような差が生じるのは、同じ遺伝体質を持っていたとしても生活環境の違い、特に食生活の差によるものと考えられています。
生活習慣上の第1の差は、肉や脂肪の摂取量の違いです。第2の差はよく飲まれる酒類の違い(特にビール)、第3の差は野菜摂取量の違いです。加えて運動不足も目立ち、肥満者が多いのも日系二世、三世の特徴です。そのため大腸がんばかりでなく、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの罹患率も高く、動脈硬化による心筋梗塞なども増加しています。
口から始まり肛門に終わる消化管は、それぞれの部位で多様な機能を果たしています。口から入った食べ物は小腸で栄養分を吸収され、その後大腸に移行し、主として水分の吸収が行なわれています。
結腸から直腸、そして肛門までの長さは約2mです。大腸ポリープ(大腸がん)は、この区間のどこにでもできる可能性があります。なかでもできやすいのが、結腸のS字上部と直腸です。
人間ドッグなどでの大腸ポリープ(大腸がん)の発見は、便の潜血反応陽性をきっかけとしたものが多くみられます。これは、隆起タイプの大腸ポリープ(大腸がん)が出血しやすい性質をもっているためです。しかし、隆起タイプと同等の頻度で非隆起性、即ち扁平状の大腸ポリープ(大腸がん)もあります。このタイプでは、ほとんどの場合、便潜血反応は陰性です。
そこで、大腸内視鏡検査が必要となります。特に、血縁者に消化器のがんのある方、胆嚢の手術をされた方、胃や胆嚢にポリープのある方、顕著な便秘症の方などは、この検査が大腸ポリープ(大腸がん)の早期発見につながります。
2. 体重コントロール
3. 「死の四重奏」〜肥満〜
4. 「死の四重奏」〜糖尿病〜
5. 「死の四重奏」〜高脂血症〜
6. 「死の四重奏」〜高血圧〜
7. 快便は健康のバロメーター
8. 定期的に健診を受けて生活習慣病の予防をはかる
9. 人+良=食 〜たんぱく質〜
10. 人+良=食〜脂質〜
11. 人+良=食〜炭水化物〜
12. 健康維持の助っ人、サプリメント
13. ストレスをためない生活
14. 快眠のために
15. 基礎代謝
16. 酒と肝臓の深い関係
17. 喫煙習慣とがん
18. 大腸がんの早期発見
19. ウイルス性肝炎とがん
20. 乳がんの早期発見
21. 前立腺がんが増えている
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
23. とても多くなった高尿酸血症・痛風
24. 糖尿病への取り組み
25. 糖尿病とは「畏」の気持ちをもって付き合う
26. 加齢とともに増える眼の病気―白内障、網膜症、緑内障、黄斑変性症―
27. 高血圧の自己管理―家庭血圧をはかりましょう
28. コレステロールが気になる人へ
29. 歯周病を予防し「8020(ハチマル・ニイマル)」を目指す
30. アンチエイジング(抗加齢)とセルフメディケーション
31. 快適生活のための「四快」