池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
21. 前立腺がんが増えている
50、60代に入ったら肺がん、胃がん、大腸がんだけでなく前立線がんの早期発見にも考えを致すべきでしょう。このための血液によるスクリーニング検査は他の生化学検査と一緒にできますから、追加費用だけで身体的、心理的負担はありません。 高齢と高脂肪食がキーワード
前立腺は尿管の膀胱の付け根部分にあって、尿管と精巣管を取り巻く内腺と外腺から成り立っています。尿が出にくくなる「前立腺肥大症」は内腺の肥大で起こります。一方、前立腺がんは外腺や外腺と内腺の境目あたりに出てきます。前立腺がんは、高齢者(主に60歳以上)にみられることと、3大栄養素のうち脂質(脂肪)の摂取量が明らかに多いというのが特徴的なことです。 そこで予防のための留意点としては、
PSA検査の普及とラテントがん(潜在がん)
前立腺がんと診断される人の数が顕著に増えた背景のひとつに、前立腺の異常のみを検出する「前立腺特異抗原(PSA)検査」というスクリーニング検査の普及があります。この検査のおかげで早期の前立線がんが見つかるようになったのです。 PSAは精液中に普通に存在する生理的な成分で、射精された精液を一時的に凝固させる性質を持っています。 中高年になって前立腺が肥大してくると1/3くらいの人がPSA高値を示すようになります。前立腺がんのある方はその傾向がさらに顕著で8割以上の方が正常値4ng/mlを超えるようになります。ただ、日本人の前立線がんでは、PSA高値が見られてもじっとおとなしくしているラテントがんが、70歳を超えると2〜3割、80歳を超えると3〜4割に達するということは知っておきたいところです。 治療法の選択は慎重に
PAS検査で陽性とでた人は、超音波検査、針生検などで確定診断が行われ、治療にはホルモン療法、外科手術、放射線治療、化学療法などが検討されますが、ラテントがんと思われるときは経過観察と定期的な検査で管理する「待機療法」も検討されるのが前立腺がんの特徴です。特に早期の前立腺がん治療(手術)では、年齢や今後の生活のあり方などを考えて、慎重に治療法を選択しましょう。そして米国をはじめ諸外国では、PSA検査はこのような事情をよく理解した人の同意を得てはじめて実施されているという実情も考慮に入れておきましょう。 2008年09月 掲載
|