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池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
22. 新しいタイプの肝障害―NASH(ナッシュ)―
 肝臓は、人体における代謝をコントロールする重要な臓器です。肝臓の病気ではウイルス性肝炎(B、C型など)、これが慢性化した状態の慢性肝炎、そして肝硬変、肝がんがよく知られ、飲酒によるアルコール性肝炎にも肝硬変やがん化が知られています。

 近年、飲酒歴がなく肝炎ウイルスもいない人にも脂肪肝が多いことがはっきりし、その中に5〜10年で5〜20%の人が肝硬変に進行すると考えられる非アルコール性脂肪肝炎(non alcholic steato hepatitis、NASH)が注目されています。少なくとも成人100〜200人に1人が罹患していると推定されています。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とは
 各種検診受診者の20〜30%の人に脂肪肝がみられます。肥満の判定の指標であるBMI[体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)]が25を超える人では、その半数において脂肪肝が認められます。この脂肪肝への基本対策は、適正体重に向けて肥満を解消し、過食、過飲を改めることです。

 非飲酒の人の脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼びますが、その多くが肥満、糖尿病、脂質異常症などを伴っています。このNAFLDの中に、細胞内に脂肪滴など脂肪沈着のみみられる“いわゆる脂肪肝”と、さらに細胞壊死や繊維化がみられる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)があります。

 NASHの確定診断は肝臓の針生検で行います。顕微鏡下でみる肝細胞には炎症がもたらす壊死や繊維化の所見が認められ、慢性肝炎の状態からやがて肝硬変を起こし、さらに肝がんにもつながるという可能性が示唆されるのが、通常の脂肪肝とは大きく異なるところです。
元凶はメタボリックシンドロームか
 ではなぜこのようなことが起こるのか? 脂肪肝プラス腹腔内の脂肪、すなわちメタボリックシンドローム(内蔵脂肪症候群)が原因と考えられています。

 人体の脂肪組織はその分布状態から大きく皮下脂肪組織と腹腔内脂肪(内臓脂肪)組織の2つに区分されます。そして脂肪組織を構成する脂肪細胞からは各種の生理活性物質アディポサイトカイン(アディポネクチン、レプチン、TNF-αなど)が分泌されています。

 腹腔内の脂肪組織が過剰に蓄積されたメタボリックシンドローム状態では、善玉アディポサイトカインのアディポネクチン分泌が減少し、悪玉アディポサイトカインのTNF-αなどが増加していることが分かってきています。この悪玉が脂肪肝に強く働いて、脂肪性肝炎を引き起こしてくるというのがNASHの病因に関する有力な見解といえます。この他、病因に関するものとして酸化ストレス、エンドトキシンなども注目されています。

 非飲酒でも、お腹回りが男性85cm以上、女性90cm以上で、脂肪肝がみられる際には、NASHは要注意だということです。

 そして、メタボリックシンドロームには、もともと痩せていた人は内臓脂肪型肥満が起こってきていてもBMIが25以下という“いわゆる隠れ肥満”がみられます。NASHにはこのような例のあることを心に留めておきましょう。
2008年10月 掲載