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池田義雄(セルフメディケーション推進協議会会長)
24. 糖尿病への取り組み

 糖尿病は、英語の医学用語で「Diabetes Mellitus」と記されます。Diabetesの語源は「サイホン」、そしてMellitusは「甘い蜂蜜」を意味します。

 人類が糖尿病と遭遇したのは3000年前。当時の人は、この病気の人が大量に水を飲み、大量の尿を排泄する姿をサイホンに見立て、なおかつ尿から甘い香りがすることにも気付いたというわけです。現代医学は、この多飲と多尿が高血糖によってもたらされることを、また高血糖が引き起こされるのは、体内の糖代謝をコントロールしている、インスリン(膵臓から分泌されるホルモン)の絶対的、ないしは相対的な不足によるインスリン作用不足によることを解明にしています。

 そして正常な糖代謝を営むのに必要なインスリン量については、体重1kgあたりおよそ1単位(0.01ml)であることも明らかにされています。

1型糖尿病と2型糖尿病

 さて糖尿病は1型と2型に区分されます。1型糖尿病は自己免疫異常などによって、インスリン分泌細胞である膵臓のβ細胞が破壊されてしまうことで引き起こされ、絶対的なインスリン不足状態を来します。そのため、不足分のインスリンを外から補うことで正常な糖代謝を保たなければなりません。もしインスリン不足を放置すれば、高血糖から起こる糖尿病昏睡で死に至ることもあります。これが1型糖尿病で、生活習慣病といわれる2型とは異なり、インスリン欠損症とも言うべき疾患で小児期からの発症の多いことが知られています。

 一方、インスリンの絶対的な不足はないけれど、インスリンの出方、特に食後の血糖上昇を速やかに下げてくれる初期分泌の低下や、筋肉組織などでのインスリンの働きが不十分(インスリン抵抗性)で、高血糖状態が持続してしまうのが2型糖尿病です。糖尿病の95%以上を占める2型糖尿病は、遺伝的にかかりやすい体質の人に多いことがわかっていて、関係する遺伝子を探策する研究も進んでいます。2型糖尿病は高血圧症、脂質異常症などと並ぶ生活習慣病で、肥満した中高年者に多く見られますが、近年は10代からの若年者での発症も増えています。

世界における糖尿病の動向

 わが国の糖尿病は、2006年に「糖尿病を強く疑われる人」が820万人、「糖尿病の可能性が否定できない人」を合算すると1870万人達し、今後さらに増えるとされています。

 世界糖尿病連合(IDF)は世界の糖尿病患者数は2億2400万人(2007年)で、2025年には3億8000万人になると予測しています。現在、糖尿病有病者が多い国は、2007年の時点で1位 インド(4,090万人)、2位 中国(3,980万)、さらに3位 米国、4位 ロシア、5位 ドイツ、6位 日本と続き、将来的には先進国より発展途上国で著しい増加の起こることが懸念されています。

 このように増大する糖尿病の脅威に対し、2007年に国連(WHO)がインスリンの発見者であるバンティング博士の誕生日に当たる11月14日を「世界糖尿病デイ」にすると決議し、IDFとともに「糖尿病に対して団結して立ち向かおう(Unite for Diabetes)」と世界各地で糖尿病の予防、治療、療養について啓発活動を展開しています。

糖尿病をめぐるわが国の動き

 わが国では、糖尿病だけでなく動脈硬化の予防対策として、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に注目し、内科系主要8学会が合同で腹囲径を含めた診断基準をまとめ普及を図ってきています。この考え方が国の特定健診・特定保健指導に大きく取り入れられることになり、今やメタボリックシンドロームは時代の流行語となるほど広く認知され脱肥満への自覚を向上させています。

 このような流れの中で日本糖尿病学会も糖尿病診断をより早期により積極的に行う方向で、糖尿病の診断基準の空腹時血糖について見直し、従来は正常とされていた空腹時血糖値100~109mg/dLを「正常高値」とする下表に示すような新しい血糖値区分を導入し、「正常高値」の人も経口ブドウ糖糖負荷試験(OGTT)で正常型、境界型、糖尿病型のいずれに属するか判定することを勧めています。

表 空腹時血糖値の正常域に関する新区分
新区分正常正常高値境界型糖尿病型
100mg/dL未満100〜109mg/dL110〜125mg/dL126mg/dL以上
旧区分正常型境界型糖尿病型
110mg/dL未満110〜125mg/dL126mg/dL以上
糖尿病・糖代謝異常に関する診断基準検討委員会報告:糖尿病51(3):2008より
治療はより積極的に

 糖尿病発症後5年以上に渡って血糖コントロール不良を放置すると、眼や腎臓や神経に合併症が出るようになります。そうならないためにも、糖尿病の初期から適切な治療(インスリン、内服薬、食事、運動など)が欠かせません。又治療を中断しないことも極めて重要です。

 治療の基本である食事療法と運動療法を先ず徹底するというのが従来のスタンダードな治療法でしたが、患者さんの様子を見ながら必要ならば早期から薬物療法を取り入れ積極治療を行い、治療初期から血症正常化を図るという行き方もでてくるでしょう。

 このような状況のなかで患者さんの自覚が高まり、医療者がより積極的に糖尿病治療に取り組んでいけば、もともと知識欲があって勤勉な人が多いといわれるわが国だけに、糖尿病による不利益を大幅に減らせる可能性が期待されます。

2008年12月 掲載