15. 科学的根拠に基づいた糖尿病の運動療法
長阪裕子(三咲内科クリニック、健康運動指導士)
![]() 運動療法は糖尿病の治療の基本の1つです
運動療法は、薬と同様に少なすぎても効果がなく、多すぎたり強すぎたりすると害になります。そこで、日本糖尿病学会は科学的な根拠に基づいて以下のような運動を推奨しています。
参考:日本糖尿病学会編「糖尿病治療ガイド2008-2009」
*最大酸素摂取量 とは、1分間あたりに酸素を取り込める最大量のことで、持久力の評価値として用いられています。
人は呼吸によって酸素を身体に取り込み、この酸素を利用して脂肪や糖を分解し、運動時のエネルギーを作っています。つまり、運動時に必要とするエネルギー量が多いほど(運動の強さが強いほど)、最大酸素摂取量に対する割合が高くなります。
1に安全 2に効果
身体条件と安全限界・有効限界
上記のように、いくら推奨されている運動でも、合併症の程度、服用している薬、年齢、運動経験、現在の運動習慣、体力など個人の身体状況により、安全に行える運動(安全限界)や効果的な運動(有効限界)は異なります。
また、糖尿病のコントロールが極端に悪いときに運動をすると、逆に血糖値を上げたり、合併症を悪化させることもあります(運動禁忌)。
あまり恐れすぎる必要もありませんが、「運動療法」として運動を行う場合には、健常者が疾病予防や体力向上、楽しみとしての運動やスポーツを行う以上に気をつける必要があります。
![]() 患者さんは自らの治療者です
糖尿病は現代の医療ではまだ完全に治すことができない病気です。そして、手術や処置などと違って、治療には患者さん自身の努力(主に食事や運動に関して)が課せられます。
しかしながら、同じ運動を行っても、効果の現れ易い人と現れ難い人がいます。これは、遺伝子による場合があることも解ってきていますが、この遺伝子検査は一般化されていないので、誰が運動効果の現れ難い人かはわかりません。
だからこそ、はじめから頑張りすぎず、あきらめずに上手に付き合い続けることが必要です。
2009年02月 掲載
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