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15. 科学的根拠に基づいた糖尿病の運動療法
長阪裕子(三咲内科クリニック、健康運動指導士)
 世界中に増大している糖尿病の治療や予防は、さまざまな研究を基に日々目覚しく進展しています。その最新の治療や今後の方向性について学ぶことができる「第43回 糖尿病学の進歩」が2月に松本で開催され、参加してきました。そこで、第12回に引き続き、糖尿病の治療としての運動(運動療法)についてお話します。
運動療法は糖尿病の治療の基本の1つです
 運動療法は、薬と同様に少なすぎても効果がなく、多すぎたり強すぎたりすると害になります。そこで、日本糖尿病学会は科学的な根拠に基づいて以下のような運動を推奨しています。

運動の種類・・・有酸素運動とレジスタンス運動(低負荷かつ高頻度)水中運動は有酸素運動とレジスタンス運動がミックスされた運動なので有用です
運動の強さ・・・最大酸素摂取量*の50%前後(中程度の強さ)
「楽である」または「ややきつい」程度
運動の負荷量・・・歩行運動では1回15〜30分を1日2回(できれば食後)
歩行では1日約1万歩 消費エネルギーでは1日160〜240kcal
運動の頻度・・・日常生活の中に組み入れ、できれば毎日 少なくとも3日/週
参考:日本糖尿病学会編「糖尿病治療ガイド2008-2009」

*最大酸素摂取量 とは、1分間あたりに酸素を取り込める最大量のことで、持久力の評価値として用いられています。

 人は呼吸によって酸素を身体に取り込み、この酸素を利用して脂肪や糖を分解し、運動時のエネルギーを作っています。つまり、運動時に必要とするエネルギー量が多いほど(運動の強さが強いほど)、最大酸素摂取量に対する割合が高くなります。

1に安全 2に効果
身体条件と安全限界・有効限界
 上記のように、いくら推奨されている運動でも、合併症の程度、服用している薬、年齢、運動経験、現在の運動習慣、体力など個人の身体状況により、安全に行える運動(安全限界)や効果的な運動(有効限界)は異なります。

 また、糖尿病のコントロールが極端に悪いときに運動をすると、逆に血糖値を上げたり、合併症を悪化させることもあります(運動禁忌)。

 あまり恐れすぎる必要もありませんが、「運動療法」として運動を行う場合には、健常者が疾病予防や体力向上、楽しみとしての運動やスポーツを行う以上に気をつける必要があります。

患者さんは自らの治療者です
糖尿病は現代の医療ではまだ完全に治すことができない病気です。そして、手術や処置などと違って、治療には患者さん自身の努力(主に食事や運動に関して)が課せられます。

 しかしながら、同じ運動を行っても、効果の現れ易い人と現れ難い人がいます。これは、遺伝子による場合があることも解ってきていますが、この遺伝子検査は一般化されていないので、誰が運動効果の現れ難い人かはわかりません。

 だからこそ、はじめから頑張りすぎず、あきらめずに上手に付き合い続けることが必要です。

2009年02月 掲載