セルフメディケーションを実践のための200テーマ

菅野 隆(セルフメディケーション推進協議会理事)

32. 自分の「歩き」を、とことん研究してみる!

 梅雨が明けたとたん、猛暑の日が続いていますが、『こう暑いと運動どころじゃないよ』、という方も多いのではないでしょうか? でも、メタボ予防、ロコモ予防と、生涯の健康生活に不可欠な健康運動とは、毎日の習慣として、歯磨き感覚で生活化し、実践するものですから、熱中症にならないように十分気をつけて、水分補給もしっかりして、屋外では暑い時間帯を避けるとか、エアコンの効いた室内で行うとか、決して無理はせず、コンスタントに継続することこそが大事ですね。
「歩き」が、すべての運動、身体活動の、基本です!
 ところで、『運動しなくちゃぁ〜、とは思いつつも・・・、なかなか・・・・・・』、という方でも、「全く歩かない日」、というのはないですよね。1歩を1回とすると、「歩く」ということは、誰もが、毎日、数千回から1万回以上も行っている、運動、いや、身体活動の基本です。しかし、その「歩き方」や「姿勢」などの「内容と質」は、どうでしょうか?ご自身で、どの程度、その、身体活動の基本の「質」を、意識していますか?

 運動の専門家は、『全ての基本となる歩きの、姿勢やフォームなどが良くない人は、どんなスポーツや競技をやっても、ベストパフォーマンスは望めない』、と言っています。その、全ての身体活動の基本中の基本である自分の「歩き」の「質」を、意識し、ご自身で研究し、高めるよう工夫することは、とても重要なことです。

歩く時の「姿勢」、意識していますか?
 歩く姿勢は、その人の印象を決定づけますし、悪い姿勢は、不要な筋緊張、偏った部位への過負荷や圧迫などを生じさせ、腰痛、肩こりなどの不定愁訴から、呼吸の深さ、全身の血液循環、さらには、精神状態までにも影響してくるものですから、私は、姿勢は健康状態に大きく作用するものだと捉えています。(余談ですが、学術的データではないのですが、私が6年間運動指導をさせていただいている介護施設の施設長は、『経験的にですが、姿勢の悪さと認知症の発症には明らかに相関がある』とおっしゃっておられ、以前ご指導いただいたヨガ学院では、医師と大学教授と共同で実験し、『姿勢を良くすると、脳波が下がる』というデータを得ています。)

 しかし、私が15年程前に、新宿駅のラッシュアワーに1時間ずうっと、行きかう人の姿勢をチェックした時のデータでは、2人に1人、約50%の人は、ぱっと見で姿勢が悪い(耳と肩峰のラインが前傾し、背中が丸まり猫背、もしくは、肩峰と大転子のラインが後傾で、腰が反りお腹が出ている)のです。颯爽と歩いている人は極めて少数で、ほとんどの人は歩き方とか姿勢に無頓着なのだなぁと痛感したものでした。

「歩き方」はどうでしょうか?
 次に、歩き方ですが、ただ歩くだけでなく、どうせなら、より良い歩き方で、健康増進にも効果的に歩きたいものです。しかし、やはり、多くの方の歩き方は、生活の移動手段として無意識に行なわれており、脚と腕だけの最低限の動きの省エネレベルで、骨盤周辺部や体幹は殆ど動かされていません。良い姿勢でダイナミックにかっこ良く歩いている方は滅多に見かけませんね。

 メタボ改善に効果的な歩き方は、身体の中心部、大筋群である腹背部、骨盤、股関節周辺部の筋を歩行で使われるように歩くことが効果的です。骨盤周辺部や腹背部を捻るなど動かしながら歩けば、内臓脂肪周辺部位の血液循環も促進されますから、内臓脂肪を減らすことにより効果的で、運動強度も3METsから4METsに増し、エネルギー消費量も約1.3倍になります。それが1日数千回行われるわけですから、ちょっと意識しただけでも積み重なれば大きな違いになります。

※3METs:座位安静時のエネルギー消費量を1とした時の3倍程度のエネルギーを消費する運動の強さ。

 ご自身が毎日行っている「歩き」を研究して、より良い姿勢や歩き方を意識して実践することは、生涯の健康にとって大きな差、利益をもたらすでしょう。下の資料を参考にして、ぜひ毎日意識して歩いて下さいね!

良い歩き方、4つのポイント

2010年07月 掲載
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