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31.ロコモティブシンドロームは健康寿命を延ばす?
福田千晶 (医学博士、健康科学アドバイザー)

 前回の長阪先生の文章にでてくる「ロコモ」に関して医学界での現状を書いてみます。高齢化社会を迎え、我が国では、およそ4人に1人が65歳以上。特に10人に1人は75歳以上です。「国民が長生きすることは素晴らしいこと。」しかし、高齢者になっても自分で楽しく暮らせる人生にしたいものです。また、介護が必要な高齢者が増える心配などから、あらためて生涯を通じて運動器の健康を考える必要性に直面しています。

 そこで、日本整形外科学会では2007年に要介護の状態や要介護の危険のある状態として「ロコモチィブシンドローム(locomotive syndrome)という概念を提唱しました。分かりやすい表現では「運動器症候群」。腰も膝も問題が生じているし、関節の障害もあり筋力低下もあり、というようにいくつかの運動器の不都合で運動器全体の機能が低下している状況で、生活の基本動作が困難になることです。

 ロコモティブシンドロームによる要介護状態では、移動のための歩行や、トイレ動作や入浴が1人でできなくなります。その主な原因としては、運動不足。運動不足により体重は増加し、筋力低下は低下します。そうなると関節の安定性が損なわれ、立位のバランス能力が低下します。さらに心理的にも転倒の恐怖が加わるなど、動きたくない要素もでてきて、運動器全体の機能低下になるのです。

 運動不足の予防として、運動は大切となります。予防トレーニングとして「ロコトレ」が提案されています。これは、腰や膝への負担が過剰にならないように配慮されたものです。基本トレーニングとして、長阪先生の原稿に書かれていた、スクワット、開眼片脚立ちは推奨されています。

 しかし、一般に簡単にできそうな運動こそかえって実行されないこともあります。日常生活の中で、歯を磨きながら開眼片脚立ちを日課にしてはどうでしょうか。テレビを見ながら、スクワットをしてはいかがでしょうか?

 さらに、まだ若い人や高齢者でも運動能力が保持されていて出来る人は各種スポーツ、ジウオーキング、水中ウオーキングなどをあわせて行うことはロコモ予防に有効です。若い世代でも、駅で階段よりエスカレーターやエレベーターの列に並んでいる人は「ロコモ予備軍」の予備軍(?)かもしれません。

 今後は、メタボのようにロコモという語が普及するかもしれません。しかし、大切なことはロコモティブシンドロームになる源に疾患がある場合は、注意が必要なことです。中高年に増えてくる脊柱管狭窄症がある場合、体内では何がおきていて、運動時の注意は何でしょうか? 腰椎椎間板ヘルニアでは? 頚椎症では? 変形性膝関節症では? さらに運動器以外の疾患でも高血圧、糖尿病、狭心症、貧血、白内障・・・などを有している人が運動するときの留意点を学んでおかないといけません。

つまりロコモ対策は、まず自分の健康について関心を持つことかも知れません。もちろん本人だけではなく指導者も、さらに勉強するテーマを与えられたわけです。「ロコモ」という語の普及で、国民の健康への関心が高まり、健康寿命が延びるきっかけにしたいもものです。
2010年07月 掲載