セルフメディケーションを実践のための200テーマ

福田千晶(セルフメディケーション推進協議会理事)

43. 夏の運動時、健康管理の注意点
 今年は全国的に節電モード。冷房を控えめにし、室内は高温になると予想されます。室内での運動も、例年より暑くなるかもしれません。そこで、運動時の注意点を考えてみましょう。
運動で体の熱が上がる
 
筋肉を使うと熱を発して、体温が上昇します。しかし、体温は過剰に上昇すると、体内の調整がつかなくなるので、何とか冷やそうと汗をかきます。汗は、皮膚に水分を出して、この水分が蒸発するときに、気化熱として体の熱を奪って体温を下げます。

 普段、運動不足の人は、汗が出る管である汗腺がサボっといて汗が十分にでないことがあります。すると、体温は上がりすぎて、熱中症になるなど、気分が悪くなったり、めまいやふらつきを感じます。

 また、運動不足の人は反対に急に汗を大量にかくこともあります。すると、体内からは水分が多く奪われすぎて、脱水になります。そして、それ以上は汗をかけず体温は下がらなくなります。この場合も熱中症で気分不良などの症状が出現します。  ですから、運動不足の人が暑い環境で久しぶりに運動に参加する場合は、本人も指導者も注意が必要です。十分に水分を摂って、無理をせず、気持ちよい程度の運動にとどめましょう。

 また、睡眠不足や疲労、ストレスがあると体内での自律神経の働きに乱れが生じやすくなります。体温をほぼ一定に保つための汗の量の調節も、自律神経によって調節されています。ですから、心身の疲労や不調があると、汗のかき方の調節が上手くいかず、体温が上がってしまうことにもなりかねません。  もちろん、運動する環境は身体への負担に大きく関わります。暑い日に、健康を目的とした運動をする場合、なるべく涼しいところ、または風のあるところ、日陰で行いたいものです。

衣服の選び方
 衣服に関して、木綿は吸湿性にすぐれ汗をよく吸い取ってくれます。ですから、運動後にすぐ着替えるときには良い素材です。でも、木綿の欠点は乾くのに時間がかかること。もし、午前・午後の運動など長時間の場合は、汗で濡れたウエアが体を冷やしてしまうこともあります。即乾性のスポーツウエアを選ぶと良いでしょう。

食中毒の予防
 「運動と食中毒、関係あるの?」と思われるかも知れません。でも、運動時にまつわる食中毒の危険もあります。
 食中毒の原因としてよく知られているO-157などの大腸菌は、冷蔵や冷凍では死滅しません。冷蔵庫の中では繁殖をぎりぎり抑えられる程度です。そして、常温に戻すとまた、菌は繁殖をはじめます。大腸菌は75度以上の温度で1分間以上加熱すると死滅します。

家から持参するお弁当は、よく火を通したものにします。作りたてで熱いうちに弁当箱の蓋をすると、腐敗しやすくなります。できる限り冷ましてから蓋をするように注意しましょう。梅干などの酸味、または殺菌シートを入れることもお忘れなく。

 朝、コンビニで冷蔵庫の中で保管されていたお弁当を買ってきて、数時間は暑い環境に置いておき、そして昼休みに食べるとなると・・・たとえ賞味期限内でも食中毒の危険はあります。冷蔵庫にしまうか、飲み物と一緒にアイスボックスで保管する必要があります。

 また、ペットボトルや缶入り、紙パック入りなどの飲み物は、栓を開けたら冷蔵保存が原則です。でも、運動開始時に開けて少しのみ、その後は常温で置いておきがちです。すると、菌は繁殖して食中毒の原因になります。とくに、糖分、ミルク、果汁などがあると菌は繁殖しやすいので気をつけましょう。アイスボックスなどを用意するように心掛けたいものです。

 もしくは、保温ポットに冷たい麦茶か、熱いお茶を入れて持参する方法もあります。もちろん、ペットボトルや、缶入りの飲料は、開けたらすぐに飲んでしまえば、清潔に作られているので安心です。  そして、手を良く洗うことも食中毒の予防には大切です。運動に縁のある土には細菌がいっぱい存在しています。土に触ったり、靴や用具を触っているでしょうから、運動後の手洗いは必須なのです。

 疲労しやすい夏の運動。健康的に運動するために、いつも以上に準備と心構えが大切となります。
2011年07月 掲載
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