セルフメディケーションを実践のための200テーマ

長阪裕子(セルフメディケーション推進協議会会員)

45. 身体と心をほぐす運動? ―アクティブレストを知っていますか?―


  少しずつ夏から秋に変わる気配を感じる昨今、皆様、夏疲れはでていませんか?夏の酷暑のために睡眠不足が続いたり、食生活が乱れたりして、無気力感や集中力低下、疲労感などが現れていませんか?

 この現代社会においては、夏疲れだけでなく日常的な疲れを訴える方が多くいます。当院の患者さんにも、「毎日、仕事や子育てで疲れていて、運動どころじゃない。」と話す方がいます。誰だって、疲れている時に「それでも頑張って運動をしよう!」という気にはなりにくいものです。

 しかしながら、疲れを感じた時にゴロンと横になって過ごすよりも、身体を軽く動かした方が、疲れが早く取れることがあるのをご存知ですか?前回お話した 頑張らない運動筋肉を緩める運動身体ほぐし運動 がそれです。そこで、今回は身体と心をほぐす運動について少しだけお話したいと思います。

ご存知ですか?疲れた時に『アクティブレスト』
 皆さんは、「アクティブレスト(Active Rest)」という言葉を聞いたことがありますか?日本語に訳すと「積極的休養」。アクティブに活動しながら心身のリフレッシュを図るという考え方です。わかりやすく言うと、疲れている時にあえて身体を軽く動かすことで血液循環を促し、疲労回復を早める休息方法です。

 アクティブレストは、健康づくりの場面では認知度が低い言葉ですが、スポーツ界では既に取り入れられています。身近な例えでは、クールダウン(整理運動)がそれです。主運動の後に安静にした場合と軽めの運動をした場合では、後者の方が疲労物質である乳酸が早く除去されることや、軽い運動をすると痛みを和らげたり幸福感をもたらす脳内の化学物質(エンドルフィンなど)が分泌されることなどが科学的に証明されつつあります。また、サッカーやラグビーなどの試合の翌日、完全に安静に過ごした場合と水中運動やストレッチングなどをした場合では、後者の方が疲労感がなくなり、心身のコンディションが良いことも報告されています。

使った筋肉と同じ筋肉をほぐすことがポイント!
 では、具体的に健康づくりの場面でのアクティブレストについて考えてみましょう。例えば、パソコンなどデスクワークを長時間している人は、肩〜背中〜腰周囲の筋肉が低強度で持続的に緊張し続けています。すると血液循環の不良や筋肉内に疲労を蓄積させて、肩コリや腰痛などの原因になることがあります。痛みを感じなくとも、何となく疲れを感じる人も多いと思います。そこで、肩が疲れたと感じたら首や肩を回したり、胸や背中のストレッチング、両手を挙げて伸びなどをしてみて下さい。すると、不思議と身体がちょっと軽くなったり、気分がスッキリするのを体感されると思います。

 アクティブレストの基本は、使った筋肉と同じ筋肉を軽く動かして血液循環を促すことです。具体的な方法としては、ストレッチングや有酸素運動、水中運動、マッサージ、アイシングなどが行われています。長時間座って腰がだるく感じたら、腰のストレッチングをしてみるのも良いでしょう。立ち仕事などで脚が疲れたと感じたら、ふくらはぎのストレッチングやかかとの上げ下げ、仰向けになって両足を挙げてブラブラ〜と揺らすのも良いと思います。

 さらに、イライラや落ち込んだ気分などの疲労感のある人は、休みの日に、晴れていれば自然の中をゆっくり散歩したり、雨が降っていればプールに行ったり、室内で笑いながら身体を動かすゲームなどをするのも良いと思います。このような運動をすると、ストレスの緩和を助ける脳内の化学物質が分泌され、心の疲れをとるのに効果的だからです。特に、水の中では浸っているだけでも様々な効果があるので(9.水の中ってすばらしい)、プールや入浴はおすすめです。

 数年前の国内調査結果によると、運動を習慣化していない方は、「運動すると疲れる、筋肉や関節が痛くなる」などと運動に対して否定的なイメージを多く持っていたことが報告されました。「アクティブレスト」という考え方が広く知れ渡れば、運動の幅が広がり、良いイメージを持たれる方が増えるかもしれませんね。

 ただし、単なる疲労だと思っていても貧血や低血圧、肝臓の疾患や糖尿病などの病気が原因の場合もありますので、おかしいと思ったら我慢せずに受診して下さい。
そして、日頃の健康診断もお忘れずに!
2011年09月 掲載
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