セルフメディケーションを実践のための200テーマ

長阪裕子(セルフメディケーション推進協議会会員)

48. 身体と心をほぐす運動? ―リズムにのって楽しく心地よく―
 今年も残すところあと1ヶ月、街中はイルミネーションが輝き始めました。例年はクリスマスに伴う全国各地のイルミネーションも、今年は東日本大震災の復興を祈念する希望の灯りとして行われるところが多いようです。

 仙台の冬の風物詩「SENDAI光のページェント」や「三陸イルミネーション」など被災地でも犠牲者への鎮魂を込めるとともに、街の復興と被災者の夢と希望を願って開催されるそうです。素敵なイルミネーションで心を癒されながら、被災された皆様の心穏やかな日が1日も早く来ることを心より願いたいと思います。

 さて、街中ではイルミネーションと共にクリスマスソングも耳にします。 ♪ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る〜♪ この音楽を聴いた時、皆さんはどんな気持ちになりますか?ウキウキと心が弾み、スキップしたり、足踏みしたり、手拍子したくなりませんか?

音楽のリズムは身体の動きのリズムを引き出す!
 音楽のリズムと同様に、運動にもリズムがあります。例えば、「歩く」「走る」という動作は、1・2・1・2とステップを踏みます。タンタンタンタン(♩♩♩♩)とゆっくりなら「歩く」、タタタタ(♪♪♪♪)と速くなると「走る」ことになります。また、タッタタッタタッタタッタと不均等なリズムでステップを踏めば、スキップやギャロップ(馬の駆け足のような)になります。

 運動会などで耳にするマーチ(行進曲)は、歩速を合わせて行進するように演奏される曲で、116〜120BPM(Beat per minutes:拍/分)の速さでタンタンタンタンとビートを規則正しく刻みます。マーチを耳にすると、不思議と歩きたくなるでしょう。マーチのリズムによって歩きのリズムが引きだされる、聴覚刺激が神経回路を経て運動神経回路に働きかけるためとも考えられています。
音楽リズムによる運動への効果
 近年、音楽を聴きながら運動をすることの有効性が科学的に証明されつつあります。ロックやポップスの音楽を聴きながら歩くと、運動の持続時間を約15%長くすることが可能であることや、運動実施後の運動に対するイメージがより良くなることが報告されました。なかなか運動が続かない方や、あまり運動が好きではない方、義務で運動をする方には、お気に入りの音楽を聴きながら運動するのは自然と動きが引き伸ばされて良いかもしれません。運動が愉しみに変わるかもしれませんね。

 また、ゆっくりでソフトな音楽を聴きながら運動をすると、発揮する力の強さが弱まることや、ヴィヴァルディの「四季」を聴きながら歩いた後は、脳の認知機能が向上したことも報告されました。科学的根拠は未だ十分とは言い難いですが、音楽刺激による身体活動への反応は脳神経系が関係しているようで、更なる研究成果が期待されます。
さぁ音楽を聴きながら運動しよう!
 いずれも、音楽により身体的な効果を引き出すためには音楽なら何でも良いわけではなく、適した音楽が必要であることが示唆されています。速く激しい音楽の場合は身体の動きも速く激しくなり、ゆっくりソフトな音楽の場合はゆっくりソフトな身体の動きを導きだすということです。

 一般的に、運動のために少し速歩きするなら120BPM前後、ご高齢の方やゆっくり歩きたい時は100〜110BPM、軽く走るなら140BPM以上、マラソンなど本格的な持久走トレーニングでは160BPM以上の規則正しいビートを刻む音楽が良いでしょう。常に一定のリズムを刻む音楽を利用することで、ペースをコントロールすることができます。最近では、走るペースに合わせて適した音楽を選択できる専用の音楽配信サイトもあります。

 また、こういったリズミカルな運動はストレスの緩和に効果的だと言われています。その理由として、ベータエンドルフィン(幸福感や快感などに深く関わるホルモン)やドーパミン(やる気や興奮、快感に関わるホルモン)、セロトニン(興奮しすぎた脳を鎮めて幸福感をもたらすホルモン)などの神経伝達物質の分泌によることも報告されています。

 私は大掃除をする時、お気に入りの明るいポップス音楽をかけます。すると、とてもテンポよく身体が動き、お掃除が愉しくはかどります。これから大掃除を行う皆さんにお薦めです!そして、知らず知らずに力が入ってしまったり、心身ともにリラックスしたい、疲れをとりたい時は、ゆっくりソフトな優しいリラクゼーションミュージックを聴きながら、ストレッチングなどアクティブレストをするのがお薦めです。

 皆さんも、日常の生活活動や運動に、お気に入りの音楽を取り入れてみてはいいかがですか。
2011年12月 掲載
■テーマ
1. オリンピック年こそニコニコペースで   福田千晶
2. 特定健康診断、保健指導スタート! 準備はOKですか?   菅野 隆
3. いよいよ花粉シーズン到来!そんなときこそ‘気づき’の運動を!   長阪裕子
4. 知っておきたい健康の雑学:運動習慣と糖尿病予防   福田千晶
5. メタボ解消の簡単日常運動法!   菅野 隆
6. あなたに合った運動とは? 続けられる運動こそが効果的!   長阪裕子
7. 熱中症の対策 ウエア選びと水分補給   福田千晶
8. 夏だ!街中を実用サイクリングで、エコに、爽快ダイエット!   菅野 隆
9. 水の中ってすばらしい!   長阪裕子
10. スポーツの秋には腹筋強化も   福田千晶
11. 引き締め効果抜群の「2ステップ3D法」のすすめ!   菅野 隆
12. 糖尿病に効く運動―食後運動のすすめ―   長阪裕子
13. 大掃除でエクササイズ   福田千晶
14. 痛みや不定愁訴の70%は簡単運動でらくらく解消!   菅野 隆
15. 科学的根拠に基づいた糖尿病の運動療法   長阪裕子
16. 花粉症シーズンの運動のワザ   福田千晶
17. 「ストレス」や「こころの病い」への運動、リラクゼーションの効果   菅野 隆
18. 太っている人と痩せている人の驚くべき運動以外の消費エネルギーの違い   長阪裕子
19. 健康運動にもサングラスを   福田千晶
20. 積極的「身体活動」のすすめ(気持ちよく体を動かしましょう!)   菅野 隆
21.着けるだけで身体活動量アップ!? -歩数計の活用-   長阪裕子
22.登山、アウトドアスポーツの注意   福田千晶
23.秋のダイエット大作戦!   菅野 隆
24. 朝に運動をする方・したい方へ   長阪裕子
25.冬の運動は、こんな注意を   福田千晶
26.筋トレ生活習慣化のすすめ!〜大事な筋肉に習慣的に負荷をかけて、自己身体管理してますか?〜   菅野 隆
27. トレーニングの原理・原則を知って、効果的な運動を!   長阪裕子
28.生活習慣病を有す人の運動で注意したいこと   福田千晶
29. しなやかで柔軟な身体をつくる ストレッチ!   菅野 隆
30. メタボ対策と一緒に「ロコモ」対策も始めませんか!   長阪裕子
31.ロコモティブシンドロームは健康寿命を延ばす?   福田千晶
32. 自分の「歩き」を、とことん研究してみる!   菅野 隆
33. 自分の体力をご存知ですか?体力テストにチャレンジ!   長阪裕子
34.メンタルな不調に運動療法   福田千晶
35. 即効、肩こり解消エクササイズ!   菅野 隆
36. 運動は禁煙にも効果的!   長阪裕子
37.花粉症治療で知っておきたいインペアード・パフォーマンス   福田千晶
38.毎日の身体活動の基本、「足」のメンテナンス!   菅野 隆
39. 女性からはじまる健康づくり運動を!   長阪裕子
40. みんなで運動し、心も体も元気になろう!集団運動指導の注意点   福田千晶
41. 普段から「非常時」に備えたセルフケア、健康運動を!   菅野 隆
42. がんばろうニッポン! 運動はがんばる?がんばらない?   長阪裕子
43. 夏の運動時、健康管理の注意点   福田千晶
44. お腹引き締め、ダイエットに効果的な筋力トレーニング!   菅野 隆
45. 身体と心をほぐす運動? ―アクティブレストを知っていますか?―   長阪裕子
46. 運動後の入浴について考える   福田千晶
47.有酸素運動はウォーキング派?サイクリング派?   菅野 隆
48. 身体と心をほぐす運動? ―リズムにのって楽しく心地よく―   長阪裕子
49.しなやか物質   福田千晶
50. お勧めの「お家中運動」、ホームサーキットトレーニング!   菅野 隆
51. 心と身体をほぐす運動(3)―気がつかないで緊張していた筋肉をほぐす―   長阪裕子
52. マラソンは健康に良いか、悪いか   福田千晶
53. 呼吸法でダイエット!呼吸をもっと活用しましょう!!   菅野 隆
54. 熱中症を予防して、快適な運動を!   長阪裕子
55. 夏の健康管理は生活の知恵を活用!!   福田千晶
56. 「コンビ・ウォーク」完成!オリンピック(スポーツ)と健康運動(日常)   菅野 隆
57. 安全な運動で快適に「スポーツの秋」を楽しもう   長阪裕子
58. 老化の原因の一つ「糖化」を予防する運動   福田千晶
59. ロコモ、メタボ解消から美容、若返りまで、「チューブ筋トレ」!   菅野 隆
60. ニート(NEAT)を増やす意外な方法   長阪裕子
61.運動の継続は健康の源。1日10分間でも20年間には計1000時間、差が出て当たり前!?   福田千晶
62. 他分野のエッセンスを取り込んだ身体調整健康運動   菅野 隆
63. 最終回:夢をもって続けよう健康運動   長阪裕子