セルフメディケーションを実践のための200テーマ

長阪裕子(セルフメディケーション推進協議会会員)

51. 心と身体をほぐす運動(3)―気がつかないで緊張していた筋肉をほぐす―
 この連載の第42回で、筋肉は弾力性が大切だと述べました。緊張と弛緩をスムーズにコントロールできることが筋肉には重要なのです。働かせたい筋肉を緊張や弛緩させる練習は、筋力トレーニングやストレッチングなどでできます。しかしながら、私たち現代人は気がつかないで筋肉の緊張を強いられていることが多くあります。そこで、今回はそんな筋肉の緊張をほぐす(弛緩させる)方法をいくつかご紹介します。
気がつかないで緊張していませんか?
 近年、首こりや肩こり、腰痛などを訴える方が多くいます。社会がコンピューター化されてパソコンと向かい合う時間が増え、重心が崩れたまま同じ姿勢を長時間続けたり、パソコンのキーを打つのに肩に力が入りすぎていることなどが一因ともいわれています。

 毎日の生活の中でも何かに集中している時を思い浮かべてください。通話中や携帯メールを打っている時、力いっぱい受話器や携帯電話を握りしめていませんか?

 また、困ったり悩んだり不安そうな顔をしてみてください。眉間にしわがより、肩が上がったり、猫背になりませんか?これは、眉間にある皺眉筋(しゅうびきん)や、首から肩、背中にかけてある僧帽筋などが緊張しています。悔しい時には奥歯を噛みしめている事もあるでしょう。

 つまり、日々の姿勢や心の状態によって、気がつかないで筋肉が緊張していることがあり、それに気づくことが緊張をほぐすための第1歩です。

重心を整えて、坐骨で座ろう
 今、皆さんはどんな姿勢で座っていますか? 椅子に浅く腰掛け、背筋を伸ばし、両手をお尻の下に入れてみてください。すると硬い骨があります。お尻を前後左右に動かすと、掌にゴリゴリと骨を感じるでしょう。それらが坐骨です。坐骨は「座る骨」と書きますから、本来、座るときに土台となる骨です。

 しかしながら、椅子に座ってパソコン作業をしていると、最初は姿勢を正して座っていても、段々と腰が曲がったり、パソコンの画面に顔を近づけるために首が前に倒れたりします(図1)。重心が前方向に移動してバランスが崩れた姿勢になります。物の場合は、バランスが崩れると倒れやすいですが、人間の場合はそれを倒れまいと筋肉が引っ張って(緊張して)支え、姿勢を維持しようとします。気がつかないで筋肉が緊張しているのです。

 筋肉が持続的に緊張すれば、疲労して「重い」「疲れた」「痛い」といった首こり、肩こり、腰痛など引き起こしやすくなります。同時に、胸郭が狭くなって呼吸が浅くなったり、内臓が圧迫されて機能が低下することもあります。

 そろそろ、お尻の下に手を入れて坐骨をゴリゴリ触った手を、そっと離してみてください。すると、不思議!なんだか、お尻がドーンと椅子に着いて安定感があるように感じると思います。骨盤が垂直になって坐骨で座り、余分な筋肉の緊張がほぐれた状態、重心線がまっすぐ上に伸びて安定した姿勢になります(図2)。

寝る前に1日分の余分な緊張をほぐす練習を
 1日の疲れをとるためにも、寝る前に、身体を締め付けない楽な服装で、余分な緊張をほぐす練習をすることをお勧めします。仰向けになり、両手の甲を床に着けて身体の横に置き、身体と床との接触状態や自分の呼吸をチェックしてみてください。

 できれば、ふかふかの布団やベッドより、カーペットや畳、床などの少し固めの上の方がわかりやすいと思います。例えば、肩〜背中周囲の筋肉が緊張している人は肩甲骨が床から離れていたり、床に接している面積が小さいかもしれません。また、左右差があるかもしれません。身体がリラックス状態にあり、余分な筋肉の緊張がほぐれていると、床との接触面積が大きくなってきます。

  • 腹式呼吸で、余分な緊張をほぐす練習
    仰向けのまま下腹部に手を置き、息を吸いながら下腹部を膨らませ、ゆっくり吐きます。床に身体全体をあずけるようなイメージで、奥歯を開いて力を抜き、できるだけ細く長く吐きます。眉間のしわは伸びていますか?下腹部が動くのを確認しながら、ゆっくりと3〜4回繰り返します。呼吸や気持ちが楽になったり、余分な緊張がほぐれてリラックス状態になったら成功です。

  • 肩甲骨周りの筋肉の余分な緊張をほぐす練習
    肩こりの予防や解消に、ゆっくりと肩を回したり、肩を耳に近づけて(首をすくめて)からハッと力を抜く(肩を下ろす)運動は有名ですね。これらは、肩甲骨周りの筋肉を動かして血液循環を良くしたり、筋肉の余分な緊張をほぐすための運動です。そこで、寝ながらできる私のお気に入り肩回し運動(図3)を紹介します。

 力を抜いたリラックス状態で、ゆっくりと行ってください。重力や腕の重みを感じながらやると良いです。肘は軽く曲げて、指先は床に触れながら動かすのが良いですが、途中で離しても良いです。また、途中で痛みなどを感じた時は、肘を曲げたり床から指先を離して痛くない動きや軌道を探すのも手ですが、痛みのない動きが見つからない場合は中止してください。

 あくまでも、リラックスして気持ち良い動きである事が大切です。片側を数回繰り返したら、仰向けになり床との接触状態をチェックしてください。上手く筋肉の緊張がほぐせれば、肩甲骨周りの床との接触面積が大きくなっているかと思います。チェックし終わったら反対側もゆっくり行ってください。数回終わったら、再度仰向けで床との接触状態をチェックします。

 いかがですか? 何か変化はありましたか?

2012年03月 掲載
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