セルフメディケーションを実践のための200テーマ

福田千晶(セルフメディケーション推進協議会理事)

58. 老化の原因の一つ「糖化」を予防する運動
 現在知られている老化やさまざまな病気を引き起こす原因はいくつかありますが、その代表的なものは「酸化」と「糖化」です。今回は、健康問題を考える上で最近しばしば話題になる「糖化」について考えてみましょう。
糖化とは?
 糖化とは、たんぱく質が糖によって変性することです。体内では、筋肉をはじめたんぱく質でできているものがいろいろあります。それらのたんぱく質が、血流で全身に運ばれる血液とともに存在する糖により変化することが「糖化」です。

 さらに体内のたんぱく質は体内で使いきれない糖と結合して、その後にいくつかの反応を経て異常たんぱく質である「糖化最終生成物(AGEs)」が生成されます。このAGEsは、体内で正常なたんぱく質の働きは出来ず、蓄積されて体内で悪影響を及ぼします。代表的なこととしては、肌のたるみやシワなどの老化、動脈硬化、脳の老化、骨粗鬆症をはじめさまざまな部位でAGEsの悪影響が現われます。病気の原因や誘因になったり、老化の進行を早めたり、AGEsは健康の大敵の一つなのです。

糖化の予防
 糖化の予防にまず大切なことは、食事と運動です。食事は、血糖値を急に上げないようにする食べ方がポイントです。大食や炭水化物の多い食事を避けて、野菜を多く摂り、しかもやしから食べ始めることも大事です。

 糖化を予防する運動は、有酸素運動であり、ウオーキングなどはお勧めの運動です。体内の糖化を予防するためには、全身の細胞内の糖とそこに糖を運んでいる血液中の糖を必要以上に増やさないことが大切です。

 血液中の糖を下げるだけなら膵臓から分泌されるインスリンが効果的です。しかし、インスリンは血液中の糖を筋肉細胞などに移動させて、血糖を減らしています。ですから、インスリンでは細胞の中の糖は減らせません。インスリンが十分に分泌されていたり、血液中にインスリンがたくさん存在するだけでは、糖化の予防にはならないのです。細胞内と血液中と両方の糖を下げて、糖化を予防するには、有酸素運動が効果的です。

有酸素運動を
 特に食後1時間後くらいの血糖値が上がってきたころに歩くなど有酸素運動で糖を使ってしまえば、血液中にも糖は余りません。必要以上の高血糖にならないので、インスリンが過剰に分泌もされません。上手に血液中の糖を減らし、細胞に多く移動させるほどの糖も余ってはいないのです。

 有酸素運動は糖化の予防になります。しかし、無酸素運動は糖化の予防に関しては、あまり効果が無いと考えられています。まだ不明な点もありますが、無酸素運動では運動することにより筋肉細胞内で老廃物の乳酸ができます。この乳酸はやがて再び糖に変えられることがあります。

 肝臓で糖新生という働きにより、一部のアミノ酸や乳酸からも糖を作ることができます。ですから、無酸素運動を行いすぎて乳酸がたくさんできてしまうとその乳酸が肝臓で糖に再生されるため、ときにあまり体内の糖は減っていないこともありえます。

 将来的には、どの程度の有酸素運動を何分間続けると糖化予防に効果的であるなどという研究結果も現われることでしょう。もしくは、無酸素運動でも運動の仕方によっては、糖化予防にとても効果的であるというような、研究結果が出てくるかも知れません。今後の研究の発展に期待したいものです。

 料理をする人は体験があるかもしれませんが、肉に砂糖をまぶして揉みこむと柔らかくなります。砂糖やハチミツに漬け込んだり、すき焼きのように砂糖を入れて調理することで、肉のたんぱく質はコラーゲンが伸びたり切れたりしますが、一度そうなると、元に戻りません。 体内でも、糖化してしまった部分は元に戻らないと言われています。ですから、糖化対策の有酸素運動も、先延ばしにせず、今日から実行したいものです。

 その方法の一つとして、日々の暮らしに積極的に有酸素運動を入れましょう。運動習慣のある人は、上手に有酸素運動を取り入れて生涯を通じて継続したいものです。運動する時間がないと嘆く人は、生活の中で「コンビニにいくときは、いつもより遠い場所にあるコンビニに行く」とか「休日は2駅分くらい散策しながら図書館まで歩く」「卓球やテニスを始める」などと、気楽に動く機会を増やしましょう。脚に負担をかけられない人は、水中ウオーキングや水泳も室内プールなら寒い季節も行えます。

 まさに、むずかしく考えずにまず動く、それが「やってみよう健康運動」のコツとも言えますね。

2012年10月 掲載
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