セルフメディケーションを実践のための200テーマ

長阪裕子(セルフメディケーション推進協議会会員)

60. ニート(NEAT)を増やす意外な方法
 寒くなると、外に出るのが億劫になりますね。一般的に、寒くなると身体活動量が減ってしまう方も多いようですが、身体活動量の不足は健康を害してしまうこともありますので注意しなくてはなりません。
 さて、皆さんはニート(NEAT)をご存知ですか? 以前、バックナンバー No.18で取り上げましした。特別な運動ではない日常生活活動の中で使われる小さなエネルギーのことです。
 そこで、日常生活動作のちょっとした変化で、少しでもニートを増やす3つのルールを提案したいと思います。
ルール1:ぬき足、さし足、忍び足ウォーク
 
 皆さんは自分や他人の足音を聞いたことありますか? ドンドンと大きな音がする方もいれば、全く足音のしない方もいます。また、脚の怪我をしている人や、左右の脚筋力が異なる方、重心が片側に偏っている方などは、左右の足音が違っていることもあります。この足音の違いはなんでしょうか? もちろん、靴の裏の素材にもよりますが、実は歩いている時の脚の筋肉の使い方による可能性があります。

 例えば、脚の筋力が弱く足がストンと落ちてしまうと、大きな足音になります。そこで、できるだけ足音をさせないように、そっと足を地に下ろそうとしてみてください。すると重力に逆らって脚の筋肉が使われます。

 解剖学的には「脚」は股関節からつま先までを示します。「足」は足首からつま先までです。脚にもたくさんの筋肉があり、強調して「歩く」という動作を行っています。もちろん脚の一部でもある「足」にも小さい筋肉がたくさんなります。

 「歩く」ことを意識して、まずは丁寧に歩いてみましょう。脚の筋肉、足の筋肉を十分に使うことで、同じ距離を歩いて移動するのでも、筋肉の仕事量が増やせます。そして、消費するエネルギーも増加します。スローウォーキングが勧められる理由の一つがこれです。「ぬき足、さし足、忍び足」と声をかけながら、足音をさせないようにそっと歩いてみてはいかがでしょうか?

 さらにその歩き方は、体の重さを筋肉がしっかり支えてくれるため、膝や股関節などに負担がかかりにくいので、膝痛、股関節痛の予防にもつながります。

ルール2:いつでもお腹はへこまして
 へその下に両手をあてて、ゆっくり息を吸ってください。すると、お腹がへこむでしょう。お腹がへこんだまま息を吐いてみてください。できましたか? わかりにくい方は、お尻の穴をしめるようにすると、できると思います。

 下腹をへこましたまま、日常生活を送ると腹筋群が小さく使われます。一般的に、ついつい力が抜けやすい筋肉で、悪い姿勢を作る原因とも考えられています。したがって、下腹部を意識してへこましておくだけで姿勢が良くなったり、悪姿勢が原因の腰痛が改善することもあります。

 家でテレビを見ているとき、デスクワークのとき、退屈しそうな会議や授業中、電車やバスで座っているときなど、お腹をへこませることをやってみます。コツが分かりなれてきたら、立っているときにも、歩いているときにもお腹をへこませるように心掛けましょう。

ルール3:椅子に座ったら脚を閉じて
 「ミニスカートを履くと脚が細くなる」という説を耳にしたことはありませんか? ミニスカートを履くと、特に椅子に座る時など脚を閉じるでしょう。脚を閉じたままでいると内腿の筋肉が使われてシェイプアップされるため、こんな説が生まれたと考えられます。

 この内腿の筋肉もついつい力が抜けやすい筋肉で、電車などで座っている人たちを見ていると脚は開いたまま、つまり内腿の筋肉が緩んだままの方が多くいます。

 テレビに出ているアナウンサーやモデル、飛行機の客室乗務員などは、椅子に座った時はきちんと脚(膝)を閉じています。きれいでしょう。皆さんも椅子に座ったら脚を閉じるようにすると、内腿の筋肉が使われるだけでなく、きれいに見えますよ。

 脚を閉じると自然に、背筋も伸びます。さらに不思議なことに、口角がきゅっと上がり引き締まった笑顔になります。心地よい緊張感のある姿勢や表情もできあがり、心もからだも引き締まって良い一日が過ごせるでしょう。

 いずれのルールも、関節に痛みが生じたら中止してくださいね。

2012年12月 掲載
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