セルフメディケーションを実践のための200テーマ

村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)

8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
 今年は梅雨に入る前から、雨が多いようです。高温、多湿は日本の夏を象徴しています。水虫もこの季節になるといつも話題になります。

 水虫は白癬菌という真菌が皮膚の角質部位で繁殖することによって発症します。予防は皮膚を清潔にして、乾燥させておくこととされますが、この単純なことがなかなかできないから厄介です。それに、梅雨どきにも靴下をはいて、靴をはくという現代社会はオフィスに働く人々には条件が悪すぎます。

 さて、いったん白癬菌にとりつかれると、駆除(治療)がまたてこずります。この菌は角質層の中にいるので、薬を塗ってもそれが菌のいる場所にいかないと効きません。成分も大事ですが、浸透性や使い方―根気よく続けるということがポイントなのです。
水虫用薬の特徴
 原因である白癬菌を死滅させるのが目的ですから治療薬です。相手は菌ですから、薬によって死滅しても生き残った菌が再び増殖してきますから、辛抱強く続けて完全に勝つまで行うことが必要です。また、菌は角質の中にいますので、“薬がそこへ到達出来るか”という問題があります。

 医療用では内服や注射によって身体の中から攻める方法の薬もありますが、OTCはすべて外用薬です。外用薬は剤形によって違いがあり、患部の状態によって選ぶことも大切なポイントになります。

 外用薬は内服や注射と違って、量よりも濃度が重要なのですが、水虫に使う成分の濃度は医療用とOTCで同じです。言い換えると、医療機関(病院や皮膚科医院)で処方してもらう「治療薬」とほぼ同じくすりを薬局、薬店で入手できます。セルフメディケーションの絶好の領域でもあるのです。薬と菌がバトルを展開する中で、薬の効果を高めるためには環境を整備して応援しましょう。ポイントは、まめな洗浄と乾燥です。
水虫薬の成分にはどんなものがあるか
 もちろん主役(主薬)になるのは“抗白癬菌成分”といわれる成分です。イミダゾールという化学構造を有する一連の物質がこの作用を有します。クロトリマゾールという医療用で実績のある薬がスイッチOTCとして市販薬になって以来、この系統の「新薬」が次々と市販薬としても使用されるようになりました。硝酸ミコナゾール、硝酸エコナゾール、硝酸オキシコナゾール、塩酸ネチコナゾール、チオコナゾールなどです。イミダゾールと違った骨格を有するものとしてはベンジルアミン系の塩酸ブテナフィン、モルホリン系の塩酸アモロルフィリンもスイッチOTC薬で薬剤の貯留が長いため1日1回でよいとされます。この他にも、トルナフタート、ビホナゾールなどがあります。

 水虫になるとかゆみがともなうことが多く、またただれた患部に別の細菌感染が発生したりするので、脇役としてかゆみ止め成分としてクロタミトン、抗ヒスタミン薬、局所麻酔成分として塩酸リドカイン、塩酸ジブカインなどが配合されている薬もあります。殺菌・消毒成分や炎症止めの成分を配合しているものもあります。
どのようにして薬を選ぶか
 主薬の成分は確かに特徴や試験による効果の違いはありますが、それが「あなたの水虫」にその通り適用されるかというと、そうとは限りません。効力を示す数値は試験管の中での成績で、実際には患部の状態や剤形による影響が大きく関与するからです。患部の状態では乾いている場合は液剤や噴霧型のもの、硬い角質には軟膏・クリームも適します。じくじくした状態では、散剤や軟膏・クリームを使います。

 少し乱暴に聞こえるかも知れませんが、剤形を含めて気に入ったあるいは相談して選んだ薬をしばらく続けることだと思います。合わないと思ったら変更しても構いませんが、特別に不都合がなければあまり変えることは感心しません。しつこい敵にはしつこく挑戦することが秘訣だからです。かゆみなどの症状がひどいようなら、薬剤師にきいてそれに適する成分が配合されているか確認して選びましょう。

 先にもいいましたが、この領域のOTCには医療用から転じた“スイッチOTC”という、医療用と同じ成分、同じ濃度の製品が多く、疾病と戦う「武器」としては頼りになります。「新薬」とか「新しい挑戦」とか刺激的なキャッチコピーに惑わされないで、“わたしの水虫”に合う薬を選んでください。

 よく一般の方は薬を選ぶとき、「○○社の△△の薬」といって探したり、聞いたりされます。水虫の薬は非常に種類が多く、同じメーカーから主薬成分の違う製品が出ています。また、「□□□□----」と同じ名前が付いていても、後の名前や記号によって成分が違うものがありますので注意してください。
薬を使う上での注意事項
 水虫に使う外用薬としてのOTCは成分も濃度もほぼ同じとうことは、OTCだから“弱い薬”だなどと甘く考えないでください。むしろ、きちんと使うことによってセルフメディケーションはできるという自信につなげてほしいのです。まず、使い方を間違えないことです。液剤や噴霧型のものは「目薬」と間違う危険があります。あなたが気をつけるのは当然ですが、家庭にはお子さんやお年寄りがいらっしゃる場合も多いでしょう。メーカーが注意表示に工夫をしても、見ない、読めない方の危険を防ぐのは管理をしっかりして頂くほかありません。

 使ってみて、“しみる”とか“かえって悪くなった”などは成分によるより製剤成分によることが多いと思います。使用をいったん止めて、薬剤師に相談してください。説明書に書いてある皮膚の異常―程度にもよりますが、かゆみ、熱感、水泡などが起きたら使うのを止めて相談することです。

 水虫との戦いは長期戦といいましたが、まずメドを2週間として、なんの効き目もなかったら薬局で相談するか、医師の診察を受けてください。水虫とばかり思い込んでいたのに、実は原因は別だったということもまれではありません。

主な水虫用薬一覧  注:“-”は該当なし
抗白癬菌成分かゆみ止め成分局所麻酔成分殺菌・消毒成分その他の成分製品名販売会社剤形
クロトリマゾールクロタミトンリドカイン-l-メントールスコルバ液武田薬工液剤
クロトリマゾールクロタミトンリドカイン-l-メントールスコルバ武田薬工噴霧剤
クロトリマゾールクロタミトンリドカイン-l-メントールスコルバクリーム武田薬工クリーム剤
クロトリマゾール-リドカインクロルヘキシジン酸化亜鉛タムチンキパウダースプレーB小林製薬粉末・噴霧
クロトリマゾール-リドカインクロルヘキシジン酸化亜鉛ミズムズ小林製薬粉末・噴霧
硝酸エコナゾール-リドカイン-グリチルレチン酸新ポリカイン液大鵬薬品液剤
硝酸エコナゾール塩酸ジフェンヒドラミンリドカイン-グリチルレチン酸新ポリカインクリーム大鵬薬品クリーム剤
硝酸エコナゾール塩酸ジフェンヒドラミンリドカイン-グリチルレチン酸新ポリカインスプレー大鵬薬品噴霧剤
硝酸エコナゾールクロタミトン・ジフェンヒドラミン--グリチルレチン酸・l-メントールデシコートエコ液湧永製薬液剤
硝酸エコナゾールクロタミトン・ジフェンヒドラミンジブカイン-グリチルレチン酸・l-メントールデシコートエコクリーム湧永製薬クリーム剤
硝酸オキシコナゾールクロタミトンリドカイン-l-メントールスコルバLX武田薬工噴霧剤
硝酸オキシコナゾールクロタミトンリドカイン-l-メントールスコルバLX液武田薬工液剤
硝酸オキシコナゾールクロタミトンリドカイン-l-メントールスコルバLXクリーム武田薬工クリーム剤
硝酸オキシコナゾールクロタミトンリドカイン塩化ベンザルコニウムl-メントールスコルバLXパウダーイン武田薬工液剤
硝酸オキシコナゾール----ベンハーEX液エスエス製薬液剤
硝酸オキシコナゾール----ベンハーEXクリームエスエス製薬クリーム剤
硝酸ミコナゾール----ダマリン大正製薬液剤
硝酸ミコナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルリチン酸二カリウムダマリンL大正製薬軟膏
硝酸ミコナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルリチン酸二カリウムダマリンL液大正製薬液剤
硝酸ミコナゾール-リドカイン-サリチルリチン酸二カリウムダマリンL液ハイ大正製薬液剤
硝酸ミコナゾール-リドカイン-グリチルリチン酸二カリウムダマリンLハイ大正製薬軟膏
硝酸ミコナゾール-リドカイン-グリチルリチン酸二カリウムダマリンスクールスプレー大正製薬噴霧剤
硝酸ミコナゾール-リドカイン-アラントインダマリンスクールパウダー大正製薬粉末・噴霧
硝酸ミコナゾール-リドカイン-グリチルリチン酸二カリウム・アラントインダマリンパウダースプレー大正製薬粉末・噴霧
硝酸ミコナゾール-リドカイン-グリチルリチン酸二カリウム・メントールダマリンアイススプレー大正製薬噴霧剤
硝酸ミコナゾール-リドカイン-グリチルレチン酸ポリックM明治製菓液剤
硝酸ミコナゾール-リドカイン-グリチルレチン酸ポリックMクリーム明治製菓クリーム剤
硝酸ミコナゾールジフェンヒドラミンリドカイン-グリチルレチン酸ベスメント(液)日水製薬液剤
硝酸ミコナゾールジフェンヒドラミンリドカイン-グリチルレチン酸ベスメント(クリーム)日水製薬クリーム剤
塩酸ネチコナゾール----アトラントエース液エスエス製薬液剤
塩酸ネチコナゾール----アトラントエースクリームエスエス製薬クリーム剤
硝酸スルコナゾール塩酸ジフェンヒドラミンジブカイン-l-メントールエクシブ100液ロート製薬液剤
硝酸スルコナゾール塩酸ジフェンヒドラミンジブカイン-l-メントールエクシブ100スプレーロート製薬噴霧剤
硝酸スルコナゾール----エクシブクリームロート製薬クリーム剤
チオコナゾールジフェンヒドラミンリドカインイソプロピルメチルフェノールグリチルレチン酸・l-メントール尿素新ストレイタスUファイザークリーム剤
チオコナゾールジフェンヒドラミンリドカインイソプロピルメチルフェノールグリチルレチン酸・l-メントール尿素新ストレイタスU液ファイザー液剤
塩酸アモロルフィン----ダマリンエース大正製薬軟膏
塩酸アモロルフィン----トークル杏林製薬クリーム剤
塩酸ブテナフィン----スコルバダッシュ武田薬工噴霧剤
塩酸ブテナフィン----スコルバダッシュ液武田薬工液剤
塩酸ブテナフィン----スコルバダッシュクリーム武田薬工クリーム剤
塩酸ブテナフィン----ブテナロッククリーム久光製薬クリーム剤
塩酸ブテナフィン----ラマストンMK液佐藤製薬液剤
トルナフタート塩酸ジフェンヒドラミンリドカイン-グリチルレチン酸他アスターG軟膏丹平製薬軟膏
トルナフタート-ジブカイン-グリチルレチン酸、フタル酸ジエチルコザックエアゾール全薬工業噴霧剤
トルナフタートクロタミトン--木槿皮チンキ、サリチル酸サイクルA液カネボウ薬品液剤
トルナフタートクロタミトン--木槿皮チンキ、サリチル酸サイクルA軟膏カネボウ薬品軟膏
トルナフタートクロタミトンジブカインイソプロピルメチルフェノールグリチルレチン酸コザックコートW全薬工業液剤
トルナフタートクロタミトンジブカインイソプロピルメチルフェノールグリチルレチン酸コザックコートWクリーム全薬工業クリーム剤
トルナフタートクロタミトンジブカインイソプロピルメチルフェノールグリチルレチン酸コザックコートW軟膏全薬工業軟膏
トルナフタートクロタミトンリドカイン-l-メントールセパリンZ液ダンヘルスケア液剤
トルナフタートクロタミトンリドカイン-l-メントールセパリンZクリームダンヘルスケアクリーム剤
トルナフタートクロタミトン--l-メントールデシコートゲル湧永製薬クリーム剤
トルナフタートクロタミトンジブカインクロルヘキシジン-デシコートパウダー湧永製薬噴霧剤
トルナフタート、ウンデシレン酸クロタミトン、ジフェンヒドラミン--グリチルレチンン酸・l-メントールハイーベチックゼリー佐藤製薬軟膏
トルナフタート塩酸ジフェンヒドラミンジブカイン-グリチルレチンン酸、サリチル酸バリアクト液ゼリア新薬液剤
トルナフタートクロタミトンリドカイン-グリチルレチンン酸、サリチル酸バリアクトクリームゼリア新薬クリーム剤
トルナフタート---グリチルレチンン酸、サリチル酸メチルタロンエース常盤薬品工業液剤
トルナフタートクロタミトン--サリチル酸ロンジーZ三宝製薬液剤
トルナフタートクロタミトン--グリチルレチン酸、木槿皮チンキロンジーZ軟膏三宝製薬軟膏
ビホナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルレチンン酸・l-メントールジャスタット液エーザイ液剤
ビホナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルレチンン酸・l-メントールジャスタットクリームエーザイクリーム剤
ビホナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルレチンン酸・l-メントールジャスタットクールジェルエーザイ軟膏
ビホナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルレチンン酸・l-メントールジャスタットクールスプレーエーザイ液剤
ビホナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルレチンン酸・l-メントール新ビホナエース山崎帝国堂液剤
ビホナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルレチンン酸・l-メントール新ビホナエースクリーム山崎帝国堂軟膏
ビホナゾールクロタミトンリドカイン塩化ベンザルコニウムl-メントール新マルピー水虫薬興亜新薬噴霧剤
ビホナゾールクロタミトンリドカイン塩化ベンザルコニウムグリチルレチン酸新マルピー水虫薬C興亜新薬クリーム剤
ビホナゾールクロタミトンリドカイン塩化ベンザルコニウムグリチルレチン酸新マルピー水虫薬G興亜新薬軟膏
ビホナゾールクロタミトンリドカイン塩化ベンザルコニウムグリチルレチン酸新マルピー水虫薬S興亜新薬液剤
ビホナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルレチンン酸・l-メントールバイクリアプラス液明治製菓液剤
ビホナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルレチンン酸・l-メントールバイクリアプラスクリーム明治製菓クリーム剤
ビホナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルレチンン酸・l-メントールバイクリアプラススプレー明治製菓液剤
ビホナゾール塩酸ジフェンヒドラミンジブカイン-グリチルレチン酸バリアクト24液ゼリア新薬液剤
ビホナゾールクロタミトンリドカイン-グリチルレチン酸バリアクト24クリームゼリア新薬クリーム剤
ピロールニトリン・クロトリマゾールクロタミトン--l-メントールピロエースW液ゼファーマ液剤
ピロールニトリン・クロトリマゾールクロタミトン---ピロエースWクリームゼファーマクリーム剤
ピロールニトリン・クロトリマゾールクロタミトン---ピロエースW軟膏ゼファーマ軟膏
ピロールニトリン・クロトリマゾールクロタミトン--l-メントールピロエースWパウダースプレーゼファーマ液剤
シクロピロクスオラミン----ラマストン液佐藤製薬液剤
シクロピロクスオラミン----ラマストンクリーム佐藤製薬クリーム剤
シクロピロクスオラミン----ラマストンパウダー佐藤製薬液剤
シクロピロクスオラミン-リドカイン-l-メントール、dl-カンフルラマストンプラスLエアゾール佐藤製薬噴霧剤
シクロピロクスオラミン-リドカイン--ラマストンプラスL佐藤製薬クリーム剤
シクロピロクスオラミン-ジブカイン--ラマストンプラスL液佐藤製薬液剤
シクロピロクスオラミン-リドカイン-l-メントール、dl-カンフルラマストンプラスLゼリー佐藤製薬軟膏
シクロピロクスオラミン-ジブカイン--ラマストンプラススプレー佐藤製薬噴霧剤
エキサラミドクロタミトン--サリチル酸ソルジャーエース液エスエス製薬液剤
エキサラミドクロタミトン--サリチル酸ソルジャーエース軟膏エスエス製薬軟膏
塩酸テルナビフィン----ラミシールAT液第一三共液剤
塩酸テルナビフィン----ラミシールATクリーム三共クリーム剤
塩酸テルナビフィン----ラミシールAT噴霧液第一三共噴霧剤
ウンデシン酸ジフェンヒドラミン--グリチルレチン酸他マセトローションT湧永製薬軟膏
2006年07月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み
2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬