セルフメディケーションを実践のための200テーマ

村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)

11. 外用殺菌消毒薬

 暑い夏がようやく終わり、長い秋雨が続いています。しかし、もう少しの辛抱でスポーツに絶好のシーズンがやってきます。運動会や秋祭りなど戸外の活動が多くなると、どうしても怪我などすることもあります。

 今回は、そのような時使う殺菌消毒に関する薬について解説します。出血がひどかったり、骨折が疑われるような場合はもちろん、救急医療の領域ですが、転んですりむいた程度の怪我の処置はセルフメディケーションの範囲です。ご自分の怪我はもちろん、小さいお子さんの怪我に対してしっかりした判断と措置は親の責任と考えてください。

怪我には準備と迅速な処置が大切

 よくいわれるように“誰も怪我しようと思って怪我をする人はいません”。怪我をしてからあわてたり、叱ったりしても何もなりません。怪我には何よりも早い対応が必要ですから、各家庭の救急箱に必要な殺菌消毒薬やガーゼ、包帯を用意しておくことが大切です。

 怪我したらすぐ薬―消毒薬と短絡しないでください。転んだときなど泥がついているでしょう、切り傷の場合もまずその部位を「水道水」で洗ってください。「水道水」は殺菌されていますから、流水のまま患部にかけて泥やごみを洗い流します。指先などは血管が表面にあるため、出血に驚きますが、少しがまんして洗うことによって後の「感染」をほぼ確実に防ぎます。ガラス片などは虫メガネやピンセットを使って取り除きます。

 次に、まだ血が出ているようなら止血にかかります。小さい傷ならば、圧迫することによって止まります。ひどいときは出血部位より心臓に近いところを押さえるか、縛ります。それでも止まらないときや色が鮮やかな血が噴出すような事態なら一刻も早い救急措置が必要です。

患部が乾いたら消毒を

 洗って血が止まったならば次の措置です。水で洗ったのですから、当然ぬれています。タオルやハンカチと考えますが、清潔ですか。汚い布でふくのは、汚染させているのと同じです。無菌ガーゼがなければティッシューペーパーの方がまだいいですが、ドライヤーを低音にして風乾をすすめます。その後は消毒薬によって処置をします。

 消毒薬には皮膚の修復に役立つ成分や痛み止めとして局所麻酔薬が入っているのもありますが、キズを治す効果はしれたものです。キズをなおすのは本人に備わっている「生命力」が主体です。最大の敵は細菌による感染です。消毒によって菌の大部分を「殺菌」しても、生き残りの菌は再び増殖してきます。周りには別の菌もたくさんいて、患部を狙っています。定期的な消毒処置が必要なことがおわかりでしょう。

 周りには菌がいるといいましたが、空気(酸素)は菌の増殖を抑止するので、あまり傷口を覆わない方がよいのです。しかし、血がにじんだり、物理的な衝撃から保護する必要もあるので、ガーゼのように通気性がある清潔な布をあて、包帯などをします。キズ用の保護絆創膏も便利ですが、過信しないで通気と消毒を心がけてください。

どのように薬を選ぶか

 処置に使うOTC薬は外用殺菌消毒薬と化膿性皮膚疾患用薬です。後者は医療用には抗生物質やステロイド剤を含む強力な製剤があるのに比べ、表に示すようにサルファ剤や抗生物質もクロロマイセチンなどに限られていて貧弱です。もっと医療用で使われている成分をスイッチして化膿した炎症の治療ができるようにすべきと考えますが、現在はうみや熱をもったら医師の診察を受けるべきとされています。

 ということは、セルフメディケーションで使う薬は前者の殺菌消毒が主役になります。殺菌消毒剤にはいくつかの種類があり、特徴があるのですがそれをすべて理解しようとするとかなり大変です。まずはアルコール系(エタノール、イソプロピルアルコールなど)を用意してください。脱脂綿に含ませて拭うようにキズ面を清浄します。乾いたらヨード系(ポピドンヨードなど)を含む軟膏類を塗ってガーゼをあて、絆創膏または包帯で固定します。

 他の塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム系やクロルヘキシジンなどビグアナイド系の薬剤は色や臭いがないなど便利なこともありますが、詳しいことは説明書をよみ、選び方は薬剤師にきいてください。

殺菌消毒剤を使うにあたっての注意点

 すでにお話したように、殺菌消毒しても長く効果が続くわけではありません。患部をよくみて点検して、消毒を繰り返してください。通常の使用ではまず問題はありませんが、ヨードに過敏性の方がいますから注意してその場合は直ちに中止してください。消毒用エタノールは濃度が高いので引火に気をつけてください。化膿が続いたり、腫れ、とくに熱感があるときは、薬剤の効かない細菌が増えていることを示しています。医師に診てもらいましょう。

 なお、薬の保管についてですが酸化水素や次亜塩素酸ナトリウムは時間が経過すると失効します。どの位というのは保管の仕方によるので一概にはいえないのですが、10月は「薬の週間」のキャンペーン期間で各地の薬剤師会が「薬の相談」を行います。この機会に救急箱を点検整備して“小さな災害”に備えましょう。

外用消毒薬一覧    注: ―は「該当なし」

殺菌消毒成分抗菌成分局所麻酔成分抗ヒスタミン成分その他製品名販売会社名剤形
酸化水素オキシドール健永製薬外液
次亜塩素酸ナトリウムミルトン杏林製薬外液
エタノール消毒用エタノール健永製薬外液
酸化水素オキシドール健永製薬外液
イソプロピルメチルフェノールリドカイン酸化亜鉛アッチQQ小林製薬外液
イソプロピルメチルフェノール・塩化ベンザルコニウム塩酸ジブカインアラントイン新キズドライ小林製薬噴霧
イソプロパノール・オバノールファミリアン3佐藤製薬外液
イソプロピルメチルフェノール・塩化ベンザルコニウム塩酸ジブカインアラントイン新キズドライ小林製薬噴霧
クレゾールクレゾール石ケン液健永製薬外液
ポピドンヨードイソジンきず薬明治製菓外液
ポピドンヨードイソジン軟膏明治製菓軟膏
ポピドンヨードケンエー・イオダイン健永製薬外液
ヨウ素希ヨードチンキ健永製薬外液
塩化ベンゼトニウムアラントイン・酢酸トコフェロールアポスティーローションゼリア新薬外液
塩化ベンゼトニウム塩酸ジブカインクロルフェニラミン塩酸ナファゾリンケンエー・シロチン健永製薬噴霧
塩化ベンゼトニウムクロルフェニラミンアラントインマキロンSゼファーマ外液
塩化ベンゼトニウム塩酸ジブカインクロルフェニラミン塩酸ナファゾリンマキロンジェット&スプレーゼファーマ噴霧
塩化ベンゼトニウムアラントインムヒのきず液池田模範堂外液
塩化セチルピリジウム塩酸ジブカインクロルフェニラミン塩酸ナファゾリンキズアワワ小林製薬噴霧
塩化ベンザルコニウムリドカイン塩酸フェニレフリンキーパン佐藤製薬噴霧
塩化ベンザルコニウムオスバンS武田薬工外液
塩化ベンザルコニウム塩酸ジブカインクロルフェニラミン塩酸ナファゾリンサニアクリーンゼリア新薬噴霧
塩化ベンザルコニウム塩酸ジブカインジフェンヒドラミン塩酸ナファゾリン新レブメント-FN湧永製薬外液
塩化ベンザルコニウム塩酸ジブカインジフェンヒドラミン塩酸ナファゾリンスナイス日水製薬外液
塩化ベンザルコニウムリドカインクロルフェニラミン塩酸ナファゾリンマッキンZ玉川衛材外液
ジクロルイソシアヌール酸ナトリウムミルトンタプレット杏林製薬錠剤
クロルヘキシジン酸化亜鉛・dl-カンフルトフメルA三宝製薬軟膏
クロルヘキシジン塩酸ジブカインアラントイン・ビタミンEメモAエスエス製薬軟膏
クロルヘキシジンオロナインH軟膏大塚製薬軟膏
クロルヘキシジンスルファジアジンアラントイン・レチノール・酢酸トコフェロール・酸化亜鉛マーレンS大正製薬軟膏
アクリノールケンエー・アクリガーゼ池田模範堂外液
アクリノールケンエー・アクリノール液P健永製薬外液
アクリノールタマガワ新アクリノール液玉川衛材外液
アクリノールガーゼタマガワ新リバガーゼA玉川衛材外液
クロラムフェニコール・硫酸フラジオマイシンナイスタチンクロマイN軟膏第一三共ヘルスケア軟膏
スルファジアジンリドカインジフェンヒドラミン尿素新ホモナール軟膏エスエス製薬軟膏
バシトラシン・硫酸フラジオマイシン硫酸ヒトロコルチゾンドルマイコーチ軟膏ゼリア新薬軟膏
硫酸コリスチン・バシトラシンドルマイシン軟膏ゼリア新薬軟膏
スルファジアジンジフェンヒドラミン酸化亜鉛ポリ佐藤製薬軟膏
スルファジアジンジフェンヒドラミン酸化亜鉛ポリベース佐藤製薬軟膏
リドカインジフェンヒドラミンセトリミドキシロ軟膏ゼファーマ軟膏

2006年10月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み
2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬