セルフメディケーションを実践のための200テーマ

村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)

14. 小児用かぜ薬

cold.jpg あっという間に寒くなり、暮のあわただしい季節を迎えました。これからがかぜの季節です。ひとくちにかぜといってもいろいろなタイプがあります。季節の変わり目に、寒暖の差に身体が対応しきれないことによって起きるアレルギー性の症状のものとウイルスや細菌の感染によるものとに大別されます。後者は流行性感冒と呼び、世界的な規模で流行が起きるといわれ、現在鳥インフルエンザなど厳重な監視警戒がされています。今回は前者の普通感冒、そのなかで小さいお子さんから小中学生のかぜについての対応をのべます。

かぜの原因と対応

 アレルギーが原因といいましたが、どのようにかぜの症状につながっていくか、まだ明快な答えがありません。多分、暖かいところから急に寒いところに出ることによって体温が奪われ、それを調節するメカニズムが狂うのでしょう。普段から身体を鍛えてといいますが、急に言われても間に合わないでしょうし、スポーツのプロ選手でもよくかぜをひくといっている方も多いのでそれだけでかぜをひかないと保証はできません。温度差があるときにはセーターなどでこまめに対応する、お子さんにも注意するなどは効果があるでしょう。また、外出から帰ったとき手を洗う、できれば顔を洗う、うがいをするーこれはかぜの予防に役立ちます。無理をしないで、食事と睡眠によって身体を丈夫にすることがかぜ予防の基本であることは間違いありません。
かぜ薬の成分と効果

 感染性のかぜには最近ウイルスに対する特効薬も開発されてきましたが、普通感冒は原因を取り除くような特効薬はありません。かぜのいろいろな症状を緩和する対症療法です。症状として典型的なのは発熱、頭痛や筋肉痛、のどの痛みとせき、鼻水やたん、時には下痢などで、かぜ薬はこれらを和らげる成分が配合されています。身体を温めることが早くかぜの症状から離脱できることを昔の人も知っていました。生薬成分や漢方処方にそれが継承されています。葛根湯や生姜(ショウキョウ)など現在市販のかぜ薬にも使われています。
小児のかぜ

 小児はよくかぜをひきます。それは成人に較べて、身体の調節機能が整っていないこと、特に免疫機能が未発達のため抵抗力が低いことなどが考えられます。かぜをひくのは仕方ないといっても、かぜは万病のもと、こじらせて肺炎や重い病気につなげては困ります。ではすぐに小児科にかかればいいのでしょうか。小児科医の不足や時間の問題、また具合が悪い状態で外出し、他の感染者も多い場所にいくことが必ずしも正しい選択ではないでしょう。身体を温め、症状緩和のためのかぜ薬を使って、休む―熱などをチェックして、薬を5、6回使ってもよくならない時は医師へというのが基本でしょう。
小児のかぜ薬の特徴と使い方の注意

 小児のかぜ薬といっても特に変わったことがあるわけではありません。ただし、別表をみてお分かりのように剤形として内用液剤か圧倒的に多いことに気づかれるでしょう。大人のかぜ薬を使ってはいけないとは言えませんが、成人用を使って特に小さいお子さんに適切な量をきめてのませるのは大変難しいことです。また、成分をみても解熱鎮痛成分はすべて「アセトアミノフェン」です。アセトアミノフェンは熱を下げる世界の定番、基本的薬剤です。適切な量を確実にお子さんにのませるには、量を液体として計るのがやさしくて確実なのです。大人のかぜ薬には解熱鎮痛成分としてやや高級なイブプロフェンなどが配合されていますが、小児に対してはまず解熱、熱が下がれば他の症状も並行してよくなっていきます。

 抗ヒスタミン薬も種類が少し違いますか、すべて配合されています。この成分は眠くなります。副作用というより、この成分の本来の作用です。小さい方にはむしろゆっくり休めて望ましいのですが、中学生で試験シーズンなどでは困るかも知れません。人によっても差があるので、この「副作用」がどの位か自分で知っておくとよいと思います。カフェインを配合しているものとないものがあります。カフェインは興奮作用があるので拮抗する効果があります。

 別表には「小児」「こども」「ジュニア」などと明記された小児用を意図した製品を掲載しました。小児用の内用液剤は年令によって計量してのむ(のませる)指示がされていますので使い方をよく読んでください。成人用のかぜ薬にはひと瓶を飲みきるドリンク型が多いので同じだと思わないでください。特に小さいお子さんから「もっと」などとせがまれた時には注意してください。成人用の内用液剤の中にも年令によって量を分割指示している製品がありますが、掲載した小児用を使われることをお勧めします。

小児用かぜ薬 (固形製剤)
解熱鎮痛成分抗ヒスタミン成分鎮咳成分去たん成分漢方成分生薬成分 ビタミン類カフェイン製 品 名販売会社名剤形
アセトアミノフェンマレイン酸クロルフェニラミンコデイン・エフェドリン---C-アルペンこどもかぜ薬J細粒ライオン細粒
アセトアミノフェンマレイン酸クロルフェニラミンコデイン・エフェドリン---C-アルペンこどもかぜ薬K細粒ライオン細粒
アセトアミノフェン塩酸トリプロリジンエフェドリン・デキストロメトルファン--セネガ--学童ストナ佐藤製薬
アセトアミノフェンマレイン酸クロルフェニラミンエフェドリン・ノスカピン-----こどもストナサット佐藤製薬
アセトアミノフェンマレイン酸クロルフェニラミンチペピジン---B1、B2-新小児用エスタック「カリュー」エスエス製薬顆粒
アセトアミノフェンマレイン酸クロルフェニラミンデキストロメトルファングアヤコール--C-ドリスタンジュニアG2ロート製薬ドライシロップ
アセトアミノフェンマレイン酸クロルフェニラミンデキストロメトルファングアヤコール--C-ドリスタンジュニアL2ロート製薬ドライシロップ
アセトアミノフェンマレイン酸クロルフェニラミンコデイン・エフェドリングアヤコール---バファリンジュニアかぜ薬ライオン
アセトアミノフェンマレイン酸カルビノキサミンエフェドリン・ノスカピン・デキストロネトルファングアヤコール---パブロン(学童用)大正製薬
アセトアミノフェンマレイン酸クロルフェニラミンエフェドリン・チペピジン-----ムヒのこどもかぜ顆粒池田模範堂顆粒
2006年12月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み
2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬