セルフメディケーションを実践のための200テーマ

村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)

15. 整腸薬と便秘薬

sickness0044.JPG お正月はどのように過ごされましたか。正月はどうも食べ過ぎて腹具合がどうも−、という方も多いのではないでしょうか。古来から伝統のおせち料理や餅は栄養バランスのとれた素晴らしい食品ですが、身体を動かさないで食べすぎは感心しません。そこで、今回は消化器官用の薬についてのべましょう。この分類は大衆薬の売れ筋のトップ3のひとつです。

 最近はあまり聞かなくなりましたが、漱石の猫にも出てくるように日本人は「胃腸が弱い」という定説がありました。一口に「胃腸が弱い」といっても実は複雑で、おなかの調子がわるいから起こる現象として、下痢と便秘は逆です。下痢といってもノロウイルスやO-157のような感染性のものから胃腸の疲労と水分摂取量の関連によるものまであります。今回は悩みの多い便秘や腸の働きを整える薬について述べます。

整腸薬の基本

 消化器官の中で腸は胃で殺菌、分解された食物をさらに酵素で分解し、吸収する役目をします。腸の中にはこの働きを応援してくれる細菌がいて、腸自体もゆっくりと動いています。ところが食べ過ぎたり、冷えたりすると腸の動きが鈍くなり、腸内で異常発酵がおきます。おなかがゴロゴロ鳴ったり、おなかがはって臭いオナラがでる、何度もトイレにいきたくなる。腸内の環境が異常状態になったのです。胃腸の弱い人やストレスなどによって影響を受けやすいのです。

 整腸薬、―「おなかの薬」は消化器官の中で、腸(主に小腸)の働きを活発にして、消化を促進する働きをします。異常状態の環境を改善するのが役割です。感染の原因となるウイルスや細菌を直接叩くような作用はありません。しかし、環境改善によってこのような病原菌の増えるのを防ぐことに貢献します。

 整腸薬の成分として一番にあげられるのは、生菌類です。乳酸菌などによって腸内で乳酸を産生させ、大腸菌や病原菌の増殖を抑えます。そうすれば、腸自体が本来の消化酵素を分泌して食物の消化が順調になります。代表的なものとしてビフィズス菌、ラクトミン、ラクボンなどが配合されています。似ているものとして宮入菌など酪酸を産生させるものがありますが目的は同じです。

 その他生薬類が使われています。作用として便の動きをとめるものと、便通をよくするものとがあり選ぶとき注意が必要です。オオバコの種子は古来インドで便秘に使われてきたものです。おなかがはるのはガスのせいです。ガスの発生をとめるジメチルポリシロキサンという成分を配合している製剤などを症状によって選ぶとよいでしょう。

便秘薬の基本

 便秘は無理に便意をがまんしたり、消化のよい食べ物しかとらない、運動をしない、食事時間が一定しないといった生活習慣に起因することが多いといわれています。ですから、薬を使う前に「生活改善」というのがセルフメディケーションの基本です。そうはいっても、苦しいのはわかりますし、社会生活上いつも自由にというわけにはいきませんよね。

 便秘はこのように個人によって違うので、何を選ぶか量はどの位かがきまらないので、自分で選んでいくことになります。少量からはじめてください。もちろん、薬剤師に聞いてアドバイスを受けることを勧めます。便秘薬には刺激を与えて便通を促進するものが多く、一般的には生薬成分が使われています。ただし、小腸を刺激するヒマシ油は、毒性のものを強制的に排泄させるような目的以外には適しません。ピコスルファートナトリウムやビサコジルは医療用でも使用されています。適量を定めれば有効です。

 整腸剤でもでてきたプランタゴ・オバタは食物せんいに由来するもので膨潤性下剤に分類されます。内液として使われている下剤の成分はマグネシウムを溶解させた塩類下剤に分類されます。腸内容物を流動化させて排泄するのですが、連用はすすめません。

どのように「くすり」を選ぶか

 胃腸薬全般をのべていないので、わかりにくい点があるかもしれません。おなかの調子がわるい場合は乳酸菌成分の配合されたものを勧めます。この成分を含むものは医薬部外品や乳酸飲料として食物としても販売されていますからそれを選んでもよいでしょう。常用したからといって、また少々量を取りすぎたといってあまり害が出ることはありませんから安心です。

 便秘で苦しいときは少量から調整できる製品を使ってください。それに、繰り返しになりますがせんい質のある野菜類の食事と水分をとること、そしてジョギングなどの運動をしましょう。便秘は生活習慣病の始まりと少し警鐘を鳴らしておきましょう。

薬を選ぶにあたっての注意

 薬については基本のところでのべました。便秘薬の種類と作用については、薬剤師と相談してください。乳児用の便秘にはマルツエキスがありますが、使用にあたっては小児科医と相談された方がよいでしょう。

整腸薬
乳酸菌成分酪酸菌成分生薬成分その他の成分製品名販売会社剤形
ラクトミン(2種)ビフィズス菌  ジメチルポリシロキサンセルラーゼAP3ガスピタンa小林製薬錠(チュアブル)
ラクトミン センブリ末 ケイヒ末 ウイキョウ末ジメチルポリシロキサン メチルメチオニンスルホニウムクロリド 炭酸カルシウム 炭酸マグネシウム 納豆菌末ザ・ガードコーワ整腸錠興和
ビフィズス菌(2種)  ビタミンB1、B2 バントテン酸カルシウム整腸薬ラロV明治製菓
ビフィズス菌   ビバランス資生堂
乳酸菌末酪酸菌末 納豆菌末フェカルミンスリーE日東薬品工業顆粒
ベストール プランタゴ・オバタエキス ベストール佐藤製薬顆粒
便秘薬
乳酸菌成分酪酸菌成分生薬成分その他の成分製品名販売会社剤形
  アロエ末 アロエ錠「MY」大杉製薬
  アロエ末 アロエ錠「MY」ヤクルト本社
  プランタゴ・オバタ種皮 センノシド ウィズワンゼリア新薬顆粒
  プランタゴ・オバタ種皮 センノシド ヨクイニンエキス ウィズワンαゼリア新薬顆粒
  プランタゴ・オバタ種皮 センノシドジメチルポリシロキサンウィズワンプラスゼリア新薬顆粒
  センナ末 ケンゴシ末 ダイオウエキス カンゾウエキス コウボク末 ウエストン・S小林薬品工業
  センナ末 カンゾウエキスビサコジルウエストンハイ小林薬品工業
乳酸菌  ビサコジルウエストンビンク小林薬品工業
  プランタゴ・オバタ末 センノシド カンゾウ末他 ウエストンファイバー小林薬品工業顆粒
  アロエ末 ダイオウ末 センナ末 快通丸廣貫堂丸薬
  アロエ末 ダイオウ末 センナ末 快腹丸久光製薬丸薬
  センノシドビサコジルカイベールCアラクス
   ヒマシ油加香ヒマシ油健栄製薬内液
  ダイオウ末 アロエ末他 丸薬七ふく七ふく製薬丸薬
  ダイオウエキス  カンゾウエキス末DSSクリア武田薬品
  アロエ末 ダイオウ末 センノシド 健のう丸丹平製薬丸薬
  ダイオウ末 アロエ末他 小太郎漢方の生薬便秘薬小太郎漢方製薬
   ビサコジルコーラック大正製薬
   ビサコジル DSSコーラック?大正製薬
   炭酸水素ナトリウム 無水リン酸二水素ナトリウムコーラック坐薬タイプ大正製薬坐薬
   ピコスルファートナトリウムコーラックソフト大正製薬
  センノシド  カンゾウエキス末 コーラックハーブ大正製薬
  プランタゴ・オバタ末 センノシド ケツメイシエキスビタミンB1,B6コーラックファイバー大正製薬顆粒
   ピコスルファートナトリウムコンフォートリセットファイザー
  ダイオウ末、カンゾウエキス シャクヤクキス ハッカ ササラック和漢薬研究所
  プランタゴ・オバタ種子 センナ実 サトラックス佐藤製薬顆粒
   ビサコジル DSS  ビタミンB6サトラックスエース佐藤製薬
  センノシドカルシウム サトラックス・チョコタイプ佐藤製薬
  アロエ末 ダイオウ末 センナ末他 三快錠佐藤製薬
  アロエエキス センノシド 新サラリン大塚製薬
  センノシド センキュウ末他 新ドクソウガンG山崎帝国堂
   炭酸水素ナトリウム 無水リン酸二水素ナトリウム新レシカルボン坐剤Sゼリア新薬坐薬
   ビサコジルスラット救心製薬カプセル
   硫酸マグネシウム  ビタミンB6スラーリア便秘内服液ロート製薬内液
  センノシドビサコジル  ビタミンB2B6スルーラックBBエスエス製薬
  センノシドビサコジルスルーラックSエスエス製薬
  センノシドビサコジル DSSスルーラックブラスエスエス製薬
   ピコスルファートナトリウムソフィットゼファーマ内液
   ピコスルファートナトリウムソフィットピュアゼファーマカプセル
   ビサコジル センノシドソフネスライオン
  大黄甘草湯エキス末 大正漢方便秘薬大正製薬
  大黄甘草湯エキス散大黄甘草湯エキス末タケダ漢方便秘薬武田薬品
  センノシドビサコジル DSSデタールAアルフレッサファーマ
  センノシド サンキライ末 カンゾウ末 ドクソウガンE便秘薬山崎帝国堂
   ビサコジルドクソウガンミニ山崎帝国堂
  センナ末 ダイオウ末 ハイベン大杉製薬
   ビサコジルハミノン堀井薬品
  大黄甘草湯エキス末 ハミノン漢方便秘薬堀井薬品
ラクトミン  ピコスルファートナトリウムビオピコ錠武田薬品
   ビサコジル DSS カサンスラノール他ピオミットS三宝製薬
   ビサコジルビオミット・ミニ三宝製薬カプセル
   ピコスルファートナトリウムピコラックス佐藤製薬
ビフィズス菌 センノシド ビフィーナ便秘薬田辺製薬カプセル
乳酸菌 プランタゴ・オバタ種皮末 ダイオウエキス カンゾウエキス納豆菌末ファイバーコートα日水製薬顆粒
  ダイオウ末、カンゾウ末 エイジツ末他 複方毒掃丸山崎帝国堂丸薬
   ビサコジルベルリーナ山崎帝国堂
  プランタゴ・オバタ種皮 ケツメイシ乾燥エキス ロンターゼリズム日本製薬工業顆粒
  ダイオウ乾燥エキス カンゾウ末他ビサコジルワクレッシユ湧永製薬丸薬
   マルツエキス和光堂マルツエキス和光堂アメ状エキス
   マルツエキス和光堂マルツエキススティック和光堂アメ状エキス
2007年01月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み
2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬