村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)
お正月はどのように過ごされましたか。正月はどうも食べ過ぎて腹具合がどうも−、という方も多いのではないでしょうか。古来から伝統のおせち料理や餅は栄養バランスのとれた素晴らしい食品ですが、身体を動かさないで食べすぎは感心しません。そこで、今回は消化器官用の薬についてのべましょう。この分類は大衆薬の売れ筋のトップ3のひとつです。
最近はあまり聞かなくなりましたが、漱石の猫にも出てくるように日本人は「胃腸が弱い」という定説がありました。一口に「胃腸が弱い」といっても実は複雑で、おなかの調子がわるいから起こる現象として、下痢と便秘は逆です。下痢といってもノロウイルスやO-157のような感染性のものから胃腸の疲労と水分摂取量の関連によるものまであります。今回は悩みの多い便秘や腸の働きを整える薬について述べます。
消化器官の中で腸は胃で殺菌、分解された食物をさらに酵素で分解し、吸収する役目をします。腸の中にはこの働きを応援してくれる細菌がいて、腸自体もゆっくりと動いています。ところが食べ過ぎたり、冷えたりすると腸の動きが鈍くなり、腸内で異常発酵がおきます。おなかがゴロゴロ鳴ったり、おなかがはって臭いオナラがでる、何度もトイレにいきたくなる。腸内の環境が異常状態になったのです。胃腸の弱い人やストレスなどによって影響を受けやすいのです。
整腸薬、―「おなかの薬」は消化器官の中で、腸(主に小腸)の働きを活発にして、消化を促進する働きをします。異常状態の環境を改善するのが役割です。感染の原因となるウイルスや細菌を直接叩くような作用はありません。しかし、環境改善によってこのような病原菌の増えるのを防ぐことに貢献します。
整腸薬の成分として一番にあげられるのは、生菌類です。乳酸菌などによって腸内で乳酸を産生させ、大腸菌や病原菌の増殖を抑えます。そうすれば、腸自体が本来の消化酵素を分泌して食物の消化が順調になります。代表的なものとしてビフィズス菌、ラクトミン、ラクボンなどが配合されています。似ているものとして宮入菌など酪酸を産生させるものがありますが目的は同じです。
その他生薬類が使われています。作用として便の動きをとめるものと、便通をよくするものとがあり選ぶとき注意が必要です。オオバコの種子は古来インドで便秘に使われてきたものです。おなかがはるのはガスのせいです。ガスの発生をとめるジメチルポリシロキサンという成分を配合している製剤などを症状によって選ぶとよいでしょう。
便秘は無理に便意をがまんしたり、消化のよい食べ物しかとらない、運動をしない、食事時間が一定しないといった生活習慣に起因することが多いといわれています。ですから、薬を使う前に「生活改善」というのがセルフメディケーションの基本です。そうはいっても、苦しいのはわかりますし、社会生活上いつも自由にというわけにはいきませんよね。
便秘はこのように個人によって違うので、何を選ぶか量はどの位かがきまらないので、自分で選んでいくことになります。少量からはじめてください。もちろん、薬剤師に聞いてアドバイスを受けることを勧めます。便秘薬には刺激を与えて便通を促進するものが多く、一般的には生薬成分が使われています。ただし、小腸を刺激するヒマシ油は、毒性のものを強制的に排泄させるような目的以外には適しません。ピコスルファートナトリウムやビサコジルは医療用でも使用されています。適量を定めれば有効です。
整腸剤でもでてきたプランタゴ・オバタは食物せんいに由来するもので膨潤性下剤に分類されます。内液として使われている下剤の成分はマグネシウムを溶解させた塩類下剤に分類されます。腸内容物を流動化させて排泄するのですが、連用はすすめません。
胃腸薬全般をのべていないので、わかりにくい点があるかもしれません。おなかの調子がわるい場合は乳酸菌成分の配合されたものを勧めます。この成分を含むものは医薬部外品や乳酸飲料として食物としても販売されていますからそれを選んでもよいでしょう。常用したからといって、また少々量を取りすぎたといってあまり害が出ることはありませんから安心です。
便秘で苦しいときは少量から調整できる製品を使ってください。それに、繰り返しになりますがせんい質のある野菜類の食事と水分をとること、そしてジョギングなどの運動をしましょう。便秘は生活習慣病の始まりと少し警鐘を鳴らしておきましょう。
薬については基本のところでのべました。便秘薬の種類と作用については、薬剤師と相談してください。乳児用の便秘にはマルツエキスがありますが、使用にあたっては小児科医と相談された方がよいでしょう。
乳酸菌成分 | 酪酸菌成分 | 生薬成分 | その他の成分 | 製品名 | 販売会社 | 剤形 |
ラクトミン(2種)ビフィズス菌 | ジメチルポリシロキサンセルラーゼAP3 | ガスピタンa | 小林製薬 | 錠(チュアブル) | ||
ラクトミン | センブリ末 ケイヒ末 ウイキョウ末 | ジメチルポリシロキサン メチルメチオニンスルホニウムクロリド 炭酸カルシウム 炭酸マグネシウム 納豆菌末 | ザ・ガードコーワ整腸錠 | 興和 | 錠 | |
ビフィズス菌(2種) | ビタミンB1、B2 バントテン酸カルシウム | 整腸薬ラロV | 明治製菓 | 散 | ||
ビフィズス菌 | ビバランス | 資生堂 | 錠 | |||
乳酸菌末 | 酪酸菌末 | 納豆菌末 | フェカルミンスリーE | 日東薬品工業 | 顆粒 | |
ベストール | プランタゴ・オバタエキス | ベストール | 佐藤製薬 | 顆粒 |
乳酸菌成分 | 酪酸菌成分 | 生薬成分 | その他の成分 | 製品名 | 販売会社 | 剤形 |
アロエ末 | アロエ錠「MY」 | 大杉製薬 | 錠 | |||
アロエ末 | アロエ錠「MY」 | ヤクルト本社 | 錠 | |||
プランタゴ・オバタ種皮 センノシド | ウィズワン | ゼリア新薬 | 顆粒 | |||
プランタゴ・オバタ種皮 センノシド ヨクイニンエキス | ウィズワンα | ゼリア新薬 | 顆粒 | |||
プランタゴ・オバタ種皮 センノシド | ジメチルポリシロキサン | ウィズワンプラス | ゼリア新薬 | 顆粒 | ||
センナ末 ケンゴシ末 ダイオウエキス カンゾウエキス コウボク末 | ウエストン・S | 小林薬品工業 | 錠 | |||
センナ末 カンゾウエキス | ビサコジル | ウエストンハイ | 小林薬品工業 | 錠 | ||
乳酸菌 | ビサコジル | ウエストンビンク | 小林薬品工業 | 錠 | ||
プランタゴ・オバタ末 センノシド カンゾウ末他 | ウエストンファイバー | 小林薬品工業 | 顆粒 | |||
アロエ末 ダイオウ末 センナ末 | 快通丸 | 廣貫堂 | 丸薬 | |||
アロエ末 ダイオウ末 センナ末 | 快腹丸 | 久光製薬 | 丸薬 | |||
センノシド | ビサコジル | カイベールC | アラクス | 錠 | ||
ヒマシ油 | 加香ヒマシ油 | 健栄製薬 | 内液 | |||
ダイオウ末 アロエ末他 | 丸薬七ふく | 七ふく製薬 | 丸薬 | |||
ダイオウエキス カンゾウエキス末 | DSS | クリア | 武田薬品 | 錠 | ||
アロエ末 ダイオウ末 センノシド | 健のう丸 | 丹平製薬 | 丸薬 | |||
ダイオウ末 アロエ末他 | 小太郎漢方の生薬便秘薬 | 小太郎漢方製薬 | 錠 | |||
ビサコジル | コーラック | 大正製薬 | 錠 | |||
ビサコジル DSS | コーラック? | 大正製薬 | 錠 | |||
炭酸水素ナトリウム 無水リン酸二水素ナトリウム | コーラック坐薬タイプ | 大正製薬 | 坐薬 | |||
ピコスルファートナトリウム | コーラックソフト | 大正製薬 | 錠 | |||
センノシド カンゾウエキス末 | コーラックハーブ | 大正製薬 | 錠 | |||
プランタゴ・オバタ末 センノシド ケツメイシエキス | ビタミンB1,B6 | コーラックファイバー | 大正製薬 | 顆粒 | ||
ピコスルファートナトリウム | コンフォートリセット | ファイザー | 錠 | |||
ダイオウ末、カンゾウエキス シャクヤクキス ハッカ | ササラック | 和漢薬研究所 | 錠 | |||
プランタゴ・オバタ種子 センナ実 | サトラックス | 佐藤製薬 | 顆粒 | |||
ビサコジル DSS ビタミンB6 | サトラックスエース | 佐藤製薬 | 錠 | |||
センノシドカルシウム | サトラックス・チョコタイプ | 佐藤製薬 | 錠 | |||
アロエ末 ダイオウ末 センナ末他 | 三快錠 | 佐藤製薬 | 錠 | |||
アロエエキス センノシド | 新サラリン | 大塚製薬 | 錠 | |||
センノシド センキュウ末他 | 新ドクソウガンG | 山崎帝国堂 | 錠 | |||
炭酸水素ナトリウム 無水リン酸二水素ナトリウム | 新レシカルボン坐剤S | ゼリア新薬 | 坐薬 | |||
ビサコジル | スラット | 救心製薬 | カプセル | |||
硫酸マグネシウム ビタミンB6 | スラーリア便秘内服液 | ロート製薬 | 内液 | |||
センノシド | ビサコジル ビタミンB2、B6 | スルーラックBB | エスエス製薬 | 錠 | ||
センノシド | ビサコジル | スルーラックS | エスエス製薬 | 錠 | ||
センノシド | ビサコジル DSS | スルーラックブラス | エスエス製薬 | 錠 | ||
ピコスルファートナトリウム | ソフィット | ゼファーマ | 内液 | |||
ピコスルファートナトリウム | ソフィットピュア | ゼファーマ | カプセル | |||
ビサコジル センノシド | ソフネス | ライオン | 錠 | |||
大黄甘草湯エキス末 | 大正漢方便秘薬 | 大正製薬 | 錠 | |||
大黄甘草湯エキス散 | 大黄甘草湯エキス末 | タケダ漢方便秘薬 | 武田薬品 | 錠 | ||
センノシド | ビサコジル DSS | デタールA | アルフレッサファーマ | 錠 | ||
センノシド サンキライ末 カンゾウ末 | ドクソウガンE便秘薬 | 山崎帝国堂 | 錠 | |||
ビサコジル | ドクソウガンミニ | 山崎帝国堂 | 錠 | |||
センナ末 ダイオウ末 | ハイベン | 大杉製薬 | 錠 | |||
ビサコジル | ハミノン | 堀井薬品 | 錠 | |||
大黄甘草湯エキス末 | ハミノン漢方便秘薬 | 堀井薬品 | 錠 | |||
ラクトミン | ピコスルファートナトリウム | ビオピコ錠 | 武田薬品 | 錠 | ||
ビサコジル DSS カサンスラノール他 | ピオミットS | 三宝製薬 | 錠 | |||
ビサコジル | ビオミット・ミニ | 三宝製薬 | カプセル | |||
ピコスルファートナトリウム | ピコラックス | 佐藤製薬 | 錠 | |||
ビフィズス菌 | センノシド | ビフィーナ便秘薬 | 田辺製薬 | カプセル | ||
乳酸菌 | プランタゴ・オバタ種皮末 ダイオウエキス カンゾウエキス | 納豆菌末 | ファイバーコートα | 日水製薬 | 顆粒 | |
ダイオウ末、カンゾウ末 エイジツ末他 | 複方毒掃丸 | 山崎帝国堂 | 丸薬 | |||
ビサコジル | ベルリーナ | 山崎帝国堂 | 錠 | |||
プランタゴ・オバタ種皮 ケツメイシ乾燥エキス | ロンターゼリズム | 日本製薬工業 | 顆粒 | |||
ダイオウ乾燥エキス カンゾウ末他 | ビサコジル | ワクレッシユ | 湧永製薬 | 丸薬 | ||
マルツエキス | 和光堂マルツエキス | 和光堂 | アメ状エキス | |||
マルツエキス | 和光堂マルツエキススティック | 和光堂 | アメ状エキス |
2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬