セルフメディケーションを実践のための200テーマ

村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)

17. 痔の薬
 痔に悩んでいる方は多いと思います。場所が場所だけに、若い人や女性の方では恥ずかしがって相談もできなくて困っていらっしゃることでしょう。痔も軽い場合は、セルフメディケーションで治せますから、以下の解説を読んできちんと手当てしてみてください。

 まず、痔の病態ですが、痔は肛門と周辺部に起こる異常状態をいいます。肛門周囲の静脈がうっ血して痔核ができるいぼ痔や便秘や硬い便によって肛門に傷ができる烈肛(きれ痔)があります。ここまでは、大衆薬を使って治すことができますが、肛門周囲の炎症が進み、膿がたまりそれを排出するため穴があく-痔ろうができる状態では大衆薬での治療は困難ですから専門医にみてもらい指示にしたがいましょう。
痔の薬の成分はなにか
 痔は肛門周辺の炎症ですから、症状の緩和として消炎作用が主となります。消炎のきめ手はステロイド剤で、酢酸ヒドロコルチゾンか酢酸プレドニゾロンが使われています。どの製品も含量に差はないので、指示どおり使う限り安全です。

 ステロイドはいやという方や軽い場合はステロイドが含まれていないものもあります。炎症に伴ってたいてい痛み、かゆみが起こるので、多くの製剤に局所麻酔薬やかゆみ止めとして抗ヒスタミン薬が配合されています。また、患部では血管がきれて出血していることがおるので、止血剤を配合しています。

 肛門という場所と状態は細菌の繁殖には絶好な条件となります。製剤にも殺菌消毒剤を入れていますが、入浴やシャワーによって患部を洗浄することが一番で、洗浄装置付のトイレットも効果的でしょう。ほかに創傷面の回復に役立つ成分としてアラントインや血管を強化するビタミン剤が配合されています。
痔の薬の選び方と限界
 痔の薬は文字通り、症状の緩和を目的とした外用薬が主体です。各社が工夫した配合製品を出していますが、多くの場合坐薬と軟膏の2種があります。軟膏は主として肛門の外側の炎症に適し、坐薬は肛門内の炎症に用います。内部がきれている場合などは、「注入用軟膏」と表示している剤形がよいでしょう。洗浄し、殺菌消毒する場合は液剤もあります。

 痛みやかゆみの程度を薬剤師に告げれば、対応する成分が配合されている製品の剤形を選択してくれるでしょう。きちんと対応しないで適当な応答する店で買うのは賢明ではありません。

 何度も申し上げますが、痔の薬は炎症の緩和です。状態が悪化して、細菌感染が起こった状態では大衆薬では治療は無理です。なぜなら、含有されている殺菌消毒薬は感染の防御にはなっても、増殖した病原微生物を除菌できるほど強力ではないからです。医師の診断と抗生物質等による治療が必要です。また、治癒しても何度も同じ症状がくりかえされる場合は、患部の外科的療法が必要か専門医に相談しましょう。
痔の薬を使うにあたっての注意事項
 患部の炎症が強く、化膿していない場合はステロイドを含む製剤を短期間使用して治しましょう。ステロイドは短期間であれば心配はありませんが、長期間だらだらと使うと感染症を誘発する危険があります。

 外用薬のほか内服の痔の薬もいくつかありますが、止血などの補助程度です。漢方や生薬を使う民間療法もたくさん紹介されています。ほとんどが止血作用と消炎作用をうたっていて、長期使用によって体質改善をはかろうとしています。

 ただし、これらの療法には化膿した痔疾を治癒することはできませんから、あまり過信することは危険です。食事内容や酒量をへらす、禁煙など生活の改善によって自然と痔疾が解消したという経験報告も参考にしてほしいと思います。

外用痔疾用薬(ステロイド含有)
抗炎症成分局所麻酔成分かゆみ止め成分止血成分抗菌成分その他製品名販売会社剤形
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインメチルエフェドリンクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンAエスジールAE坐剤エスエス製薬坐薬
酢酸ヒドロコルチゾンジブカインジフェンヒドラミンクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンE他新エフレチンK三宝製薬坐薬
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインメチルエフェドリンイソプロピルメチルフェノールアラントイン・卵黄油他ドルマインH坐剤ゼリア新薬坐薬
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインジフェンヒドラミンクロルヘキシジンアラントイン他プリザS大正製薬坐薬
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインクロルフェニラミンテトラヒドロゾリンクロルヘキシジンアラントイン他プリザSハイ大正製薬坐薬
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインクロルフェニラミンテトラヒドロゾリンクロルヘキシジンアラントイン他プリザエース大正製薬坐薬
酢酸ヒドロコルチゾンジブカインメチルエフェドリンアラントインヘルス坐剤小林品薬品工業坐薬
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインクロルフェニラミンイソプロピルメチルフェノールアラントイン・ビタミンEヘルミチンHi坐剤ゼファーマ坐薬
酢酸ヒドロコルチゾンリドカイン・アミノ安息香酸エチルイソプロピルメチルフェノールアラントイン・ビタミンEメンソレータム   リシーナ坐剤ロート製薬坐薬
酢酸ヒドロコルチゾンリドカイングアイアズレン・ビタミンE他レックスS坐剤湧永製薬坐薬
酢酸プレドニゾロンリドカインクロルフェニラミンセイヨウトチノキエキス・ビタミンE他サノーラA坐剤第一三共ヘルスケア坐薬
酢酸プレドニゾロンリドカインクロルフェニラミンテトラヒドロゾリンクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンEサブス坐剤全薬工業坐薬
酢酸プレドニゾロンジブカインジフェンヒドラミンテトラヒドロゾリンクロルヘキシジンアラントイン・ユーカリ油他新エフレチン三宝製薬坐薬
酢酸プレドニゾロン  塩化リゾチームリドカインクロルヘキシジンアラントイン新コリミジン坐剤日水製薬坐薬
酢酸プレドニゾロンリドカインアラントイン・ビタミンEボラギノールA坐剤武田薬工坐薬
酢酸プレドニゾロンリドカインジフェンヒドラミンアラントイン・ビタミンEリナロンL佐藤製薬坐薬
酢酸プレドニゾロン  塩化リゾチームリドカインイソプロピルメチルフェノールアラントイン・ビタミンE他リナロンプラス佐藤製薬坐薬
外用痔疾用薬(ステロイド含有しない)
抗炎症成分局所麻酔成分かゆみ止め成分止血成分抗菌成分その他製品名販売会社剤形
塩化リゾチームアミノ安息香酸エチルジフェンヒドラミンクロルヘキシジンシコンエキスコリミジンA坐剤日水製薬坐薬
グリチルレチン酸リドカインアラントイン・ビタミンEボラギノールM坐剤武田薬工坐薬
グリチルレチン酸リドカインクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンE他レックH坐剤湧永製薬坐薬
外用痔疾用薬(ステロイド含有)
抗炎症成分局所麻酔成分かゆみ止め成分止血成分抗菌成分その他製品名販売会社剤形
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインメチルエフェドリンクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンAエスジールA軟膏エスエス製薬軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンジブカインジフェンヒドラミンメチルエフェドリンクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンE他新エフレチンK軟膏三宝製薬軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインメチルエフェドリンイソプロピルメチルフェノールアラントイン・ユーカリ油他ドルマインH軟膏ゼリア新薬軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンジブカインジフェンヒドラミンクロルヘキシジンアラントイン他プリザS軟膏大正製薬軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインクロルフェニラミンテトラヒドロゾリンクロルヘキシジンアラントイン他プリザSハイ軟膏大正製薬軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインクロルフェニラミンテトラヒドロゾリンクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンEプリザエース注入軟膏大正製薬軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインクロルフェニラミンテトラヒドロゾリンクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンEプリザエース軟膏大正製薬軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインメチルエフェドリンクロルヘキシジン酸化亜鉛ヘルスG軟膏小林薬品工業軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインアラントイン・ビタミンEヘルス注入軟膏小林薬品工業軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインアラントイン・ビタミンEボラギノールA注入軟膏武田薬工軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカインアラントイン・ビタミンEボラギノールA軟膏武田薬工軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカイン・アミノ安息香酸エチルイソプロピルメチルフェノールアラントイン・ビタミンEメンソレータム   リシーナ注入軟膏ロート製薬軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカイン・アミノ安息香酸エチルイソプロピルメチルフェノールアラントイン・ビタミンEメンソレータム   リシーナ軟膏Aロート製薬軟膏
酢酸ヒドロコルチゾンリドカイングアイアズレン・ビタミンE他レックS軟膏湧永製薬軟膏
酢酸プレドニゾロンリドカインクロルフェニラミンクロルヘキシジンセイヨウトチノキエキス・ビタミンE他サノーラA軟膏第一三共ヘルスケア軟膏
酢酸プレドニゾロンリドカインクロルフェニラミンテトラヒドロゾリンクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンEサブス軟膏全薬工業軟膏
酢酸プレドニゾロン塩化リゾチームリドカインクロルヘキシジンアラントイン新コリミジン軟膏日水製薬軟膏
酢酸プレドニゾロンジブカインイソプロピルメチルフェノールアラントイン・ビタミンEリナロン痔軟膏佐藤製薬軟膏
外用痔疾用薬(ステロイド含有しない)
抗炎症成分局所麻酔成分かゆみ止め成分止血成分抗菌成分その他製品名販売会社剤形
グリチルレチン酸プロカイン・アミノ安息香酸エチルクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンEコリミジンA軟膏日水製薬軟膏
グリチルレチン酸リドカインクロルヘキシジン酸化亜鉛・ビタミンE他新エフレチン軟膏三宝製薬軟膏
リドカインクロルフェニラミンテトラヒドロゾリンベンザルコニウムメントールプリザクールジェル大正製薬軟膏
グリチルレチン酸リドカインアラントイン・ビタミンEボラギノールM軟膏武田薬工軟膏
グリチルレチン酸リドカインクロルヘキシジンアラントイン・ビタミンE他レックH軟膏湧永製薬軟膏
リドカインテトラヒドロゾリン塩化デカリニウムプレザクリーンエース大正製薬外液
リドカインテトラヒドロゾリンセチルピリジニウムリナロンムース佐藤製薬外液
2007年03月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み
2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬