村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)
19. 更年期障害の薬

原因は女性ホルモンの分泌のバランスの失調ということはわかっています。加齢によって卵巣の機能が衰えてきますが、脳下垂体からの卵胞刺激ホルモンの分泌によって卵胞が刺激に反応できない状態から自律神経系全体の調和が乱れてきます。
このようなホルモンバランスの異常は閉経前、30才代から生じることもあり、環境やストレスの影響もあるといわれます。症状としては、ほてり、のぼせ、肩こり、発汗、いらいら感、不安、肌荒れ、落ちこみ感、怒りっぽくなるなど様々です。
昔から「血の道」といわれて、漢方や民間療法が伝えられています。ひとつひとつの症状に対応する薬を選ぼうとするのは感心しません。なぜなら、原因は明らかですから、治療はホルモン補充療法ということはほぼ確定しています。しかし、この療法を行うか否かは女性科の医師の説明をきいて選択すべきです。医師に診てもらうことは、更年期の症状と似た高血圧や子宮がんの早期発見にもなります。
さて、やはり更年期障害に該当すると知ったならば、どうするかはセルフメディケーションを活用することを勧めます。症状の改善には、古来から使われてきた生薬成分が役立ちます。漢方にもありますが、日本にはそれを基に工夫開発された「新しい伝統薬」としての大衆薬もあります。剤形も工夫されのみやすくなっています。また、サプリメントや食品の形のものもあります。ただし、使われている生薬の種類や含量は同じではありません。
ひとりで広告や宣伝をみて選ぶより、医師の診断や自分の症状を話して相談に乗ってくれる薬剤師のいる薬局・ドラッグストアで購入するのがよいと思います。症状と対応する製品の組合せこそベテラン薬剤師の腕なのです。
女性用保健薬の成分
現在女性用保健薬として市販されている大衆薬は漢方等で使用されている生薬成分を主体にしています。生薬成分としては血行を改善するものとしてトウキ、センキュウ、鎮痛・鎮痙作用を有するシャクヤク、ボタンピ、健胃整腸作用を有するオウレン、ソウジュツ、排尿など利水作用のあるブクリョウなどを組合わせています。漢方の加味逍遥散はのぼせや神経症状に効果のある代表的な処方です。
その他の成分としてビタミン類やアミノエチルスルホン酸などを配合している製品もありますが、補完的なもので更年期症状の改善としての役割はないでしょう。
薬の選び方と注意
すでに述べましたが生薬―正しくは生薬抽出エキスの組合せですから、西洋薬のように成分がはっきりしているわけではありません。体質や症状に適すれば、続けて服用することによって症状改善に役立ちます。信頼できる薬剤師さんと相談して薬を選ぶのがよいと思います。ホルモンバランスの失調が原因ですから、画期的な特効薬は期待できませんから派手な広告宣伝には注意してください。女性保健薬(更年期障害改善薬) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2007年05月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬