村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)
24. 口腔内殺菌薬

温度変化に対応できないとかぜのような症状が起きてきます。それに細菌やウイルスなどが加わるとやっかいなことになります。だからといって、人は完全な無菌環境で生活することはできませんから、体力をつけて少々の外敵の侵入に対しては免疫などによって自己防衛が必要なのです。
外敵と一口にいいましたが、どこから侵入するのでしょうか。人は常に呼吸していますから、のどはいつも外敵にさらされています。適切な加温と適度な湿り気がのどに余分な負担をかけないために必要です。部屋の温度・湿度、特に就寝中の管理にこころがけましょう。
外出から帰ったときには、ぬるま湯で口をすすぎ、うがいをするのは効果があります。のどが痛いなどの異常は外敵によって炎症が生じ、身体内へ侵入しようとしている警告です。その場合は口腔内を殺菌する成分を含む医薬品を使います。今回は口腔内殺菌薬について述べます。
口腔内殺菌薬の種類と目的
「のどの薬」と「のど飴」はどこが違うのでしょうか。傷んだのどの修復と保護の目的では共通していますが、のど飴には殺菌・消毒という作用はありません。のどの薬はれっきとした医薬品ですから、殺菌という効果が認められ、また使用法もきちんと守らなければいけません。液を塗るタイプと口の中でなめてゆっくり溶かすものに分かれます。前者は殺菌・消毒が主目的で医薬品としての成分もほぼ限られます。多くはヨード系で、医療用でも定評のあるポピドンヨードが使用されています。ただ、独特の濃い茶系の色とにおいに抵抗感がある方がいます。
また、銀を変色することがあるので義歯を使用されている方ははずすなど注意して下さい。ヨード以外では水溶性アズレンを使用している製品があります。殺菌力はやや弱いですが、ヨード系が苦手の方や長期に使用しなければならない高齢者の方には適しています。容器にも種々工夫がされていて、のどの奥まで塗れるようにノズルを長くしたものや、ジェット化して霧状に噴霧するものが販売されています。
後者のトローチはのどというより、口腔全体を殺菌し、清潔にする目的があります。あわせて、炎症(はれ)にも効くように塩化リゾチーム、グリチルリチン二カリウムなどの抗炎症成分を配合しています。口腔内に食物の残滓があると、効果は減少しますから前に水ですすいでからに使いましょう。
表には医薬品成分を記載したので、添加物についてふれておきましょう。多くの製品はメントール(ハッカ)やその他香油、香料などを入れて清涼感などを出しています。また、噴霧するためにはエタノールなどアルコールが使われています。塩化リゾチームき卵由来ですし、アルコール過敏症の方などアレルギーがある方は注意が必要です。
口腔内殺菌薬を使用する上での注意
のど飴との違いを述べましたが、この中間ともいえる医薬部外品に属するものがたくさんあります。トローチの中にセネガやキキョウのエキスなどが配合されているものがあります。生薬成分として古来のどの薬として使われてきました。医薬部外品や食品に属する「のど飴」には多くの植物成分を配合されているものがあり、またそれを「売り」にしています。のどをうるおし、炎症を緩和する効果を否定しませんが、あまり頼りすぎないようにしてください。
「薬でないから安心」といってお子さんやお年寄りの方が過剰摂取されませんように。糖分が過剰になり、歯のためにもよくありません。
逆に、似ていても口腔内殺菌薬はお薬です。「薬だから安心」といって使いすぎてはいけません。用法・用量を守ってください。また、この系統の薬や食品は症状緩和や感染の予防にはなっても、治療薬ではありません。症状が緩和しないならば、薬剤師に相談されるか医師の診療を受けましょう。
口腔内殺菌消毒薬
トローチ(口腔内殺菌)
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2007年10月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬