セルフメディケーションを実践のための200テーマ

村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)

25. 口内炎の薬
 先回に続いて口腔の炎症についてのべます。舌や口内に小さな突起ができたり、歯茎の周りがはれたりすることがあります。食べ物がふれたり、辛いもの、酸っぱいもの、あるいはちょっと熱い飲み物を含むと刺激して痛みます。

 食べ物で傷ついたり、虫歯など歯の炎症なども原因となりますが、栄養のバランス―特にビタミン不足や食べ過ぎ、飲みすぎによって体調を崩した場合に起きます。そうならないように、気をつけなさいといっても、今痛かったり、気になってうんざりしているとき説教は余計イライラするでしょう。文字通り口内の炎症をとりあえず緩和する薬があります。
口内炎の薬の種類と目的
 基本的には口腔内殺菌薬と同じで口の中を殺菌して清潔にすることですが、炎症を抑える成分が入っている製剤があります。殺菌は塩酸クロルヘキシジン、アクリノール、塩化セチルピリジニウムの3種あります。口中ですから、強力なものは使えませんし刺激性があっても困ります。その意味では3種の差はないでしょう。抗炎症成分も口中という制約があるので、多くの製剤はグリチルリチン系を配合しています。生薬のカンゾウに含まれているものです。

 ステロイドの単剤があります。突起した炎症がひどい時などは確実に抑えられますが、普通の口内炎ではステロイドが配合されてなくてもいいでしょう。他には傷ついた皮膚を修復させる効果をもつものや、昔から使われてきた生薬エキスが配合されているものがあります。には薬効成分を記載していますが、添加物としてかなり炎症や衝撃を和らげる目的のものが配合されています。ハチミツもそのひとつです。

 特に殺菌薬や抗炎症成分を配合していない、生薬成分や漢方由来のエキス顆粒もあります。口内炎は大昔からあった症状で、伝統療法がなお健在なのでしょう。
症状にあわせて剤形を選択
 成分の話をしましたが、口内炎の症状によって剤形を選ぶのも大事です。口内に塗布するものや貼るもの、スプレータイプなどあります。錠剤のような形でもそれを外用として使うものがあります。

 また、効能として口内炎としていても、錠剤を飲み薬としているものがあります。買って、包装を開けてからでは、厄介なことになるので、薬剤師にきちんと確認してください。そのとき、自分の症状を話せば適切なお薬が選択できます。まさにセルフメディケーションの実践です。
口内炎の薬を使用していく上での注意
 最初に述べた注意に戻ります。お薬で口内炎を抑えるのはいわば緊急避難です。原因がありますから、思いあたることを考えて、食事や生活の改善も行ってください。一過性の場合が多いですが、炎症が続き、特に口中に悪臭が続くような場合は医師または歯科医師を受診してください。歯に原因することが多いですが稀に舌癌などがあり早期発見につながります。

口内炎用薬
殺菌消毒成分抗炎症成分生薬類その他の成分製品名販売会社剤形
クロルヘキシジングリチルレチン酸オラシック軟膏三友薬品軟膏
クロルヘキシジングリチルレチン酸シコンエキスワムレート軟膏三宝薬品軟膏
クロルヘキシジングリチルレチン酸シコンエキス大正行内軟膏大正製薬軟膏
クロルヘキシジングリチルレチン酸シコンエキスヨナ口内軟膏東洋化学軟膏
アクリノール濃グリセリンキスパハネーAエスエス製薬外液
アクリノールグリセリン妙効丹佐藤製薬軟膏
塩化セチルピリジニウムグリチルレチン酸二Kヒノキチオール アラントイン新デスパコーワ興和新薬軟膏
塩化セチルピリジニウムグリチルレチン酸二Kヒノキチオール アラントイン新デントヘルスライオンゲル
塩化セチルピリジニウムグリチルレチン酸 アズレンスルホン酸Naサトウ口内軟膏佐藤製薬軟膏
塩化セチルピリジニウムプレドニゾロン銅クロロフィリンNaデンタルビルクリーム日邦薬品クリーム
 トリアムシノロンアセトニドアフタッチA佐藤製薬貼付薬
 グリチルレチン酸シコンエキス口内炎パッチ大正A大正製薬貼付薬
 グリチルレチン酸パッテル佐藤製薬貼付薬
 アズレンスルホン酸Naコロロのどスプレーサラヤ外液(噴霧)
  カンゾウエキストラネキサム酸、ペラックT錠第一三共
酒石酸アリメマジンカンゾウエキストラネキサム酸、VB2B6ベレキャップ錠日邦薬品
 パンテノールハチミツアラントイン グリセリンレビオ大正製薬外液
  オウバク末 チョウジ末他炭酸Ca 他口中散吉見吉太郎薬房
  ケイヒ オウゴン キキョウ ジオウ ブクリョウ桂枝五物湯エキス顆粒原沢製薬顆粒
2007年11月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み
2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬